新聞「農民」
「農民」記事データベース20191021-1381-05

ヤマ場迎える「なりわい訴訟」

国・東電は責任を果たせ


全国から「署名」に協力を!

 福島原発事故について国と東京電力の責任を明らかにし、原状回復とすべての被害者の救済を求めて、仙台高等裁判所で控訴審がたたかわれている「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(以下、なりわい訴訟)が、ヤマ場を迎えています。

 なりわい訴訟は第2陣訴訟とあわせて4200人を超えるかつてない大規模訴訟となっており、原告団には福島県農民連の会員も約400人が参加。原告団事務局などで大きな役割を担っています。

 福島地裁は2017年10月に、「津波被害を予見できたにも関わらず、対策を怠った」と国と東電の責任を認める勝訴判決を言い渡しました。しかし原状回復については、「心情的には理解できる」としながらも却下となり、原告と被告双方の控訴により、仙台高裁に舞台を移すことになりました。

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「なりわい訴訟」の原告団

 国の姿勢を強く批判

 今年9月27日には、高裁での3回目の原告本人尋問が行われ、福島県農民連会長の根本敬さんと、現在は福島県農民連事務局員で、事故当時は南相馬市小高区に住んでいた横山真由美さんら6人の原告が法廷に立ち、原発事故の被害を、自らの言葉で訴えました。

 根本さんは、自らの米作りやあんぽ柿作りの原発事故後の変遷と実態を証言。さらに福島県農民連による農地土壌の放射能汚染調査の結果や、避難指示区域内・外を問わず、いまも価格下落と顧客喪失に苦しむ福島県の農業の現状についても語り、何度要請しても土壌汚染の実測調査を行わない国の姿勢を厳しく批判しました。

 横山さんは、原発事故によって建てたばかりのマイホームから避難生活を強いられたことや、学校も仮設校舎を転々と移動するなかで、青春時代を過ごさなければならなかった当時中学生と高校生だった2人の息子さんの苦労などを証言し、「原発はこの世にあってはならないもの。なくしてほしい」と訴えました。

 被害者切り捨て推進

 なりわい訴訟は、来年2月に結審し、6月に判決が下る見通しです。

 事故はいまだに収束せず、被害も続いているにもかかわらず、国と電力会社は被害はもうないとして、帰還の強制、賠償や住宅支援の打ち切りなど「被害者切り捨て」を強引に推し進めています。そしていまなお原発再稼働を推進しています。

 再稼働を許さず、原発ゼロをめざす上で、このなりわい訴訟は福島県にとどまらない、全国の問題です。国民がこの裁判に大きく注目していることを裁判所に伝えるためにも、「公正な判決を求める署名」に、一人でも多くの人が協力することが求められています。

(新聞「農民」2019.10.21付)
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