新聞「農民」
「農民」記事データベース20181217-1340-09

結成30年の力を生かし、日米FTAストップ、
「家族農業の10年」の運動を広げ、
強く、大きい農民連を
(7/10)

農民連第23回定期大会決議(案)
2018年12月5日
農民運動全国連合会常任委員会

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 (3)食を取り巻く情勢が激しく動いている

 世界では、EU(欧州連合)のネオニコチノイド系農薬禁止、グリホサートの健康影響を争われたアメリカでの裁判、ゲノム編集食品の流通開始など、食を取り巻く情勢が激しく動いています。

 農民連の農産物に安全、安心の信頼を寄せる消費者、流通業者に応えるためにも、分析センターを活用し、科学的データに軸を置いた農産物の検査活動が重要です。

 残留農薬の定期的な検査にとりくみましょう。安全な農産物の生産には、栽培計画と農産物の定期検査が必要です。栽培管理の工程に定期検査を位置付け、安全・安心の担保としましょう。

 (4)分析センターの苦境打開にご協力を

 一方で、分析センターの経営は、極めて厳しい状況にあります。分析センターの機能を強化するための検査強化募金はまだ目標額に到達していません。一層の募金活動への協力とともに、農民連会員による検査活用を呼びかけます。

 分析センターの全ての検査を、半額で利用できる農民連会員割引は、会員拡大に大変有効です。身のまわりの仲間に積極的に声をかけ、国産農産物の良さを伝えるとりくみを前進させましょう。

5 原発ゼロへ、再稼働阻止、全面賠償、再生可能エネルギー

 (1)原発推進・復活政策の行き詰まりと損害賠償のたたかい

 原発再稼働反対は、どの世論調査でも5割を超え、揺るぎない国民世論になっています。こうした国民の声を無視して安倍政権は、次々と原発の再稼働を進めています。

 「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」――福島原発訴訟では、国・東京電力の責任の明確化を求めています。原子力損害賠償法は、事故が起きたら責任の有無を問わずに賠償する「無過失責任」にもとづいていますが、東電は「想定を超える津波」が原因という立場を崩さず、賠償責任を逃れようとしています。国・東電は5年で賠償を終了する想定から、次々に賠償打ち切り政策を出してきました。

 しかし、事故から8年近くが経過しても「収束」にはほど遠く、4万3025人(県内9790人、県外3万3235人)もの人々が避難生活を強いられています。避難指示解除と賠償の打ち切りは、被害者に新たな苦しみを押し付けて、福島を切り捨てることにほかなりません。

 東電は、19年1月以降の農林業の賠償を見直します。避難区域での農業の再開が遅々として進まない中での賠償縮小は、事故の加害者としての責任を全く感じていないことを示す許しがたいものです。

 (2)農村でエネルギー自立をめざす

 現在、福島県農民連が関わる太陽光発電の設備容量は8000キロワット(約1600世帯分)を超え、茨城農民連や長野県農民連など全国各地で太陽光発電設置に挑んでいます。買取価格が下がったとしても、設置コストが下がっており、事業としての採算は十分確保できます。太陽光パネルの下で営農するソーラー・シェアリングにとりくむ農家も増えています。

 バイオマス発電や風力、小水力発電の可能性も農村にこそあります。農民連組織が自治体や市民団体との協同をはかりながら事業推進の要の役割を果たすことが求められています。

 ヨーロッパの再生可能エネルギーの半分は「森林」です。世界有数の森林大国・日本が森林資源を活用できれば、エネルギー分野でも化石燃料を大幅に減らすことができます。農村は食料・エネルギー生産基地であり、食料・エネルギー自立地域への転換の鍵(かぎ)は森林資源の活用にかかっています。

 「エネルギー自立地域」をつくっていくうえで求められるのは、自然の手入れ、自然の恵みを無駄にしないための国土の保全です。多面的機能支払制度や中山間地直接支払制度などを積極的に活用し、制度の充実を求めていくことが求められます。

6 都市農業を守り発展させるとりくみを

 長年の継続的な運動によって都市農業が持つ多面的機能への期待が高まり、都市農業基本法は「都市農地は保全すべきもの」へと従来の方針を180度転換させました。

 都市農業基本法は、各自治体に「基本計画」の策定を義務づけています。策定に住民の声を反映させるため、積極的に計画づくりに参加しましょう。

 生産緑地指定が切れる2022年を前に、農業継続を前提とした「特定生産緑地制度」と、農地を「市民農園」などに貸し付けても、固定資産税の農地並み課税、相続税の納税猶予制度の適用が可能になりました。こうした制度を活用し、地域住民と一体となって都市農業を守るための多様なとりくみを進めましょう。

7 中山間地を守る運動と鳥獣害対策

 安倍官邸農政は中山間地にますます困難をおしつけ、人も住めない農山村を加速させています。中山間地直接支払い制度を充実させるとともに、住民の要求にもとづいた持続可能な農山村にするための支援策を政府や自治体に要求します。

 鳥獣による農作物被害は生産意欲を根こそぎ奪います。防御柵・ワナへの補助、狩猟後継者対策、ジビエの活用、焼却施設など鳥獣害対策の十分な予算の確保と、国と地方自治体、住民が連携したとりくみへの支援の強化を要求します。農民連として、鳥獣被害対策の交流会の開催を検討します。

8 自然災害の救援・復興の運動

 18年は、西日本豪雨や巨大台風、大阪北部や北海道での大地震、記録的な猛暑など、災害があいつぎ、尊い人命と財産が失われ、農業にも甚大な被害が発生しました。また、北海道での大凶作をはじめ、全国各地で米、野菜、果実などが大きな影響を受けました。

 農民連本部と全国の農民連組織は機敏に被災地調査を行い、被災者を激励するとともに、繰り返し農水省や関係自治体に対策を要求して奮闘してきました。このなかで多くの被災地を激甚指定させるとともに、倒壊した農業用ハウスや建物に対して「被災者向け経営体育成支援事業」を発動させたことは大きな成果でした。

 この数年来の災害は異常気象によって大型化、頻発化しており、日本中、季節を問わずいつ災害に襲われるかわからない“災害列島”になっています。こうしたなかで政府に求められるのは、「創造的復興」などと惨事に便乗したゼネコンのもうけ本位の「復興」から、的確な気象観測と伝達、防災対策、憲法に基づいた被災者の居住・職業選択・幸福追求権を確保する救援対策の抜本的見直しです。その最も中心となるのが全壊や住めなくなった住宅再建を支援する「生活再建支援制度」を、現行の300万円から当面、500万円に拡充することです。

 「被災者向け経営体育成支援事業」について、農水省は、ハウス共済への加入を補助金交付の条件にするなど、重大な後退が生まれています。ハウス共済の加入率が低い原因は保障額が低く、200平方メートル以下は加入資格がないことにあります。ハウス共済加入を補助金交付の条件にすることは、小規模経営を制度から排除することにほかなりません。現行の「担い手支援」に限定した農業被害対策を、被災したすべての農家を対象に改めるとともに、被災しても経営が再建できる支援策を要求して運動を広げます。

9 農家の暮らしと農村を守る多様な要求運動

 (1)消費税増税・「軽減」税率・インボイス制度導入阻止の運動

 安倍政権は、19年10月から、消費税増税・「軽減」税率・インボイス制度の導入を予定通り実施するとしています。しかし、「軽減」とは名ばかりで、1世帯当たり年間8万円もの負担増になります。景気はさらに落ち込み、格差と貧困はますます広がる事態となります。

 農産物の多くは「軽減」税率で、その仕分けは複雑であるとともに、煩雑な実務が伴います。

 23年10月1日以降は、インボイス制度になり、インボイスの保存が仕入税額控除の要件になります。適格請求書等の発行は、事業者登録が必要で、課税事業者しか登録できません(23年までの4年間は経過措置となり、区分記載請求書等を保存、記帳し、仕入税額控除の適用を受けます)。インボイスが発効できない免税事業者は、取引から排除されかねません。

 また産直組織の構成員の多くは、免税事業者です。これら生産者からの仕入れが、仕入税額控除の対象にならなければ、産直組織は大きな負担になります。これを回避するには免税事業者から課税業者になるか、値引きするしかありません。

 さらに軽減税率対象品目については、売上額から委託販売手数料を引いた額を課税売り上げとする特例の適用が受けられないとされています。これにより免税事業者から課税事業者になる農家が増え、簡易課税では税額が増えます。

 今回の消費税増税は、今までの増税とは次元の違う営農破壊税です。家族農業とそれを支えてきた産直組織に大きな打撃を与えます。

 消費税増税ストップの運動に結集し、消費税増税をやめさせましょう。消費税増税・「軽減」税率・インボイスの問題点を学び、まわりの農家に広め、反対世論を高めましょう。農協・産直組織・直売所など様々な農業団体への申し入れを広げ、消費税増税反対署名、地方議会請願などの運動を広げましょう。参議院選挙で、自公政権を少数に追い込み、消費税増税を断念させましょう。

(新聞「農民」2018.12.17付)
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