新聞「農民」
「農民」記事データベース20190520-1360-07

人にも、動物にも、環境にも、
負担の少ない農業知りたい


福島県農民連 青年部
小井田寛周(ひろのり)さん(岩手県農民連青年部部員)の農場
「小井田立体農業研究所」を訪問

 5月5、6の両日、福島県農民連青年部メンバーで、岩手県九戸村にある小井田立体農業研究所を訪ねました。きっかけは、農民連青年部の全国総会でパネリストを務めた小井田寛周さんの話をもっと聞きたい、小井田さん一家の営む、化学肥料や農薬を使わず、人にも動物にも負担の少ない循環型・環境保全型の農業の現場を見てみたいという声があったからです。また、青年部の研修先としても考えており、視察を兼ねておじゃましました。

 九戸インターチェンジを降りて車で走ること3分。小井田さんの農場、「小井田立体農業研究所」が見えてきました。3ヘクタールの農場は山間の傾斜地。そこにクルミの木が植えられ、ちょうど花が咲き始めていました。

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クルミ割り作業に夢中になる一行

 牛たちは朝と夜の搾乳以外は放牧され、それぞれゆったりとした時間を過ごしています。牧場にはいくつか小屋のようなものが。そこには鶏が飼われ、鶏たちもまた広々とした農場に放されます。牛舎には猫が数匹。人も牛もお構いなく自由に走り回っていました。

 現在、父の重雄さんと息子の寛周さんが農場を切り盛りしています。立体農業(※注)のカタチはさまざま。ここでは重雄さんの父で創業者の與八郎さんが地元で昔から育ててきた「手打ちくるみ」に着目し、さらに乳牛の放牧を始めました。

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おっかなびっくり、牛乳の手搾りも体験させてもらいました

 ここで暮らすものにはそれぞれ役割があります。牛が草を食べ、草刈りをします。フンは肥料になり、土を肥やす。鶏は土の中にいるクルミの害虫を食べ、フンは肥料になる。卵も産む。クルミは動物たちの力を借りおいしく育つ。猫はネズミを退治し、鶏を狙うキツネや、クルミを狙うリスを寄せ付けない。人間は餌をやり、乳を搾り、卵を取り、クルミを拾う。肥料をやる作業や除草作業がないので動物にも人間にも負担のない農業のカタチです。

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クルミの木が植えられた放牧場。夏はその木陰が涼しい休み場所に

 クルミ割りも体験させていただきました。金づちを使ってトントンとクルミを回しながらたたくといい感じに殻が割れます。コツをつかめば、早くキレイにむけて楽しい。まるでカニの身を取るときのように夢中になりました。

 殻むきは、親戚のじいちゃん、ばあちゃんに頼み、冬仕事にちょうどいいのだとか。また近くの福祉施設にも頼み、農福連携にも取り組んでいました。

 地元の伝統文化保存にも力を入れている重雄さん。地域に伝わる江刺家神楽を小学生から高校生に指導し、村の行事や伝統文化の大会で披露しています。

(福島県農民連青年部 岩渕望)

※注 立体農業とは?

 立体農業とは、昭和初期、社会運動家の賀川豊彦の主唱した、中山間地の限られた土地を立体的に利用し、果樹、家畜を有機的に取り入れた山村農業。(小井田立体農業研究所パンフレットから)

(新聞「農民」2019.5.20付)
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