新聞「農民」
「農民」記事データベース20200203-1394-08

国連「家族農業の10年」で食料自給率向上、
農林漁業の再生、
農山漁村をよみがえらせよう
(3/8)

2020年1月17日
農民連全国委員会決議

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 (1)プラットフォーム(「家族農業の10年」の運動の拠点組織)を全国に

 国連「家族農業の10年」キャンペーンに呼応し、持続可能な家族農業を求める広範な人々を結集する新たな組織として、国連が設立を求めるプラットフォームを全国に網の目にように張り巡らせ、農政を転換する拠点とすることを呼びかけます。

 すでに、「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン」(全国プラットフォーム)が誕生しました。家族農林漁業の団体、消費者団体、スローフード団体、個人で構成され、国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会(全国食健連)も加盟し、農民連が事務局を務めています。これまで、フォーラムやウェブサイトを通じて、「家族農業の10年」の運動について発信するとともに、FAO駐日連絡事務所、日本政府、JA全中、全漁連、全森連など主な農林漁業団体などを訪問し、対話、意見交換を行ってきました。

 全国プラットフォームに続いて、都道府県や市町村でプラットフォーム(地域プラットフォーム)を立ち上げる動きが進んでいます。その第一号として「家族農林漁業プラットフォーム和歌山」が誕生しました。

 (2)一人一人が主役となる新たな運動を

 「家族農業の10年」は、国際政治を転換する民衆の草の根の運動の成果でした。プラットフォーム運動に求められているのは、全国一律ではなく、生産者や住民の草の根の声をくみ上げ、自主的な運動を作っていくことです。

 全国プラットフォームでは、日本の農政を転換するための国内行動計画を作成する努力を進めていますが、これは、会員団体や個人の声を広く集める形で行われています。「家族農業の10年」の運動は、参加する一人一人が主役になることを重視しています。

 和歌山県では、プラットフォームの結成に先立って10年後の地域農業の予想図をみんなで描くためのシンポジウムを開催しました。参加者が事前に10年後の未来図を考えて集まり、発表する形にしたことで、全員が主体的に関わる新しい形の運動を生み出し、プラットフォームの結成につなげました。

 農民や漁民、林業者をはじめ、地域の未来を憂える住民などとともに国連「家族農業の10年」を学び、家族農業や地域の未来を考える集いやフォーラムを開催しましょう。農協や漁協、森林組合、商工会など広範な地域の団体にも働きかけましょう。この努力が地方や地域のプラットフォームの結成と運動の発展につながります。

 農民連結成以来の運動の蓄積を生かした運動と、プラットフォームの新たな運動を相乗的に発展させることが未来を切り開く力となると確信します。

【3】私たちをとりまく情勢とたたかい

(1)日米FTA反対、農産物総自由化を許さないたたかいに全力を

 アメリカ言いなりに国益を投げ捨てる一方で、ウソとゴマカシで国民を欺まんするのが安倍政権の一大特質ですが、これが最悪の形で貫かれたのが日米貿易交渉でした。日本は牛肉、豚肉などの関税を大幅に引き下げるTPPの完全実施の一方で、アメリカは自動車でTPP完全拒否という一方的譲歩になりました。さらに、日米FTA交渉に踏み込む「第2ラウンド」では、最悪の亡国的譲歩に乗り出そうとしている安倍政権を絶対に許すわけにはいきません。

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トラクターを先頭に「日米貿易協定は批准するな!」=2019年11月7日、都内

 (1)アメリカ言いなり、国民欺まんの日米貿易協定

 第一に、安倍政権は「自動車・同部品の関税撤廃を約束させた」「追加関税はやらないことを確認した」としていますが、アメリカは自動車関税を25〜30年かけて撤廃し、自動車部品関税の8割を即時撤廃するとしていたTPPの約束を完全に反故(ほご)にし、日本が得たのは「自動車・同部品の関税の撤廃については、今後のさらなる交渉次第である」という“空手形”にすぎません。

 追加関税についても、得たのはアテにならない“口約束”だけで、協定には「安全保障上の措置をとることを妨げない」と明記されています。トランプ政権は「安全保障」を口実にして、今後、自動車への追加関税・輸入数量制限という強力な武器を振りかざしながら、「第2ラウンド」で「アメリカ第一主義」むき出しの日米FTAをゴリ押しすることは必至です。

 第二に、安倍政権は「農産物はすべてTPPの範囲内」「米は守った」といっていますが、これもウソとゴマカシです。

 牛肉関税は現在の38・5%から9%に、豚肉も1キロ482円の関税が50円に引き下げられ、事実上、関税ゼロ状態になります。一方、輸入急増から国内生産を守るための牛肉セーフガード(緊急輸入制限)は、一度でも発動されれば「発動水準を一層高いものに調整する」ために10日後に協議を始め、90日以内に決着させることが合意されており、セーフガードは完全に骨抜きにされます。

 さらにアメリカは、協定付属書に「アメリカ合衆国は、将来の交渉において農産品に関する特恵的な待遇を追求する」と書き込み、「今後も農産物で譲歩を迫る」というアメリカの強い意志を示しました。国会では「米などが再協議の対象にならない保証が本協定案にあるか」という追及に対し、江藤農相は「ない」と認めざるをえませんでした。

 選挙モードのトランプ大統領に頼み込み、同氏の地盤が産地であるトウモロコシ275万トン“爆買い”の見返りに、地盤ではないカリフォルニア米を除外してもらって体裁をとりつくろったものの、今後は「自動車のために米も差し出す」という密約の存在さえ疑わせるものだといわざるをえません。「米も危ない!」のであり、「米は守られたから安心」どころではありません。

 (2)日米FTAは最悪の亡国的譲歩になることは必至

 さらに重大なのは、9月26日の日米共同声明で「日米貿易協定の発効後4カ月以内に協議を終え、関税や他の貿易上の制約、サービス貿易や投資に係る障壁、その他の交渉を開始する」とし、4月までに協議を終え、早ければ5月から日米FTAの交渉入りを宣言していることです。

 アメリカ通商代表部が18年12月に議会に提出した「日米FTA交渉方針」は、最初に「対日貿易赤字の削減」を大目標として掲げ、日本に対して米を含む農産物の関税削減・撤廃や、医薬品・医療保険制度、食の安全基準などの規制緩和を強い調子で要求する一方、アメリカ産業、特に自動車については「アメリカでの生産・雇用拡大」を日米FTAに盛り込むことを要求しています。つまり、日本には保護・規制の撤廃を求める一方で、アメリカ産業の保護の強化と日本からの支援を要求する「TPP+アメリカ第一主義」むき出しの方針です。

 とくに食の安全をめぐっては、発がん性やアレルギーなどの危険がある「成長促進ホルモン剤」をたっぷり使った牛肉・豚肉がますます大手をふって輸入される危険が強まります。すでに牛肉の自給率は36%、豚肉は48%であり、自給率がさらに下がってから「安全な肉を」といっても遅いという事態になりかねません。

 また、農民連食品分析センターは輸入小麦を使ったパン、とくに学校給食パンから発がん性の農薬・グリホサートを検出し、農水省の調査でも、アメリカ、カナダ産小麦の90%以上からグリホサートが検出されました。収穫目前に農薬(除草剤)を散布する省力化農法が常態化しているためですが、日米貿易協定では、小麦にも「アメリカ枠」が設けられ、トランプ大統領は「小麦の大量購入」を要求しています。小麦の自給率は12%です。“農薬汚染パン”の脅威は今後も続くのです。

 トランプ大統領は19年6月に「バイオ農産物規制の枠組みの現代化」という大統領令を公布し、遺伝子組み換え農産物と、それとセットで使用量が増えているグリホサートに対する「過剰な規制」を洗い出し、国内だけでなく海外でも規制を撤廃することを、政府機関に期限を区切って命令しています。

 遺伝子組み換え農産物、グリホサート、成長ホルモンを頑として「安全だ」と言い張り、「アメリカ第一主義」むき出し、食の安全などどうでもよいという圧力が強まることが必至の日米FTA交渉はやめさせなければなりません。

 安倍政権は、TPP11・日欧EPA・日米貿易協定を発効させ、中国や韓国を含む16カ国の「アジア地域包括的経済連携」(RCEP)の早期合意をめざし、さらにブラジルなど南米の農産物輸出大国とのFTAに乗り出して、世界中にTPPを拡散し、“世界総自由化”を狙っています。

 そうなれば、日本の食と農はどうなるか、政府自身の試算が雄弁に物語っています。2010年11月、農水省は、農産物輸入が世界レベルで自由化された場合、食料自給率が39%から14%に落ち込み、米生産は90%減、豚肉・牛肉生産は70%減、小麦・砂糖生産は壊滅し、農業生産額は半分になるという悪夢の試算を公表しました。

 いま安倍政権がのめりこんでいる“世界総自由化”が進めば、悪夢は現実のものになりかねません。「無農・亡食の国になるのを許さない」大運動が今こそ求められています。

 さらに、公的医療保険制度を「社会主義だ」と忌み嫌うトランプ政権のもとで、日本の医療保険・薬価制度に対する攻撃はますます激しくなる恐れがあります。

(新聞「農民」2020.2.3付)