新聞「農民」
「農民」記事データベース20181210-1339-01

再検証 日欧EPA
輸出大攻勢狙うEU

日欧EPAとTPP11
ダブルパンチに


とんでもない底なしの自由化

 安倍政権が批准をゴリ押しする日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(日欧EPA)。12月30日に発効するTPP11と合わせてダブルパンチとなり、農業への影響は重大です。日欧EPAの危険な内容について改めて検証してみました。

 TPP上回る自由化

 日欧EPAには、TPPを上回る自由化が含まれます。

 TPPで関税維持だったカマンベールなどのソフトチーズについては、現在の輸入量の1・5倍に当たる輸入枠を設け、関税をなくします。パスタやチョコレートの関税も撤廃。8年目に撤廃だったワインの関税は発効直後にゼロです。

 一方、豚肉やソーセージなどの加工品、トマトの加工品は、TPPと同じ譲許です。しかし、EUのブランド力と輸出能力が高いため、TPP以上の打撃が予想されます。

 身勝手な押し付け狙うEU

 EUも、日本への農産物輸出大攻勢に出ようとしています。

 EUは加工食品の年間対日輸出を51%(約1300億円)増と予測。乳製品は215%(約948億円)も増えると見込みます。

 とりわけ、乳製品市場の開拓について「特に重要」と位置付け、市場開放に躍起です。背景には、(1)生乳生産割当制度の廃止による生産量の増加、(2)ロシアによるEU産農畜産物の禁輸、(3)交渉中のニュージーランドとの自由貿易協定(FTA)が成立した場合、安い乳製品が流入し、EU産が行き場を失う恐れ、があります。EU側の事情で余った乳製品を押し付けようという身勝手な意図が透けて見えます。

 一方、日本では、歴代政権による農産物貿易自由化政策などのため、乳用牛飼育戸数は、1985年に8万戸を超えていたのが、2018年には1万5700戸まで激減。飼育頭数も、211万頭から133万頭まで減りました。

 日欧EPAはこれに追い打ちをかけます。

農業への打撃はTPP上回る分野も

 EUと韓国の先例が裏付け

 自由貿易協定がEUによる輸出大攻勢を招くことは、韓国の先例が裏付けています。

 2011年に暫定発効したEU韓国FTA。この中で韓国は、豚肉の関税の10年以内の撤廃、チーズの輸入枠などを受け入れました。

 その結果、2010年に10万トンだった韓国のEU産豚肉輸入量は、2017には22万トンに到達。チーズの輸入量は7倍近くになりました。

 日欧EPAが、現在ある自由化約束だけでも、日本の農業に壊滅的打撃を与えかねないのは明らかです。

 ところが、これをさらに改悪するための「見直し」規定も含まれます。発効5年目の見直しは、関税削減・撤廃を一層進める観点から行わなければなりません。

 まさに日本の農業をつぶすとんでもない底なしの自由化です。絶対に批准させてはなりません。

(新聞「農民」2018.12.10付)
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