新聞「農民」
「農民」記事データベース20191202-1387-06

農家が得する
税金コーナー
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消費税増税から1カ月
経営の維持も限界

 消費税増税から1カ月。加工品を販売する女性部会員に聞きました。

 増税がまとまりを切り崩す―

 千葉県の道の駅で加工品を販売しているKさん。道の駅の運営では各部会がおかれ、そのつど部会に相談してきました。個々で値段が付けづらい加工品は、加工部会で同一商品は、なるべく同一価格に設定し販売してきました。今回も増税前に部会を開いて、10%の対象になる資材分を上乗せして販売することを話し合いました。

 しかし、この間、一般業者も出店するようになり、この同一価格に異議がだされました。加工部会の部長をやっているKさんは、「私たちは、自分だけ勝つのではなく、皆でいいものを作って販売していくことを目指していたのに、地域でのまとまりが今回の増税をきっかけに切り崩されるかもしれない」と不安になっています。

 また、来年4月1日から食品表示が義務化されるため、新商品や日替わり弁当などの栄養成分表示等の実務も増え煩雑になるのも悩みです。輸入の安い商品より、本当に消費者が欲しがっている手作り加工品の売り上げは下がっていないけど、いつまで作り続けられるのかと話しています。

 これ以上値上げはできない

 兵庫県の生産法人で、直売所に併設した農家レストランを運営しているAさん。ランチは、固定客もついているため今回の軽減税率の導入で、持ち帰り弁当と店内飲食で消費税率が変わるため苦労しています。

 実は、増税前に100円の値上げを決断したところ、お客が激減しました。10月以降は、持ち帰りと店内飲食で2%も税率が変わります。本当は値上げをしたかったのですが、更にお客が離れてしまったらと値段を据え置きし、持ち帰りの方には容器代を別途上乗せし、店内飲食の方にはおみそ汁をつけるサービスで、同額にしました。

 一部「高い」というお客さんもいますが、概ね理解してくれているようで、客足は減っていません。「地域の女性達の働く場として生産法人を維持するためには運営費を考えると値上げもしたい。節約で経営を維持するのも本当に限界があります」とAさんは話します。

 食品が8%の税率で一見なんら変化がないような日常ですが、5%から8%に上がって本当に景気は悪くなる一方、10%の増税で財布のひもはしまりがちです。生産を続けるために、10%増税の即時中止と、できれば消費税はなくしてほしいです。

(農民連女性部 藤原麻子)

(新聞「農民」2019.12.2付)
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