新聞「農民」
「農民」記事データベース20190325-1353-01

自給率0.2%のナタネ
政府が突然“青刈りせよ”

青森 横浜町
現地リポート


ナタネの灯を消すな!

画像  2月7日に成立した2018年度第2次補正予算に、農水省が「畑作構造転換事業」を盛り込み、ナタネを収穫せずに緑肥としてすき込んだ農家に10アール当たり3万円を助成する方針を打ち出しています。生産者にも自治体にも“寝耳に水”の乱暴な方針に、産地は混乱しています。

 事業目的について農水省は、「ナタネの生産量が増えて在庫がだぶつき、価格が下落しているから」としています。ナタネは実需者との播種(はしゅ)前契約を前提にした「経営所得安定対策」の対象作物。契約を交わしておきながら年度途中に突然、「収穫せずすき込め」という方針はあまりにも乱暴です。

 農水省は、「すき込むか、収穫するかは生産者の自主的判断」とし、「収穫した場合でも経営所得安定対策の交付金は支払われる」といいますが、来年以降の対応は未定だとしています。

 自由化で真っ先に自給率ゼロにされたナタネ

 カロリー換算で38%、穀物28%と異常な低水準の日本の食料自給率のなかでもナタネの国内生産量は3130トン(18年)で、自給率は0・2%(農水省の自給表ではゼロ%)。

 かつて1956年の作付面積は約32万ヘクタールで、生産量も30数万トンありました。童謡「おぼろ月夜」で「♪菜の花畑に〜」と歌われ、日本列島を黄色に染めた菜の花は春の訪れの代名詞でしたが、今や一部の産地で栽培されているにすぎません。

 日本のナタネ生産を崩壊させたのは1961年の大豆の輸入自由化でした。輸入大豆油に凌駕(りょうが)されて減少し、73年に大豆・ナタネの関税が撤廃されてからは、たった数年で自給率はゼロ%に。

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野坂町長(中央)に要請する笹渡会長(左から2人目)と、沖津副組合長(左端)ら

 たった3000トンでギブアップ、問われる本気度!

 2013年に民主党政権が発足して食料自給率50%目標が打ち出され、水田の転作作物としてナタネが戸別所得補償に位置付けられました。第2次安倍政権の「基本計画」でも、「経営所得安定対策」の対象品目に位置付けられ、1000トン(08年産)の生産量を20年までに1万トンにする目標を設定し、助成を維持してきました。この結果、生産者の努力もあって、17年度は約3670トン、18年度は主産地の北海道の不作のなかでも3130トンと、着実に増産してきました。

 その背景には、輸入の主力であるカナダ産ナタネのほとんどが遺伝子組み換えであり、化学薬品を混ぜて油脂を分離・製造した抽出油だということがあります。搾油される国内産ナタネ油は、安全で風味がよく、食の安全や健康を志向する消費者に受け入れられてきました。

 生産目標1万トンをめざしながら、3000トンでギブアップしたのでは、自給率を引き上げる政府の「本気度」が問われます。全国各地で菜の花イベントが盛況で、観光資源としても定着。ナタネ油は貴重な地域特産品になっています。輪作作物としても大きな役割を果たしており、過疎化著しい農村が黄色に咲き乱れた菜の花に染まる光景は、国民・住民を癒しています。

政府は自給率向上に背を向けるな

 揺らぐ本州最大の菜の花の町・青森県横浜町

 全国のナタネ生産の7割を占める北海道に次ぐ産地の青森県。140ヘクタールを作付けている横浜町は本州最大の産地です。

 下北半島首位部に位置する横浜町は、陸奥湾の絶景が広がる素晴らしいロケーション。JR陸奥横浜駅にある「日本一の菜の花の町 横浜町」の看板が目を引きます。偏東風「ヤマセ」の常襲地域で、古くからナタネが栽培されてきました。毎年5月に開催される「菜の花フェスティバルinよこはま」は、来年で30回目を数えます。

 栽培農家は全農(全国農業協同組合連合会)と播種前契約を結び、60キロ9940円の経営所得安定対策交付金を支えに生産を維持しています。そこに突然、降ってわいた「ナタネの青刈り」に、青森県南部農民組合の仲間たちからは、「ジャガイモとの輪作にナタネが欠かせない」、「どうすればいいもんだか」、「交付金をもらえば10アール5万2000円にはなる。3万円もらってすき込んでも大損だ」、「輸入して国内では作るなはヒドイ」など不安や政府への怒りが噴出しています。

 菜の花商品やホタテなどを扱うショップ「サンシャイン」を経営する杉山徹さんは町の観光協会会長。農民組合の搾油にも協力しています。杉山さんは、「生産者がナタネを作れなくなったら地域も商売も大変なことになる」と心配します。

 ナタネを70アール作付けている中野正一さん(75)は、「すき込むしかないかなぁ」と迷っています。「今年は播種前契約しているのだから、全農の在庫は心配せず、収穫して交付金をもらった方がいい。その先はみんなで相談しましょう」の議論も。

 生産者と町役場が連携しナタネを守ろう

 突然の懇談のお願いにもかかわらず、野坂充町長と高橋敏広産業振興課長が対応して下さいました。町議会で沖津正博町議(南部農民組合副組合長)の質問に対し、「今後も100ヘクタール以上の作付けを維持したい」と答弁した野坂町長は、次年度以降も直接支払い交付金と、すき込み助成の継続を国にお願いしたいといいます。また、すき込み作業は簡単ではないため、町として機械(チョッパー)を用意し、10アール3500円の補助を行う考えも表明されました。

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対策を協議する南部農民組合の皆さんと笹渡会長

 生産・観光資源として地域の経済に寄与し、食文化を作り出しているナタネが、来年も作り続けられるかどうかの一大事を迎えているなか、“ナタネの灯を消さない”ために力を合わせることを誓い、固く握手しました。

 横浜町から笹渡義夫(農民連会長)がリポートしました。


農水省
国産は油かすを飼料にできず…

 生産者とナタネの播種前契約の大宗を担っている全農が青森県横浜町で行った説明資料によれば、全農は年間需要量の数年分の需要を賄う在庫を抱えているとしています。

 国産ナタネを搾油するメーカーが少ないことや、品質が輸入品より劣ることなども指摘されています。

 農水省は、搾油後の油かすに残存して家畜に甲状腺障害をもたらす「グルコシノレート」といわれる成分を含む品種があるため、飼料に使えないこともミスマッチの原因としています。

(新聞「農民」2019.3.25付)