新聞「農民」
「農民」記事データベース20180618-1315-17

バイオマス発電の消化液で
ジャンボタニシ駆除に挑戦

千葉・東総農民センターの会員
養豚農家 熱田正行さん
=匝瑳市在住=


 西日本を中心に、水稲に大きな被害をもたらしているジャンボタニシ。千葉県匝瑳(そうさ)市でも近年、ますますその被害が深刻さを増しています。そんなジャンボタニシの被害を、畜産たい肥を使ったバイオマス発電の消化液を活用して軽減できないかと挑戦している人がいます。千葉・東総農民センター会員で、株式会社「エコ・フード」会長の熱田正行さんです。

 支援は一切なし 5億円を調達

 熱田さんはもともと養豚農家。食品残さを再利用した養豚の液状飼料(リキッドフィーディング)を取り入れたり、昨年からは養豚で出たたい肥を活用してバイオマス発電を始めました。現在、養豚とエコ・フードは二男が、バイオマス発電は長男が、それぞれ経営を担っていますが、それで安穏とはしていないのが熱田さんです。

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在来タニシより丸いジャンボタニシ

 バイオマス発電は、ドイツをはじめ世界各地の先進地に足を運んで研究し、補助金などの支援は一切なしで約5億円もの資金を調達して、発電容量毎時400キロワットの発電設備を建設しました。1日に出るたい肥、約10トンを発酵槽に入れて37度で加温発酵し、発生したメタンガスを燃焼させて発電しています。

 水稲や畑作物に液肥を活用して

 畜産たい肥という水分の多い原料を発酵させる湿式と呼ばれる発酵方法なので、最後には消化液と呼ばれる多くの廃液が残ります。

 この消化液は液肥として水稲や畑作物などに活用できるのですが、いまのところ消化液を活用した栽培技術は模索中で、現在、消化液は生態系に影響が出ない基準まで厳重に浄化して、河川に流しています。

 そこで熱田さんはいま、地域の水稲農家と協力して、この消化液を液肥として水稲に活用し、さらにジャンボタニシ対策にも生かせないかと研究しています。「消化液には高濃度のアンモニア成分が含まれ、これがジャンボタニシの撲滅に生かせるのではないかという実験研究が沖縄にあって参考にしました」と熱田さん。

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希釈倍率を変えてジャンボタニシの反応を実験する熱田さん(右)

 他の生き物に悪影響出さずに

 どれくらいの濃度なら水田に住む他の生き物に悪影響を出さずに、ジャンボタニシだけを駆除できるのかや、水稲への液肥効果、実際に水田散布する際の効率的な作業方法など、研究課題は山積みですが、以前農機具メーカーで開発研究していたという若い農業者の協力も得ながら、今日も地道な研究にいそしんでいます。

(新聞「農民」2018.6.18付)
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