新聞「農民」
「農民」記事データベース20190107-1342-07

家族農業
私はこう考える

農民連前会長 白石淳一さん(北海道・岩見沢市)


北海道の現場から
農産物自由化と規模拡大
一辺倒に未来は託せない

 私の住む岩見沢市は石狩平野の中央部、平坦な土地柄と水利に恵まれていたことから北海道でも有数の米産地として発展してきた。

 私の集落は30年前までは70戸ほど、稲作中心の専業で生計を立てていた。現在は、25戸に減少している。離農跡地を引き受けるため農家の経営面積は拡大の一途をたどっている。

 規模拡大が経営安定にならず

 しかし、規模拡大が農家の経営安定に結びついていないのが実情だ。経営面積を拡大すれば土地購入のための負債、大面積をこなすために大型機械の導入も必要になる。

 この負債を返済するためにさらなる規模拡大を行うという「自転車操業」に陥っている農家も少なくない。

 規模拡大は作付けする作物にも制約が及ぶ。大面積を耕作するには、人手をかけずに農業機械で一挙に作業できる作物に偏りがちだ。その結果、最近の気候変動の影響を大きく受ける要因にもなっている。

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牛と人の健康にも、農地・環境にも優しいマイペース酪農の現地交流会

 地域社会にも陰を落とす離農

 離農の増加は、個々の農家の経営問題だけにとどまらず地域社会にも大きな陰を落としている。先月、私の母校である中学校が閉校式を行った。来年には小学校の閉校が予定され、私の生まれ育った地域から小・中学校が姿を消すことになる。閉校の理由は児童・生徒数の減少だが、なんとも寂しいものだ。

 農家戸数の減少は、地域社会に大きな影響を与えている。2010年に北海道庁がTPP(環太平洋連携協定)の影響試算を行った。農業生産額・戸数の減少とともに地域経済への影響で11万人の雇用が失われると試算した。

 底無しの自由化 壊滅的な打撃に

 今、多くの反対の声を無視して安倍政権はTPP11につづき日欧EPA(経済連携協定)の承認を強行し、日米FTA(自由貿易協定)も推進しようとしている。

 政府の農産物自由化拡大と農業切り捨ての政策で地域さえ守り切れない状況にもかかわらず、底なしの農産物自由化を実施すれば、農業と地域社会は壊滅的な打撃を受けることは明白だ。なんとしても阻止しなければならない。

国連「家族農業の10年」と「農民の権利宣言」は
農家に大きな勇気与える

 「権利宣言」が実現できる運動を

 一方、国連が「家族農業の10年」に加えて「農民の権利宣言」を採択した。

 これは、農業を生業としているものに大きな勇気を与え、規模拡大と地域社会を維持する課題のジレンマに悩む生産者にとっても、今後の経営の方向を考える上で大きな指針になるものだ。

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消費者も白石さんの畑を訪れ、タマネギを収穫

 家族農業を考える上で大変参考になる事例が北海道にある。農民連の会員も多数参加している「マイペース酪農」の実践だ。酪農は北海道の中でも最も規模拡大や機械化が進んでいる分野だ。搾乳牛200頭規模の酪農家もめずらしくない。

 そうした中でマイペース酪農は搾乳牛40頭程度、放牧での管理が中心で、牛の健康にとっても、農地・環境にとっても優しい対応となっている。

 何よりも、酪農家が牛の世話に明け暮れる生活から、自分たちの生活を楽しめるゆとりが生まれていることだ。このことも持続可能な農業を考える上で大事ではないだろうか。

 政府のいう規模拡大、効率化一辺倒ではない「家族農業の10年」や「農民の権利宣言」が実現できる運動を発展させる必要性を実感している。

(新聞「農民」2019.1.7付)