新聞「農民」
「農民」記事データベース20191007-1379-02

日米貿易協定の「合意」に抗議し、
国会承認阻止・日米FTA交渉中止の
新たなたたかいを呼びかける

2019年9月26日
農民運動全国連合会


1 首脳会談で合意された日米貿易協定は、トランプ大統領の圧力にぶざまに屈して、日本は牛肉、豚肉などの関税を大幅に引き下げるTPP完全実施の一方で、アメリカは自動車でTPP完全拒否という一方的譲歩になった。

 4月の交渉開始からわずか半年という異常な速度での決着は、「交渉」とは名ばかりの「大統領選向けセレモニー」であり、それはトランプ大統領が米国の農業団体代表を首脳会談に同席させ、「米国の農家にとって巨大な勝利」と勝ち誇ったことに象徴されている。

 主権国としての尊厳を投げ捨てた屈辱的・亡国的外交に、満身の怒りをこめて抗議する。

2 安倍首相はTPP11、日欧EPA発効に続き、今回の合意で、日本農業を未曽有の総自由化にさらす亡国の決断をした。首相が弁明する「TPPの範囲内」の水準自体が危険きわまるものであるのに加えて、牛肉などの低関税枠を別枠で設け、アメリカ産トウモロコシの大量輸入を約束するなど、「TPP超え」は明白である。トランプ政権は、現在の対米農産物輸入額の5割に当たる72億ドル(7700億円)の農産物市場開放を約束させたと勝ち誇っている。農業や地域・国内経済への打撃は、TPP11、日欧EPAをはるかに上回ることは必至である。

3 加えて重大なのは「日米FTA交渉には応じない」という公約を裏切って、日米共同声明で本格的な日米FTAに突き進むことを宣言したことである。トランプ大統領は「かなり近い将来、日本とのさらなる包括的な協定をまとめることになる」と強調し、ライトハイザー通商代表は、来年春以降に「第2ラウンド」に入ると述べている。

 「第2ラウンド」でアメリカが狙うのは、日本の医療保険・薬価制度の見直し、食の安全にかかわる規制の撤廃、金融・共済の規制緩和などであり、国民生活の根幹と日本の主権を守るのかどうかが問われる。TPP反対の運動の経験と蓄積をいかし、日米FTA反対の国民的運動を今こそ強化する時である。

4 2018年度のカロリー自給率は過去最低の37%になったが、今回の合意が自給率低下に拍車をかけることは必至である。TPP11、日欧EPAに加えて日米貿易協定が締結されれば、かつて経験のしたことのない異次元の農産物市場開放となり、日本の農業と食料にもたらす打撃は計り知れない。農水省は2010年に全世界を対象に関税ゼロにした場合、農業生産が半減し、食料自給率は14%に下落するという衝撃的な試算を発表したが、安倍政治は、この悪夢の試算を現実のものにしかねない。

5 安倍政権は、一方的譲歩の時期を参議院選挙後にするという密約をトランプ政権と結んで秘密交渉を行い、首脳が合意したにもかかわらず、詳細な協定内容は依然として明らかにしていない。ウソとゴマカシ、選挙第一で「国益」をもてあそび、国民の痛みと苦しみにさらに打撃を与える安倍政治は、一日も早く終わらせなければならない。

 たたかいは新たな段階に入った。農民連は、協定の国会承認を許さず、本格的な日米FTA交渉の中止を強く求める世論と運動を急速に広げるために全力を尽くす。同時に、次期総選挙で、市民と野党の共闘を発展させて安倍亡国政権を退陣に追い込むために力の限りたたかう決意である。

(新聞「農民」2019.10.7付)
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