新聞「農民」
「農民」記事データベース20190527-1361-10

「ゲノム編集」食品が
今夏にも食卓に!?
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大企業の利益優先
拙速な流通を許すな

農民連常任委員 齋藤敏之

 自然界と同等の突然変異なのか

 厚労省が、「特定のゲノムを切り取った食品の、安全審査は必要ない」とした理由は、この技術が「自然界で起こる突然変異と変わらない」とし、すでに「放射線照射などで人為的な突然変異による作物が出回っている」から「それと同等だ」といいます。

 しかし、放射線照射による突然変異は、どの遺伝子にどんな影響があったかがわからないため、何世代も栽培を繰り返し同じ性質のものが固定されたのを確認して「種子」として販売しています。

 「ゲノム編集」は、肉付きの良いマダイを作るために筋肉の発達を制御するゲノムを切り取ります。また、ジャガイモの芽の毒を少なくするために、毒を作るゲノムを切り取ります。これを「放射線照射による突然変異と同等」とは考えにくいと思います。

 放射線照射による突然変異にせよ、自然界で起こる突然変異にせよ、数世代にわたって栽培を繰り返し、新しい品種として固定されます。

 種取りできても自家増殖は禁止

 この固定した品種は、翌年のために種取りができます。しかし、「ゲノム編集」でできた種が固定種と同じように種が取れるかはわかりません。

 仮に、固定種と同じように種子がとれ、翌年、発芽し同じものが収穫できたとしても、種苗法の育成者権で自家増殖は禁止され、毎年種子を買わざるをえなくなります。そうでなければ、開発企業の利益は出ません。

 遺伝子組み換え大豆の種子は、この20年間で種子代は4倍になり、除草剤に耐性をもつスーパー雑草が出現し、より多くの除草剤の散布が必要になり、種子代や農薬代の上昇で農民の手取りは減っています。

 表示ない産物を販売されるか

 表示されないゲノム編集の種子が販売された場合、農水省が推進する認証制度にも問題が起こるでしょう。グローバルGAP(工程管理認証)や有機認証は、生産の基礎である種苗の公開が大前提です。

 例えば、来年開かれる東京オリンピックの選手村で使われる食材の採用条件は、GAP認証や有機認証の取得が条件です。その条件には、当然種子の由来も含まれるでしょう。

 ゲノム編集で作られた種子や、表示なく販売される日本の農産物が、どうして選考されるのでしょうか?

 この問題は、アベノミクス農政の目玉「農産物輸出」戦略にも影響するでしょう。特に「予防原則」を採用するヨーロッパへの輸出は不可能になると思われます。

 企業のもうけのための思いつきの急な提案は、矛盾だらけです。「毒の少ないジャガイモ」など、ゲノム編集による食品を食べた後の、人体への影響も全くわかっていません。

 ゲノム編集による育種を拙速に許可せず、せめて、数世代の栽培を繰り返し、安全性や遺伝特性を確認すべきです。

(新聞「農民」2019.5.27付)