新聞「農民」
「農民」記事データベース20181217-1340-07

結成30年の力を生かし、日米FTAストップ、
「家族農業の10年」の運動を広げ、
強く、大きい農民連を
(5/10)

農民連第23回定期大会決議(案)
2018年12月5日
農民運動全国連合会常任委員会

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 また、FAOは、家族農業を「家族または主に家族労働力によって営まれる農林漁業生産」と定義しています。FAOによると、世界の農業経営体は約5億7000万あり、そのうちの90%の5億1300万が家族経営体です。日本やヨーロッパ、アメリカでもほぼ同じです(図表5)。

 家族農業が再評価されている理由は3つあります。

 第1は、これまでの常識とは逆に、農地の生産性の高さや、資源の效率的利用の面で、家族農業こそが效率的だということです。

 14年の国際家族農業年に向けて公表された国連の専門家グループの報告書は、次のように述べています(「国連世界食料保障委員会専門家ハイレベル・パネル報告書」、13年6月)。

 「大規模農業と比較して、小規模農業の方がむしろ効率的である」「小規模農業には、適切な支援が行われれば、食料保障、食料主権、雇用創出、貧困削減に大きく貢献する能力が備わっている。さらに、生物多様性や自然資源の持続的管理、文化的遺産の保護にも貢献することができる」

 第2に、地球温暖化や環境破壊から人類の未来を守る課題でも、小規模家族農業が評価されています。

 第3は、家族農業が地域経済と雇用を支えていることです。国連文書は「農業は世界最大の雇用者で、世界人口の40%に生計をもたらしている」と指摘しています。

 日本でも若者たちの「田園回帰」が一つの潮流になっています。家族農業を支援し、地域振興を行うことは、若者たちを農山漁村に迎え入れて社会の持続可能性を維持するうえで不可欠です。

*世界中で進む家族農業の危機

 以上のように家族農業が再評価されている反面で、農地収奪や農産物の買いたたき、種子の取り上げ、さらに地球温暖化のもとで進む災害の頻発などなど、家族農業の危機が世界中で進んでいます。「家族農業の10年」と「農民の権利宣言」の背景にあるのは、こういう危機感です。

 (2)「家族農業の10年」「農民の権利宣言」にどうとりくむか

   (1)安倍農政に「家族農業の10年」を正面から対置して
 こういう世界の流れに全く逆行しているのが安倍政治であり、官邸農政がねらうのは「農民の権利宣言」どころか「アグリビジネスの権利宣言」です。日米FTA交渉入りなどの総自由化体制は逆行の最たるものです。

 農民連は、こういう安倍政治に「家族農業の10年」を正面から対置して農政の根本的な転換を要求してたたかいます。

   (2)「家族農業の10年」に呼応し、「食料自給率向上、農林漁業の再生、農山漁村をよみがえらせる国民運動」を呼びかける
 「家族農業の10年」は、日本政府も共同提案国になって国連総会が決定したものであり、自治体やJAをはじめ、広範な関係者に賛同を呼びかけやすい条件があります。この条件を生かし、農政を変え、地域から生産を広げて、食料自給率を向上させ、農山漁村を再生する草の根からの運動を広げましょう。

 すべての農業・漁業関係者、食料自給率の現状や食の安全、環境などを危惧しているすべての市民・消費者が、「食料自給率向上、農林漁業の再生、農山漁村をよみがえらせる」ために力をあわせることを提案します。

 そのため、(ア)都道府県や市町村、農業関係団体が「家族農業の10年」を住民や構成員に宣伝・啓蒙し、(イ)家族経営を基本に地域の農林漁業の活性化をはかるための生きた計画を住民ぐるみで作ること、(ウ)後継者育成、助け合いなど生産維持のためのとりくみを強めること、(エ)政府に「決議」にのっとった農政を実現するように働きかけることを呼びかけます。

   (3)青年・後継者対策を重視して
 家族農業を維持・発展させるうえで、青年・後継者対策は要の位置を占めます。

 90年代前半まで、若者の就農は年5000人以下に低迷を続け、今日の高齢化の引き金になりました。フランスが70年代から「青年就農者助成制度」を実施し、農を継ぐ働き手を育てあげてきたのに比べれば、自民党政府がとった対策は「無策」に近いものでした。

 民主党政権のもとで、日本でもやっと12年から生活費150万円を最長5年間支給する「青年就農給付金制度」がスタートし、新規就農者は2万人を超えています。若者たちの「田園回帰」が一つの潮流になっており、「地域起こし協力隊」も09年の89人から17年には5000人近くに達し、任務終了後、6割が地域社会の一員として積極的な役割を果たしています。

 同時に、農業就業者を安定的に確保するためには、現在の2倍以上の就農が必要であり、「家族農業の10年」の最重点課題としてとりくむ必要があります。後継者確保・育成制度の法制化、親元就農への支援の強化、技術取得や販路確保のためのいっそう親身な相談・支援の強化など、抜本的な強化がどうしても必要です。

 農民連のまわりでも、法人化して都市の青年を「後継者」にしたり、農民連が後継者対策のより所になっているなど、すぐれたとりくみが活発になっています。こういう経験にも学び、新しい農の担い手確保に全力をあげましょう。

   (4)国際連帯を強めて
 「家族農業の10年」「農民の権利宣言」にみられる国際的な農政の大転換は、農民連も加盟する小規模家族農民の国際組織ビア・カンペシーナが、他の市民社会組織の運動と共同して、国際政治を動かした結果、実現してきました。国際連帯なしに、転換はありえなかったといってよいでしょう。

 ビア・カンペシーナと農民連は、5月に東南・東アジア地域会議を日本で開催し、国際フォーラムを5月25日に開いて、「家族農業の10年」「農民の権利宣言」の運動を前進させる大きな節目にします。

 国連は17年7月、核兵器禁止条約を採択し、核兵器禁止に向けた大きな一歩を踏み出しました。「家族農業の10年」のとりくみのなかで、「農民の権利宣言」を「農民の権利条約」に――壮大なたたかいに全力をあげましょう。

5 市民と野党の共同で、安倍政権を追いつめ、新しい政府の展望を切り開こう

 9月の自民党総裁選挙で安倍首相が3選を果たしました。しかし、党員票のうち45%は反安倍票に流れ、党内にも政治の私物化や暴走政治への批判が根強いことを示しました。

 9月の沖縄県知事選挙での玉城デニーさんの圧勝はじめ、豊見城市長選・那覇市長選での「オール沖縄」候補の連続勝利は、首相官邸をはじめ国家権力総動員で沖縄県民の民意を押しつぶそうとした安倍政権に対する痛烈な審判になりました。

 また、第4次改造内閣の閣僚の不祥事が相次ぎ、森友・加計問題に対する根強い不信感に加え、入国管理法のデータ改ざん、消費税増税、9条改憲、原発再稼働など、国民との矛盾はさらに深まっています。

 与党内には、安倍首相のままで統一地方選、参院選がたたかえるのかと動揺が走り始めています。

 改選される参議院の一人区32議席のうち自民党が31議席です。野党間の「本気の共闘」が実現すれば、逆転は可能です。非改選議席を含めて参議院で、自公とその補完勢力を少数に追い込み、衆参でねじれを作り出し、解散・総選挙に追い込む展望が開けてきます。

 統一地方選挙、参議院選挙で、安倍暴走政治をストップさせ、農民、国民の要求を根本から解決する展望を切り開きましょう。

V 地域から生産を守り、農政の転換を求める運動

1 米を守る運動

 (1)不安定な需給見通し、収入減少は確定的

 18年産米の農協の概算金は若干上昇していますが、昨年のような追加払いは期待できないうえ、米直接支払交付金の廃止による収入減に加えて、天候不良による品質低下で検査格付けが下がれば、さらに収入減になります。

 18年産米の生産量は作柄不良により733万トンですが、一方で11月28日の食糧部会で需要見通しが735万トンへと引き下げられたため、19年産米の生産見通しは718〜726万トンとされ、18年産に比べて17〜9万トンもの「生産調整」強化が求められることになりました。

 (2)ミニマムアクセス(MA)米・SBS輸入米ストップの運動を

 TPP11が18年12月30日に発効し、オーストラリア産米のTPP特別枠が19年3月までの初年度分2000トン、4月から6000トンの入札が開始されます。

 TPP交渉ではSBS(売買同時入札)方式の見直しが合意されており、(1)予定数量に満たなかった場合、翌日に再入札を実施、(2)3年度中2年度で数量が消化されなかった場合はマークアップ(売渡価格と買入価格との差額)を15%引き下げるなど、国内生産者に対する冷たさとは真逆に、外米輸入に対しては最大級の優遇措置が取られます。

 さらに、今年から始まる「日米FTA」交渉では、アメリカのTPP国別特別枠(7万トン)を上回る要求が出されることは必至であり、絶対に許さないたたかいが必要です。

(新聞「農民」2018.12.17付)
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