新聞「農民」
「農民」記事データベース20181015-1331-01

農民が国際政治を動かした

農民の権利宣言
国連人権理事会が採択

関連/農民の権利宣言(骨子)
  /世界の農民の知恵集めた権利宣言


アグリビジネス・安倍農政に対抗する力

 世界の農民が国際政治を動かした―。ジュネーブで開かれていた国連人権理事会は9月28日、小農民と農村で働く人々の権利に関する宣言(農民の権利宣言)を、3分の2を上回る33カ国の賛成で採択しました。反対は3、棄権は11。日本政府は棄権しました。

 農民の権利宣言は、小規模家族農民、漁民、農業労働者など農村生活者の権利を守る国際的枠組み。全28条には、自らの食料や農業に関する政策や制度を自ら決定する権利である食料主権(第15条)、適切な生活水準を維持できる価格で生産物を販売する権利(第16条)、自家採種を行う権利、手頃な価格で種子を手に入れる権利(第19条)が含まれます。

 これらは、日本を含む世界で加速するアグリビジネスによる農業支配に対抗する効果的な手段となります。家族農業つぶしと、企業による農業を推し進める安倍農政とたたかう手立てとしても期待されます。

 農民の権利を守る国際的枠組みの必要性については、国際農民組織ビア・カンペシーナの加盟組織、インドネシア農民組合(SPI)が2000年に初めて提唱。その後、ビア・カンペシーナ全体として成立に向けて各国政府に働きかけてきました。農民連もビア・カンペシーナの加盟組織として、日本やアジアの他の国に権利宣言への支持を訴えてきました。

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国連ヨーロッパ本部ビル前で、農民の権利宣言の成立を求めてアピールするビア・カンペシーナの仲間たち(9月20日、ジュネーブ)

 ビア・カンペシーナのムポフ代表(ジンバブエ)は、「長くタフな(厳しい)道のりだったが、最悪の貧困を経験し、無視されてきた私たち農民もタフ(不屈)であり、決してあきらめない」と述べ、宣言の最終的な成立と実施まで全力を挙げる決意を示しました。

 ビア・カンペシーナとともに宣言づくりを主導してきたボリビア政府の代表は、小規模農民が世界の食料の大半を供給していることを指摘し、宣言を支持することは多くの家族の生計、持続可能な発展、生物多様性を守ることだと強調しました。

 日本政府が棄権したことについて外務省の担当者は「農民の権利については国際的議論が未成熟だ」と釈明しました。

 ビア・カンペシーナ・ヨーロッパの指導者、ラモナ・ドゥミニシオユさん(ルーマニア)は「反対、棄権に回った国は、貧困根絶、食料主権、格差縮小の努力に背を向けている」「極めて悪質だ」と非難しました。

 農民の権利宣言は今後、ニューヨークで開催中の国連総会の採決に付される予定です。

(2面に骨子)


世界の農民の知恵集めた権利宣言

インドネシア農民組合
ヘンリー・サラギ議長

 とても長い道のりでしたがようやくここまでこぎつけました。この宣言は、私たちはもとより、世界の農民の知恵を集めて作られた農民による農民のための権利宣言です。

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農民の権利宣言を手に喜ぶサラギ議長

 飢餓、貧困、食料危機、気候変動など世界的問題を解決するため、農民の土地、種子、生物多様性などに対する権利を定めたものであり、途上国だけでなく、日本などの先進国を含め世界にとって重要です。

 今後国連総会で採択され、成立すれば、国際的な「基準」となり、各国は国内法を整備しなければならなくなります。法的拘束力がない「宣言」で無力という声は間違いです。宣言の内容を履行しない国に対しては、国際的圧力がかかることになるからです。

(新聞「農民」2018.10.15付)
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