新聞「農民」
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アグリテック&フードテック・サミット
日本経済新聞社主催シンポ
(2/2)

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ワークショップ
関根佳恵さん(愛知学院大学准教授)、ボスクさん講演

国連「家族農業の10年」の行動計画づくりが始まる

 11月20日にはワークショップ「国連『家族農業の10年』の世界行動計画とは? 各国の行動計画策定への示唆」が開かれ、家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン常務理事で愛知学院大学准教授の関根佳恵さん、FAOのピエールマリ・ボスクさんらが講演しました。

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講演する関根さん

 関根さんは、「家族農業の10年」を実施するにあたり、今後10年間の行動計画を策定することが求められていると指摘。多様な利害関係者を巻き込んで進めていくべきだとして、日本でも国際的な組織と各国の関連団体とが協力しながら策定する動きがでてきていることを報告しました。

 国際NGOと日本での関連団体として、世界農村フォーラムと全国愛農会、ビア・カンペシーナと農民連、世界農業者機構とJA全中・全国農業会議所があり、3者が一緒に行動すれば初めてのこととなると紹介しました。

 さらに行動計画の柱になるものとして、(1)各国の政策、(2)青年農家への支援、(3)女性のリーダーシップの促進、(4)組織の強化、(5)レジリエンス(災害からの回復力など)を高める、(6)気候変動への対応、(7)生物多様性など多面的機能――をあげました。

 関根さんは「今後、目標達成に向けた具体的な行動が求められます。世界は、家族農業重視の方向に進んでいることを周りの人たちに広げ、運動への参加を呼びかけてほしい」と結びました。

 ボスクさんは、貿易の自由化が進むなかで、市民がそれに対抗して参加するようになった経緯を語り、より幅広い参加を呼びかけました。


子どもたちに家族農業を手渡したい

50年後の農村コミュニティ考えるシンポで

 最終日の20日には、最後のセッションとなるシンポジウム「フューチャーデザイン 50年後の農村コミュニティはこうなる」が行われ、関根佳恵さん(愛知学院大学准教授)と、茨城県阿見町で農業を営む斉藤博嗣さん(一反百姓「じねん道」園主)の2人が参加しました。

 パネリストは他に、さんぶ野菜ネットワークの下山久信さん、鶴頸(かくけい)種苗流通プロモーション代表の小林宙(そら)さん、株式会社シェアアグリ代表取締役の井出飛悠人さん。

 コーディネーターを務めた日本経済新聞編集局の山田貴昭さんは、「半世紀後のような長期的な視点が重要ではないか」と提起。食料自給率の低下や耕作放棄地の増加などの現状を紹介しつつ、50年後、衣・食・住がどうなっていてほしいかをパネリストに問いかけました。

 最後に、50年後に残したいもの、なくしたいもの、あってほしいものを出し合い、斉藤さんは「未来に伝えたいのは、モノではなく哲学。子どもたちがのびのびと生きられる社会と家族農業を手渡したい」と発言。関根さんは、「人間と自然が共生する知恵を持ち続けているのが家族農業で、50年後にも残ってほしい。なくなってほしいものは、戦争や武器。武器生産のエネルギーを食糧生産に振り向け、争う必要のない、誰もが満たされた世界にしていきたい」と述べました。

(新聞「農民」2019.12.9付)
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