新聞「農民」
「農民」記事データベース20190204-1346-03

農民連第23回定期大会の
常任委員会報告
(大要)

関連/集落営農組合を結成 地域みんなが担い手
  /M・チャールズボリコ所長あいさつ
  /農民連第23回定期大会の常任委員会報告(大要)
  /23回大会で選出された新役員(敬称略)
  /各界・個人からの祝電・メッセージ(順不同・敬称略)

 農民連第23回定期大会で吉川利明事務局長が行った常任委員会からの報告(1月15日)の大要は次の通りです。


【1】2019年は激動の情勢の幕開け

 昨年12月30日にはTPP(環太平洋連携協定)11が発効し、2月1日には日欧EPA(経済連携協定)が発効します。日米FTA(自由貿易協定)は、1月20日から協議が可能になり、TPP以上の譲歩を迫ってくることは明らかです。安倍政権はTAG・物品貿易協定と強弁していますが、米国通商代表部が22分野を明示しているように包括的自由貿易協定、FTAであるのは明らかです。経験したことのない農産物市場開放が現実のものになろうとしています。

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報告する吉川事務局長

 一方で、2019年から国連「家族農業の10年」が始まり、昨年末には国連総会で、「農民の権利宣言」が採択され、家族農業の再評価が始まっています。家族農業が、世界の食料生産の80%以上を担い、飢餓と貧困を解消し、地球温暖化や環境破壊から人類の未来を守ることなどでも再評価されています。

 こうした2つの流れの対決の中で、私たち農民連は30周年の記念大会を迎えました。自由貿易協定を次々に推進し、家族農業を切り捨てる安倍政権は、世界の流れと逆行します。

 農産物総自由化路線は農業だけの問題ではなく、食料自給率の低下と食の安全が危機的事態になることは明らかで、消費者・国民との矛盾を深めます。

 国連「家族農業の10年」を生かし、「食料自給率向上、農林漁業の再生、農山漁村をよみがえらせる国民運動」を進めましょう。

【2】総自由化路線とたたかい、生産を守る運動

 「どんなに困難なときでも生産から撤退しない、ものを作ってこそ農民」「生産をあきらめたとき、農政への矛盾も怒りもわかない」と農民連結成宣言は強調しています。

 この立場を貫くことこそが、「安全な食料は日本の大地から」「日本には農業と農村は必要だ」の国民合意の基盤となります。

 総自由化の中で、安いもの、生産履歴を明らかにできないものが攻勢をかけてくるでしょう。誰がどのように作ったか、地産地消、地域循環型で持続可能な農業で対抗しましょう。

 (1)米を守る運動

 2018年産から、国による生産数量目標の配分が廃止されました。18年産は何とか価格は維持したようですが、19年産の価格の安定のためには更に9〜17万トンもの生産調整が必要と言われています。

 その一方で、TPP11ではオーストラリア産米のTPP特別枠が19年3月までの初年度分2000トン、4月から6000トン輸入されます。さらに、「日米FTA」交渉では、アメリカのTPP国別特別枠7万トンを上回る要求が出されることは必至です。

 加えて大手量販店などの品ぞろえの見直しや仕入れ・販売方針の変更によって、価格が左右されます。先行き不透明なときだからこそ、長年の信頼にもとづく産地と米卸・米屋さんとの結びつきを強めて、準産直米を増やしましょう。

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会員と仲間づくりの決意を込めて「ビバ!農民連」

 (2)産直運動の更なる発展めざして

 新日本婦人の会会員との産直運動は、1988年の牛肉・オレンジの自由化、アメリカントレインを迎え撃つとりくみの中で、千葉から生まれ、90年に新婦人・農民連の双方が全国によびかけて始まりました。そして、93年の大凶作、米パニックの中で「米を守る5か条」を掲げ、全国的に広がり、現在に至っています。その当時「やってもやらなくてもいい課題ではない」といって全国で始まりました。

 全国的な農民連と新婦人の産直運動は29年目に入りました。そして、いま2014年に確認した「産直運動の新たな共同目標」の原点に立ってとりくんでいます。

 この間、新婦人中央本部と農民連・ふるさとネットとの定期協議や懇談では、産直運動の現状や改善への率直な議論を交わしてきました。また、都道府県段階でも、産直組織と連携し、新婦人と現状と要求を共有し、産直運動へ参加することで、生産者を支え、日本の農業を守り、さらには社会を変え、政治を変える運動へと高めることをめざしてきました。

 総自由化路線を前に「生産者は大変ね、がんばって」ではなく「自らの問題として、生産者を支え、日本の農業を守り、さらに社会を変え、政治を変える運動」として進める、そのために協議を続けてきた団体は他にはありません。

 そのためにも、新婦人が強めている「産直運動カフェ」や学習会に生産者が参加し、田植え・稲刈り交流以外にも工夫をこらした多様な企画にとりくんでいる都道府県連、産直組織の実践に学び、運動を強化しましょう。

 「選挙で政治を変え、買い物で経済の仕組みを変える」と産直運動の政治的意味を問いかける千葉・多古町旬の味産直センターの学習会は教訓的です。(4面参照)

 (3)機能強化された分析センターの活用と経営維持強化

(詳しくは後報)

【3】農業経営と地域守り、政治の転換を求める運動

 家族農業経営と日本の農業を脅かす重大な問題として、日米FTAと消費税増税・インボイス(適格請求書)導入の問題があり、2019年の農民連の最も重大な課題です。

 (1)日米FTA反対のたたかい

 安倍政権は、日米交渉をTAGと強弁していますが、明らかにFTAであり、その影響は食の安全、医療、公共事業などくらしのあり方全般に及びます。農協はじめTPP反対で一緒に取り組んできた団体・個人に呼びかけて、TPP反対闘争のときのような運動を再構築しましょう。

 JA福岡中央会が、「TPP反対ネット福岡」のメンバーに「食料の安全保障を求めるネットワーク」の結成を呼びかけています。全国農業協同組合中央会(JA全中)が「TAGに反対の立場をとらない」もとでの制約はありますが、新たな動きとして注目されます。

 農民連としては、たたかいの武器としてのチラシ・新聞「農民」号外や学習資材としてのブックレットの発行を検討しています。

 (2)消費税増税・インボイス制度導入ストップ

 安倍政権は、19年10月から、消費税増税・「軽減」税率・インボイス制度の導入を予定通り実施するとしています。

 23年10月1日以降のインボイス制度の導入で免税事業者は、取引から排除されかねません。また産直組織の構成員の多くは、免税事業者で、これら生産者からの仕入れが、仕入税額控除の対象にならなければ、産直組織は大きな負担になります。

 消費税増税・インボイスの導入は、異次元の営農破壊税です。家族農業とそれを支えてきた産直組織に大きな打撃を与えます。

 消費税増税ストップの運動に結集し、消費税増税をやめさせましょう。

 昨年12月に「10月消費税10%ストップ!ネットワーク」(10%ストップ!ネット)が発足し、賛同を広く呼びかけています。各都道府県でも県労連・保団連・新婦人・民医連、県商連などと協力し、「10%ストップ!ネット」を立ち上げ、賛同を広げましょう。

 農協・産直組織・直売所など様々な農業団体への申し入れを広げ、消費税増税反対署名、地方議会請願などの運動を広げましょう。統一地方選挙と参議院選挙で、自公政権を少数に追い込み、消費税増税を断念させましょう。

 (3)自然災害の救援・復興の運動(略)

 (4)原発ゼロ、憲法9条改憲阻止(略)

 (5)鳥獣害対策(略)

 (6)統一地方選挙、参議院選挙

 日本農業新聞の組合長アンケートでは、安倍官邸農政を評価しないと答えた組合長が96%にも達し、参議院選挙では与野党きっ抗が75%に達しています。

 参議院改選議席の1人区32議席のうち自民党が31議席です。野党間の「本気の共闘」が実現すれば、非改選議席を含めて参議院で、自公とその補完勢力を少数に追い込み、衆参でねじれを作り出すことは可能です。

 統一地方選挙、参議院選挙で、安倍暴走政治をストップさせ、農民、国民の要求を根本から解決する展望を切り開きましょう。

【4】農村での多数をめざす組織づくり

 「大会に向けた仲間づくり月間」の到達は、昨夜ある県連会長から連絡が入り47都道府県連全てで成果を生み、6カ月連続増勢という貴重な成果を達成しました。

 千葉県連が全国大会までの拡大目標読者70名を達成、長野県連が生産点での取り組みで会員10名拡大など様々なドラマがありました。春の大運動を前にして、これだけの実践と教訓を全国大会で共有できることはすばらしいことです。結成30周年の春の大運動を必ず成功させ、前進に転じるきっかけとしましょう。

 (1)前進を続ける農民連をいかにつくるか

   (1)会員拡大は急務
 この30年間で販売農家戸数が331万戸から137万戸と6割減少し、安倍官邸農政の家族農業つぶしのなかで、急速に離農が進んでいます。

 農民連組織においても、2年間で1割以上会員を減らしている組織が8県にも及んでいます。高齢化による離農・死亡・世代交代による会員減少は、どの県連にも起こりうることであり、この傾向はますます激しくなるでしょう。後退を上回る会員拡大の目標と計画が明確になっているか、中心的な要求を明確にし、要求で幅広く働きかける実践がどれだけできているか、各組織で自己検証が必要です。

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大会初日には顧問らが30年の歩みを振り返りました

   (2)前進を続ける農民連をつくるカギは
 前進を続ける農民連をいかにつくるかは急務の課題です。(1)全農民の利益と権利を守るためにたたかう農民連の姿を広範な農民に示し、たたかいを呼びかけること。大阪・阪南支部協議会の台風被害での活動は教訓的です。(2)農民の多様な要求を実現すると同時に、仲間に迎え入れること。一部の地域で正会員に迎え入れることを躊躇(ちゅうちょ)する傾向がみられますが、山形・庄内農民連の「お試し会員」(1年間は低額の会費で参加して、納得したら正会員に)などに学びましょう。(3)広範な農民に働きかけるための体制―地域に事務所と専従、役員体制を持った単組を確立することです。奈良・福島の広域単組の教訓です。

 (2)要求にもとづく仲間づくりを進めるために(略)

 (3)要求運動・仲間づくりを支える組織づくり(略)

 (4)「春の大運動」(1〜3月)で会員拡大の飛躍を

 とりわけ今年の春の大運動は、結成30周年の年であり、国連「家族農業の10年」のスタートの年です。2倍3倍の奮闘で必ず前進させましょう。

   (1)多様な担い手への働きかけを強めよう
 経営の大小や専業・兼業にかかわりなく、定年帰農者も含めて全ての農家が担い手であり、働きかける対象です。

 青年就農給付金の受給者をリスト化して、総当たりしましょう。新規就農者は、農地や農機具のあっせんや栽培技術、販路、税金の問題など農民連のとりくみに合致する切実な要求を持っています。

 集落営農や大規模農家など地域を支えている担い手層は、米価への不安、有利な販路の確保、税金などに対する要求を募らせています。この方たちとの協力なしに地域農業は守れません。懇談して要求に耳を傾け、一緒に要求を実現しましょう。

   (2)確定申告での仲間づくりに全力を
 今年は、統一地方選挙の年ですので、例年以上に早くとりくみましょう。大会後ただちに、税金対策部を開催し、『農家のための「税金対策の手引き」』を使って、今年の税金対策の注意点や行動日程などの意思統一をしましょう。

 1月16日から還付申告の受け付けが始まるなど、1月中旬から役場や税務署での所得税申告の説明会が始まります。そして2月16日から確定申告の受け付けが始まります。3月に入ってから呼びかけても「もう申告を済ませた」と断られるケースも多々あります。会員外の「税金なんでも勉強会」は、2月上旬までに集中しましょう。

 (5)女性部運動を強化しよう(略)

 (6)「農民連の未来は青年部にあり」(略)

(新聞「農民」2019.2.4付)
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