新聞「農民」
「農民」記事データベース20190909-1375-01

広がれ! 希望ある
農林漁業の実現に向けて

和歌山・紀ノ川農業協同組合
有吉裕梨(22)

 国連の「家族農業の10年」がいよいよスタートしました。家族農業こそ持続可能な社会をつくるとする世界的な流れに沿って、日本でも「家族農業の10年」を具体的に実践していくための運動主体としての「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン」が発足しています。これを受けて、私たちは、県単位の組織である「家族農林漁業プラットフォーム・和歌山」(仮称、以下プラットフォーム・和歌山)の発足に向け取り組んでいます。


「家族農林漁業プラットフォーム和歌山」(仮称)結成へ

 農林漁業はじめ多彩な人々集う

 「プラットフォーム・和歌山」の設立をめざし、8月22日に紀の川市の粉河ふるさとセンターで「持続可能なくらし〜農と食〜」というテーマで学習会を開催し、農業・林業・漁業に携わる人たち、消費者、研究者、大学生ら多様な立場の人たち146人が参加しました。

 学習会の開催にあたり、「和歌山の農林漁業を持続可能なものとしていくために動き出さねばならない」という考えを持った農業・林業・漁業に携わる人々と、それらを消費して支える消費者が集まりました。そしてこの思いを多くの人に伝え、ともに考えていくため、「プラットフォーム・和歌山」結成のためのキックオフと位置づけ、学習会を開催しました。

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満員の学習会

 学習会では、家族農業・地域農業について研究をされており、「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン」の呼びかけ人でもある愛知学院大学の関根佳恵准教授を迎え、「持続可能なくらし、農と食―国連『家族農林漁業の10年』に学ぶ」というテーマでご講演いただきました。

持続可能なくらしを
農と食から考える

 “当事者”として「10年」を生きる

 講演の中で関根先生は2017年に国連の「家族農業の10年」決議で定められた、すべての国に家族農業のための公共政策の改善・実践を推奨すること、そして国連貿易開発会議(UNCTAD)が大規模企業経営的農業から小規模農業や生態系の営みの助けを借りる農業に関する学問・実践・社会運動であるアグロエコロジーへの転換を求めていることを訴えました。

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講演する関根准教授

 つまり多様性を育むこと、エネルギー効率性の向上、循環経済・連帯経済の実践の考え方を持つアグロエコロジーを農業経営と集落コミュニティーの存続という役割を持つ家族農業が実践していくことで飢餓や環境問題の改善そして持続可能なくらしへとつながるということです。

 また、講演の中で19年3月にスペインで行われた第6回世界家族農業会議で農民の方が発言された「私には夢があります。その夢とは2028年の朝、目覚めた子どもが『私、農家になりたい』と願い、農家は『僕は農家であり続けたい』と心から思えるようになっていることです」という言葉が紹介されました。その瞬間、会場全体がその言葉に共感しているように感じられ、そして学習会に集まった方々が家族農林漁業の10年を他人事とせず当事者として生きるということを強く意識したように感じられました。

 生業の垣根越え他県の先陣切り

 講演後には「プラットフォーム・和歌山」の結成に向け、呼びかけを行いました。今後の活動内容としては和歌山県内の家族農林漁業を持続可能なものとしていくための取り組みとして、農業・林業・漁業の実情の把握、情報発信・共有によりそれぞれの生業(なりわい)の垣根を越えて一丸となり政策提言をしていくことや私たちのくらしを支える農業・林業・漁業に携わる者を守り支援していくことを提示しました。

 「プラットフォーム・和歌山」は10月18日に和歌山市内にあるJAビル和歌山で「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン」の村上真平代表を迎え、設立記念フォーラムを開催します。この日から和歌山の持続可能な未来に向けての取り組みが、他都道府県の先陣を切って始まります。

 農政の厳しい現実の中で「プラットフォーム・和歌山」の熱い思いが全国、世界へと広がり、子どもからお年寄りまですべての人が生きていくことに希望を持てる未来の実現を願って。

(新聞「農民」2019.9.9付)
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