新聞「農民」
「農民」記事データベース20180730-1321-16

自然エネルギーの実践で
原発ゼロ社会実現しよう

生消研 千葉・匝瑳市 スタディツアー


バイオマス発電(メタンガス) (株)エコ・フード
匝瑳ソーラーシェアリング合同会社 営農型メガソーラー(大規模)

 食糧の生産と消費を結ぶ研究会(生消研)が7月11日、食料とエネルギーの地域自給をめざした取り組み事例を学ぼうと、千葉県匝瑳(そうさ)市へのスタディ・ツアーを行いました。訪問したのは株式会社エコ・フードのバイオマス発電と、匝瑳ソーラーシェアリング合同会社の営農型大規模ソーラー発電です。

 エコ・フードは、食品メーカーなどから出る食品残さを乳酸発酵させて430トンの液体飼料を製造するとともに、匝瑳市内など4カ所の養豚場で2000頭を飼育しています。昨年10月に、養豚たい肥をメタン発酵させて出たメタンガスを燃焼・発電させるメタンプラントが完成。今年5月には併設の新しい豚舎(2000頭収容)も完成し、メタンプラントの本格的な稼働が始まりました。

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巨大な発酵槽が壮観のメタンガス発電プラント

 メタンプラントはドイツのENSPAR社製で、1日に投入するたい肥は約40トン、発酵槽、消化液槽はともに3000トン、発電量は375キロワットアワーです。電気は全量、FIT(固定価格買取制度)を利用して、東京電力に42円で売電しています。

 発電プラントに新豚舎を連結し

 新豚舎の設計と仕様資材もプラントとは別のドイツのメーカーから導入。冷暖房完備で、コンピューター制御による自動給餌システム、自動除ふんシステムも備え、集められたたい肥はプラントと連結されたパイプを通って、自動でプラントの貯蔵タンクに運ばれるようになっています。

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プラントは全工程コンピューター制御

 建設には約4億5000万円がかかりましたが、全額を借り入れで調達し、補助金はいっさいなしで完成させました。「計画では5年で完済する予定。現在のところ、発電も養豚も順調」とは、会長の熱田正行さんの弁です。

 ソーラーシェアリングの見学には、合同会社代表で農家の椿茂雄さんと、同社の母体となる「市民エネルギーちば」の東光弘さんがガイドを務めました。「土地改良事業で山を削って農地にしたが、土地がやせていて耕作放棄地が広がっていた。農業を守ることで、地域を再生したい。そのためのソーラーシェアリングだ」と語るお二人の熱い思いに、ツアー参加者も大きな感銘を受けていました。

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ソーラーシェアリングを見学

 国のエネ政策を変えていこう

 熱田さんと椿さんを囲んでの座学では、活発な討論が交わされました。そのなかでも、原子力発電を優遇し、送電網への再エネ電力の接続を拒否する電力会社の姿勢が、再エネ普及の大きな阻害要因となっていることが指摘され、「地域再生からも、地球温暖化からも、国のエネルギー政策を原発ゼロ、再エネ中心に変えていくことが、強く求められている」という意見が上がっていました。

(新聞「農民」2018.7.30付)
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