新聞「農民」
「農民」記事データベース20180903-1325-04

農業者は核に反対するべき

JA三次前組合長 村上光雄さん(76)


被爆した父の半生は
原爆反対のたたかい

 原水爆禁止2018年世界大会・広島にあわせて全農協労連が「平和を考える農協労働者のつどい」を開催しました。JA三次の元組合長で父親が被爆者の村上光雄さんが農業者としての平和や政治への思いを語りました。大要を紹介します。

画像
農協労組の組合員に思いを語る村上さん

 目に見えぬ被害
 核兵器の怖さ

 父は当時徴兵されていて、広島市の南、測候所がある江波山の南側に駐屯していました。山の影になって直接被爆はしませんでしたが、任務で市内に入り被爆しました。

 原爆の爆発でできたキノコ雲は積乱雲と同じで高濃度の放射能を含む激しい雨が降りました。直接の被害だけではなく、目に見えない放射線によって被害を与えるのが核兵器の恐ろしいところです。

 父は終戦後、帰農してからは原爆症特有の熱が出て自転車のチューブに水を入れて体を冷やしていたら、冷えすぎて風邪をひいてしまうなど、苦労をしていました。それでも私が帰農してからは案外元気で、世界大会にも毎年参加していました。また、当時見た光景を「焼け跡に行く先しるす貼紙をだれも見むきもせずに過ぎゆく」のように歌に託して伝えていました。父の残りの半生は原爆とのたたかいではなかったかと思います。

 原爆も原発も
 農家を苦しめる

 原発は「核の平和利用」と言われ、いいことと思い込まされていました。しかし、福島の事故を見て、原発も原爆も放射線を出すということは同じなのに、なぜ反対しなかったのか。父の痛ましい体験を無にしていたと思い、がく然としました。

 当時私は、全国農業協同組合中央会(JA全中)の副会長でしたので、大会議案に原発反対の方針を入れてもらいました。会議で「被爆しても元気な人もいるんだからそんなに恐ろしいものじゃない」というように、マスコミに踊らされ、ただ1点だけを見てそれがすべてのように言う人がいて腹が立ちました。福島でも自殺した農家が出ています。放射能の被害でどれだけの農家が苦しんだか。農業者にとって核は敵であり、反対して当然。しなければならないと思います。

 生産性のみ追求
 恐怖を感じる

 農政に対しても生産性のみを物差しとすることに恐怖を感じています。

 この7月の豪雨被害から、私は何とか復旧できましたが、採算だけを考えたら、復旧などできません。しかし農家は繰り返される災害を乗り越え、コメ自由化などにも耐えながら農地を守り続けてきました。生産性だけの問題ではないのです。

 輸出増を盛んに政府は言っていますが、どれくらい所得が増えるのか。逆に輸入はどれだけ増えたのか。安倍さんは都合のいい数字しか言わないです。棚田を、美しい日本を守るというが、どれだけ手間暇かかるか、安倍さんはわかっていません。一度棚田の草刈りをやってみてもらいたいものです。

 成長産業と言って生産性のみを追求するのではなく、農業にも多様性を認めるべきだと思います。そうしない政治に今の原因があります。

昔に戻そうとしている
安倍政権に反対の声を

 歴史認識持って
 平和な社会を

 安倍首相が昔を取り戻そうとしているのは間違いです。前に進まなくてはいけません。若い農協労働者のみなさんはきちんとした歴史認識を持ってください。あとはみなさんの時代です。グローバル資本主義は反対のことばかりやっていますが、われわれの目指すのは持続可能な社会です。せめて戦争のない社会は守っていかなくてはなりません。

(新聞「農民」2018.9.3付)
HOT情報
写真