新聞「農民」
「農民」記事データベース20190114-1343-03

TPP11発効にあたって

2018年12月30日
農民運動全国連合会


 TPP(環太平洋連携協定)11(アメリカを除いた11カ国によるTPP)が12月30日に発効した。農産物重要5品目の3割もの関税削減・撤廃、野菜・果物の約98%で関税が撤廃される。かつて経験したことのない農産物の市場開放へ突入する。

 そして重大なことに、アメリカが離脱したにもかかわらず、日本政府が修正を要求しなかったために、牛肉のセーフガード(緊急輸入制限)や乳製品の低関税輸入枠などは、アメリカを含めた枠組みのまま10カ国に容認することとなり、TPP12以上に農業への打撃を与えることは必至である。

 茂木経済財政・再生大臣は、「第6条見直し規定があるから大丈夫だ」「各国首脳とは合意ができている」と説明してきたが、いまだにセーフガードの見直しを提案しようとしていない。発効後数年たって見直しを提案しても、すでに輸出枠を拡大したオーストラリアやニュージーランドが応じるはずはない。

 さらに、先の臨時国会で批准が強行された日欧EPA(経済連携協定)が2月1日に発効する。日欧EPAではソフト系チーズやワイン、林産物など、ヨーロッパの得意とする分野でTPP以上に譲歩している。わずか1カ月のうちにメガ自由貿易協定が二つも発効する。

 さらに、2019年1月下旬には、日米FTA(自由貿易協定)交渉が開始されようとしている。安倍政権はあくまでもTAG(物品貿易協定)と強弁し、国民を欺こうとしている。

 しかしトランプ政権は、アメリカ議会に対して示した交渉方針で、為替、投資、知的財産、通信、金融、サービス、経済社会のルールなど22項目をテーマにすると報告している。

 トランプ政権の狙いは、TAGどころかまぎれもない日米FTAそのものであり、為替や医薬品などの分野ではTPPをさらに上回る水準が狙われている。

 農業だけでなく、食の安全も、医療も、知的財産も公共調達も暮らしのあり方も協議に上り、国民生活全般が、多国籍企業のもうけの対象にされてしまう。

 2010年に農水省が全世界を対象に農産物市場を開放した場合の試算を発表したが、この試算によると、食料自給率は39%から14%に下落し、米は9割減、小麦・砂糖は壊滅、牛肉・豚肉は7割減、農畜産物の生産額は半減する。

 安倍政権が進めている総自由化路線のもとで、この試算は現実味を帯びており、日本の農業と国民の食糧と健康にとって危機的事態になることは必至である。

 2019年から国連「家族農業の10年」がスタートし、昨年12月17日には国連総会で「農民の権利宣言」が採択された。世界の食料を支え、格差と貧困をなくして持続可能な社会を確立する上で、家族農業は欠かせない存在だと再評価している。日本でも98%は家族農業である。

 際限のない自由化ドミノを推し進める安倍政治は、こういう世界の流れに完全に逆行する。農民連は、食料自給率の異常な低さや食の安全、環境などを危惧するすべての市民・消費者と力をあわせて、食糧主権を守り、家族農業を基調とする農業・食料政策への転換を求めてたたかう。

(新聞「農民」2019.1.14付)