農民連第23回大会の発言から集落営農組合を結成
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稲刈り・乾燥調整担い
家族経営を支える
岩手
岩手県盛岡市では、国の「多面的機能支払交付金」を活用して、草刈りや泥上げ、水路やU字溝の設置などを集落みんなで取り組む「下鹿妻(しもかづま)環境保全会」が2016年に発足し、地域の助け合いと営農を守ってきました。その後、この保全会が地域の農業について話し合い、解決する場となり、環境保全だけでなくさらに生産そのものを守る集落営農組織づくりの検討が始まりました。田植え・稲刈りなどの共同はもちろんですが、地域でとりわけネックとなっている「米の乾燥調製」も大きなテーマ。そこで、「ミニライスセンターもつくろう」と構想に話が及びました。
「誰もが担い手」みんな助け合う
そこで「担い手しぼりこみの法人化」でも「一匹狼」でもない、家族農業で助け合うほんとうの共同をめざし、2018年8月26日、「下鹿妻・越場地域集落営農組合」が発足しました。当面、担うのは稲刈りと乾燥調製です。農家戸数120人の地域で、発足時点で30人が参加。初年度の稲刈りは6人で2・6ヘクタールでした。コンバインは、組合員のものを使用。乾燥調製施設は、土建業と兼業でやっている組合員の大きな小屋を活用しています。作業は、コンバイン1台を2人で、乾燥機2台を2人で行いました。「組合への登録は親の名前だが、作業は息子が出る」という家が2軒あり、乾燥調製作業には若手2人が活躍しています。
初年度の作業量はまだ限られていますが、要求は切実です。今回稲刈りをした80代の女性からは、何べんもお礼を言われました。そして、組合員からは「うちもコンバインが壊れたから、来年からは集落営農で」と、期待が寄せられています。
盛岡農民組合の小笠原憲公組合長たちが農民組合の仲間2人で従来から取り組んでいる機械利用組合(コンバイン作業の受託グループ)・乾燥調製施設も引き続きフルに稼働しています。地域では集落営農組合とあわせて稲刈り・乾燥調製が安定的に行われるようになりました。
若手からベテランまで総出で草刈り |
組合員の意見を尊重し力生かす
組合規約には「農業生産法人化計画に即し、農業生産法人を図るものに努める」と書いてあります。しかし「小規模農家・家族農業の可能性を切り捨てて担い手に集約するような法人化はしない」というのが組合の本音です。その姿勢がよく表れているのが、加入申込書での意向調査アンケートです。頼みたいことを聞くだけではなく、参加する組合員一人一人が何をできるか、何の機械をもっているかを尋ね、その力を生かそうというのです。「これ以上『土地持ち非農家』は増やさない」。強い決意がそこにはあります。
「家族農業」を柱としているので、集落営農でなんでも飲み込んでしまうことはしません。年会費3000円を集めて運営し、あとは作業に応じた料金を集めています。
「乾燥機を大きくしすぎない」「各農家の米は混ぜない」ので、「うちの米は、量・品質はこうだった」「あなたのところは?」と、それぞれの農家が技術を伸ばす交流の場にもなっています。
ハウスの中もすっきり |
生産から撤退しないを大切に
集落営農づくりで中心的な役割を担っているのが盛岡農民組合の仲間。この数年、岩手県農民連農産物供給センターを通して、主食用米・備蓄米の産直出荷も広がっています。「田んぼを田んぼとして生かしながら転作もクリアできる」という備蓄米出荷のメリットが歓迎されました。集落の中でがんばっている仲間に意識的に声をかけ、23人の会員となっています。そして「保全会」や集落営農の中心的な役割を果たしたのも、この間に迎えた農民組合の仲間です。「農民組合なしには地域の営農が進まない」というのが実態です。
政府による生産調整の数量配分がなくなり、多くの農家は「これからどうするか」と悩んでいます。加入申込書の意向調査に設けた「コメの販売もお願いしたい」という項目が、ここで意味をもってきます。「大事なのは、生産から撤退しないこと。岩手県農民連農産物供給センターで提起している加工用米や備蓄米などの取り組みを生かして、田んぼを田んぼとして守る論議を呼びかけていきたい」。小笠原さんは、意気込みを語っています。