新聞「農民」
「農民」記事データベース20191202-1387-01

いま見直される“家族農業”

NHK・Eテレで放映


家族農業は持続可能な生産方法

 11月16日午後2時〜3時にNHK・EテレでTVシンポジウム「いま見直される“家族農業”〜農村の未来を考える〜」が放映されました。これは、10月に都内で開かれた食料フォーラム2019「国連家族農業の10年に考える〜持続可能な社会を目指して〜」を公開録画したものです。日本では当たり前の農業形態=家族農業が今、世界で注目され、国連も今後10年を「家族農業の10年」と定めて推進しています。シンポジウムでは、海外の事例も紹介しながら討論しました。

 パネリストは、政治学者で熊本県立劇場理事長の姜尚中(かん・さんじゅん)さん、JA全中会長で果樹農家の中家徹さん、鹿児島大学名誉教授で小農学会代表の萬田正治さん、愛知学院大学准教授の関根佳恵さん、女優で中学1年・高校2年のお母さん、石田ひかりさんの5氏です。司会を元NHKアナウンサーの桜井洋子さんが務めました。

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討論する(右から)姜、関根、中家、石田、萬田の各氏。左は桜井氏

 家族農業とは

 番組冒頭、国連が2019年から28年までを「家族農業の10年」と定め、世界の食料生産の80%が小規模農家によって担われ、その大部分が家族農業であることが紹介されました。さらに「日本で、家族農業を支援するネットワークができた」として、6月に結成された家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン結成時の映像も映し出されました。

 はじめに家族農業についてどう考えるかを問われ、中家さんは「家族農業は農村社会を維持している。国連が10年を定めたのは意義深いこと」だと述べ、関根さんが「家族が経営する農業、林業、漁業・養殖、牧畜であり、男女の家族労働力を主として用いて実施されるもの」という国連による家族農業の定義を紹介しました。

 なぜいま家族農業か

 次に、家族農業に何が期待されているのかというテーマに移り、FAO(国連食糧農業機関)駐日連絡事務所のチャールズ・ボリコ所長がスクリーンに登場し、次のコメントを寄せました。

「私たちは、単作栽培や規模拡大、膨大な化学肥料を使う農業など、あらゆる手段でより多くの食料を手に入れる時代になった。しかし、集中的な食料生産、集約的な食料増産で環境が汚染され、温室効果ガスを排出するなど課題を生み出している。一方、家族農業は、環境にやさしい食料生産の方法だ」

 姜さんは、飢餓からの解放、貧困の撲滅、ジェンダー平等など持続可能な開発目標(SDGs)について説明し、「資本による野放図な市場経済の論理だけでは地球はもたない」と警鐘を鳴らしました。

 中家さんは、食料自給率37%は先進国中最低で、6割が外国産に頼っていること、農村では、高齢化、担い手不足が進行し、農業就業年齢の平均が67歳と、過去20年で7歳高齢化したことなど、日本の農業の現状を告発。「このままでは、ますます生産基盤が弱くなり、自給力もなくなる。一方で、貿易自由化が進み、海外のものが入りやすくなっている。こう考えると改めて家族農業を強くすることが必要」だと述べました。

生産者と消費者が手を携えて地域の発展を

 家族農業の実践

 持続可能な農業として、萬田さんの鹿児島県霧島市での実践が映し出され、農薬や化学肥料を使わないアイガモ農法、納屋を改装して採れた農産物を提供するカフェ、地元の住民らと立ち上げた直売所の取り組みが紹介されました。

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鹿児島県霧島市の農園で研修生を指導する萬田さん(左、NHK・Eテレから)

 萬田さんは「地域内で経済が回っていくことが大事。少量でも多品目の農産物を販売し、直売所は住民の生活に欠かせない存在になっている」と述べました。石田さんは「すてきなカフェですね。娘2人を連れていきたい」と応じました。

 番組では、日本の農業が抱える課題についても話題にのぼり、関根さんが、後継者ができない理由として、(1)低い所得、(2)低い社会的地位、(3)低い女性の地位――を指摘しました。

 日本で家族農業を維持するための制度として、家族内で経営方針や役割、休日などを文書化する「家族経営協定」の取り組みを紹介。さらに海外に目を向け、オランダでは、インターネットでの販売をはじめ、生産者と消費者が直接つながる実践や高齢者がリハビリを兼ねて農作業を行うケアファームに取り組んでいます。フランスでは、環境に配慮した農業(アグロエコロジー)を法律に明記し、生態系バランスを取り戻し、自然の力を最大限に活用した農業を実践しています。

 こうした実践を受け、関根さんは「生産者と消費者が手を結び、地域で支える農業は、日本で1960年代から70年代に始まった産消提携(産直)の運動が手本になっています」と述べ、萬田さんも「環境に配慮した農業は、日本でも50年前に始まった有機農業運動がさらに発展したものです」と紹介しました。

 家族農業に期待すること

 農業・農村の役割について、中家さんは、「これからも農業・農村を維持していくことが大事。伝統や文化の継承など家族農業が見直されています」と語り、萬田さんは「都市住民の農的くらしへのあこがれ、定年帰農、体験農園などの取り組みが広がっている」と述べました。石田さんは、自家菜園でプチトマト、キュウリ、ジャガイモ、サツマイモ、ゴーヤー、スイカ、メロンなどを栽培していることを披露し、「ものづくりは楽しい」と語りました。

 各パネリストがまとめの発言を行い、萬田さんは「何らかの形で1次産業に携わり、みんなで考えていくことが大事です」と述べ、石田さんは「次の世代が健康に暮らせるように生活していきたい」と語りました。中家さんは「農業は国民に安全・安心な食料を提供する使命があります。国産の農畜産物に目を向け、農業・農村を支えてほしい」と訴え、関根さんは「産業・行政・研究の分野で立場の違いを超えて連携することが必要」と強調。姜さんは「命の再生産ができるしくみをつくるためにも、生産者と消費者が協力できるのではないでしょうか」と投げかけました。

(新聞「農民」2019.12.2付)