新聞「農民」
「農民」記事データベース20181008-1330-06

農家が得する
税金コーナー
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配偶者の給与収入によって
世帯の実収入はどう変わるか

 前回述べたように、今年分から配偶者控除と配偶者特別控除が大きく変わりました。

 いわゆる「103万円の壁」などによって働くことを控えずに済むような環境づくりを目指したとされています。

配偶者控除、配偶者特別控除

 しかし、配偶者控除を受けられるようにという目的で給与収入103万円を意識していた人は少ないのではないでしょうか。これまでも配偶者特別控除があったので、103万円を超えたからといって世帯の実収入が減ることはなかったからです。むしろ自分自身の所得税がかからないようにという目的で103万円以下に抑えてきた人は少なくないと思います。見直し後もこの点は基本的に変わらないので、税制「改正」の効果には疑問があります。

 会社の配偶者手当は、給与収入103万円以下を基準としているところが多いようです。月1万円として年間12万円ですから影響は大きいですが、基準や金額は会社によって違います。

 他にも、配偶者の収入によって世帯の実収入が大きく変わる分岐点があります。住民税非課税の「93万円の壁」、会社の社会保険加入にかかわる「106万円の壁」と「130万円の壁」です。いずれも今回の税制「改正」に関わりなく、収入がわずかに増えることで世帯の実収入が大きく減ることがあり、今後も注意が必要です。

 93万円の壁

 所得が低い人にとって住民税は所得税よりも2倍以上重くかかります。住民税は均等割と所得割からなります。均等割が非課税になれば所得割も非課税であり住民税全体が非課税になります。住民税非課税になれば、税金だけでなく、医療費や介護利用料、介護保険料、後期高齢者医療保険料、保育料などの負担が大きく減ります。年間数十万円の差になることもあります。

 均等割の非課税限度額は市区町村ごとに定められている生活保護の級地区分によって変わります。『税金対策の手引き』49ページにあるように、1級地で35万円(給与収入100万円)、2級地で31・5万円(給与収入96・5万円)、3級地で28万円(給与収入93万円)です。農村部の市町村の多くは3級地です。

 106万円の壁

 社会保険の適用事業所で、1日または1週間の労働時間および1カ月の労働日数が、通常の労働者の4分の3以上あれば社会保険に加入することになっています。

 2016年10月から社会保険の加入対象が広がり、従業員500人を超える会社で1年以上働く見込みの70歳未満の人は、週20時間以上働き、月給8万8000円(年額105万6000円)以上受け取る場合は、健康保険や年金などの社会保険に加入しなければなりません。学生は対象外です。

 年額105万円から106万円に給与収入を増やすと、社会保険料負担が年間16万円も増え、手取り収入が大きく減ることがあります。社会保険料控除によって所得税と住民税が5000円減額になりますが、世帯の実収入は14・5万円減額になります。

 130万円の壁

 国保の場合は、他の健康保険に加入していない世帯員はすべて国保に加入する仕組みなので、「扶養」という仕組みがありません。一方、会社等の健康保険(協会けんぽ)の場合は、一定の条件に合う場合に扶養になることができます。

 その条件の一つが、年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)です。

 年収129万円から130万円になって扶養から外れると、社会保険料負担が年間19・6万円も増え、手取り収入が大きく減ることがあります。

 社会保険料控除によって所得税と住民税が2・8万円減額になりますが、世帯の実収入は15・8万円減額になります。

(新聞「農民」2018.10.8付)
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