新聞「農民」
「農民」記事データベース20190513-1359-01

トランプ大統領
異常な圧力

日米FTA緊迫

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トランプ大統領
農産物関税撤廃・下げ、5月末までに決着を
安倍首相
選挙終われば何でもやるから待ってほしい

 4月26日に開かれた日米首脳会談で、トランプ政権が対日圧力を強め、日米貿易交渉が緊迫した局面を迎えていることが浮き彫りになりました。

 トランプ大統領は安倍首相に対し、「農産物関税引き下げはかなり早く合意できるだろう。5月には署名できるかもしれない」と述べて、新天皇面会のために来日する5月までに合意にこぎつけ、署名したい考えを強調。さらに「農産物について強力に交渉していく。日本の農産物関税を1日も早く撤廃させたい」とたたみかけました。

 ディール(取引)と脅迫が“トランプ外交”ですが、同氏の「最後のディール」というべき2020年大統領選挙が秋から本格化するのを前に、なりふり構わず「アメリカ第一」「トランプ第一」の立場から異常な圧力を突き付けたのです。

 トランプ言いなり 国民にはウソ  

 一方、“安倍外交”の特質はトランプ言いなりと国民だまし。安倍首相は記者会見で「5月決着」には触れず、「早期合意に向けて交渉を加速することで一致した」と述べるにとどめる一方、密室の首脳会談では「7月の参院選前の決着は無理だ。大統領選が本格化するまでにはきちんと形にするから安心してほしい」とホンネを口にしました(「朝日」「日経」4月28日)。

 これは、沖縄・大阪の衆議院補選2連敗に焦る安倍首相が、“参院選までは待ってほしい。その後は何でも言いなりになるから”と、選挙のために農産物と国益をトランプ大統領に差し出したものです。まるで、トランプ大統領の手のひらで踊る“安倍悟空”です。

 茂木経済再生担当大臣は、ライトハイザー通商代表から「4月の首脳会談で合意できないか」と打診されていたことを隠し通し、「首脳会談で具体的中身で突っ込んだ議論があったわけではない」ととぼけていました。また、麻生財務大臣は、表向きは「貿易と為替は切り離すべき」と言う一方、「為替条項を貿易協議の中で取り扱うかどうかについては、今後、日米財務大臣協議で議論していくという話をした」(同席した財務省幹部)といいます。

 安倍首相はトランプ大統領との蜜月ぶりを示すためにゴルフを行い、メラニア夫人の誕生パーティーにまで出席しました。トランプ氏はゴルフ外交で「貿易やその他多くの議題に関し話し合った」ことを明らかにしましたが、国民をだます密約が一体どれだけあるのか、安倍政権は全貌を明らかにすべきです。

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「5月までに決着を」と迫るトランプ大統領(右)と安倍首相=4月26日、ワシントン(首相官邸ホームページから)

 農産物関税全廃の要求まで

 「日本側の基本戦略は、農業で譲歩し、日本車への制裁関税や輸出制限の回避を勝ち取るというものだ」(「読売」)、「日本が一方的に米農産物への関税を『TPP(環太平洋連携協定)レベル』まで下げる内容となる可能性が高い」(「朝日」)――普段は安倍政権に対する忖度(そんたく)報道に終始している日本の新聞が、このように断言しています。ここに緊迫ぶりが反映しています。

 ある外務省幹部は「今回訪米して協議しなければならない懸案事項はない。逆に貿易などで米側から圧力をかけられ、やぶ蛇になるのでは」と懸念していました。

 TPP11と日欧EPA(経済連携協定)の発効によって牛肉・豚肉などのアメリカの輸出比率が落ち込み、トランプ政権は「1日も早く挽回しなければ」と焦りまくっています。そこに、のこのこ出かけて行った安倍首相は「飛んで灯に入る夏の虫」。トランプ大統領は「TPPレベル」にとどまらず、農産物関税全廃の要求まで突き付けました。

 「TPP11を発効させれば、アメリカが焦ってTPPに復帰する」という甘い見通しで「やぶ」を突つき、今度はのこのこ訪米し、再び「やぶ」を突ついて「アメリカ第一主義」という蛇を出してしまった――安倍首相の外交無能ぶりは明白です。

 しかもトランプ大統領は、「物品貿易協定」(TAG)と言い張る安倍政権につけ込んで、とりあえず「物品」、つまり農産物で一方的に譲歩させたうえで、自動車への制裁関税や輸出制限、為替問題を圧力材料にして「すばらしい長期的な貿易協定を結べる可能性がある」と、日米FTA(自由貿易協定)まで突き進むことを豪語しています。

 日米貿易交渉は直ちに中止を

 日米首脳会談は5月、6月と続き、6月にはライトハイザー通商代表が来日、9月には今年4回目の首脳会談が開かれる見込み。日米交渉は緊迫した局面に入っています。

 TPP11・日欧EPA発効に加えて、日米交渉をこのまま続けることは、日本の農業や国内産業にとって文字通り亡国の道であり、交渉は直ちに打ち切るべきです。

 TPP妥結翌年の前回参院選では、東北5県など全国の農政連が自民党不支持を決め、1人区での野党勝利に結びつきました。「選挙が終わったらトランプ大統領言いなりに何でもやる」という安倍自公政権に対し、参院選で市民と野党の共同の力で審判を下し、日米FTA交渉をストップさせましょう。


今年の稲作開始!

山形・庄内産直センター

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仲間たちで共同して種まき作業中(鶴岡市)

(新聞「農民」2019.5.13付)
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