新聞「農民」
「農民」記事データベース20200203-1394-10

国連「家族農業の10年」で食料自給率向上、
農林漁業の再生、
農山漁村をよみがえらせよう
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2020年1月17日
農民連全国委員会決議

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(3)地域の担い手づくりめざし、新規就農支援の充実を

 基幹的農業従事者は2015年に175万人まで減少しましたが、ここ10年での新規就農者は毎年5〜6万人あり、うち49歳以下は約2万人となっています。農民連の会員や生産法人組織も制度を活用し、地域の担い手づくりを進めてきました。運動で実現した青年就農給付金制度など新規就農を支援する助成制度が一定の効果を発揮した結果です。

 しかし、2018年末に農水省は、農業次世代人材投資事業(旧青年就農給付金事業)のうち、先進農家や先進生産法人などにおいて給付金を受けながら研修する「準備型」を原則廃止し、研修生を受け入れ先が正社員として雇用する「農の雇用事業」への一本化を決定し、研修生を受け入れる準備を進めてきた農家・生産法人、自治体などで困惑と混乱が広がりました。

 農民連は、各地の実態把握や農水省への緊急要請を行い、市町村・公社などが事務局となって研修プログラムを作成し、研修機関として認定を受けることで「準備型」の支援対象となることなどを確認してきました。しかし、新規就農対策に消極的な自治体では、認定に至らず、2019年度の研修生受け入れを断念せざるをえなかった農家・法人もありました。

 また、予算削減の影響も大きく、申請希望者全員が対象とならなかったり、認定時期が半年以上遅れたり、就農を希望する研修生たちに多大な不安を与えました。

 こういう縮小・後退の動きに反対し、地域の担い手をめざす新規就農者を支える制度として、予算・制度ともに拡充をめざして取り組んでいきましょう。

(4)CSF(豚コレラ)から日本の養豚を守る運動

 2018年9月に26年ぶりに再発生したCSF(豚コレラ)は、これまでに岐阜、愛知、長野をはじめ1府8県に感染が拡大し、1月8日には沖縄県でも発生が判明し、15万頭以上が殺処分される事態となっています。CSFウイルスの国内侵入を防げず、「清浄国」維持を口実に長期間にわたってワクチン接種を行わず、後手後手の対応で感染を拡大させた国の責任はきわめて重いものがあります。

 農民連は、まん延が深刻化し始めた2月以降、4回にわたって農水省に要請を行い、農水省の言う「養豚場での飼養衛生管理の徹底」だけでは感染拡大は防げないことを指摘し、殺処分を前提としない予防的ワクチン接種や、被災養豚農家への支援強化などを繰り返し要求してきました。また岐阜、長野、群馬、埼玉などの各県の農民連や北陸、関東などのブロック協議会でも要請行動に取り組んだほか、日本養豚協会や日本養豚開業獣医師協会など養豚業界にも予防的ワクチン接種を求める声が広がりました。

 国は10月になって予防的ワクチン接種の実施に踏み切りましたが、これは農民連をはじめこうした「養豚農家を守れ」という声が安倍政権を突き動かしたもので、大きな成果でした。

 しかし、予防的ワクチン接種が地域限定であること、野生イノシシよけの防護柵設置が義務化されたものの、国はその半分の費用負担しかしないなど、課題はまだ数多く残されています。

 沖縄県でのCSFの発生は、日本中、どこでもCSFが発生する可能性があることを示しています。TPP11、日欧EPA、日米貿易協定など度重なる自由貿易協定の影響で日本の畜産業をめぐる条件がますます厳しさを増すなか、CSFやASF(アフリカ豚コレラ)をはじめとした家畜伝染病が畜産農家の離農原因とならないよう、国の家畜伝染病対策を抜本的に見直し、強化することが求められています。よりいっそう畜産農家に寄り添い、現場の声を集めた運動を強めていきましょう。

(5)中山間地を守る運動、鳥獣被害対策を求める運動

 中山間地では、高齢化と担い手不足、鳥獣被害などの困難を抱えるなかで地域を守るために多くの住民が奮闘しています。「農的生活」を求めて都市から移住して農山村の担い手となって頑張る人たちが増えていることは希望です。

 こうした中で、政府が「予算不足」を口実に環境支払いを減額していることは許されません。中山間地の直接支払制度を含めて制度の拡充、山村に人びとが住み続けられための支援を要求します。

 鳥獣による農作物被害が深刻化し、熊による人身被害も頻発しています。里山の荒廃、高温障害によるドングリなどの不作など、温暖化による影響も指摘されています。

 政府に鳥獣被害をなくすための根本的対策と、当面の対策の確立を要求します。地方自治体や地域での取り組みを支援する予算の増額を要求して運動を強めます。鳥獣被害対策交流会も開催しましょう。

(6)都市農業を守る運動

 (1)「特定生産緑地」の申請と都市農業振興計画づくりの運動を進めよう

 生産緑地は、指定から30年経過すると指定が解除されることから、農地保全を目的に「特定生産緑地法」が制定されました。この制度により、指定の期限を10年間に短縮し、買い取り申請の条件などは生産緑地制度を引き継ぎ、さらに10年ごとに再延長が可能になりました。同時に、特定農地に相続税納税猶予が適用され、さらに、新設した「都市農地貸借円滑化法」によって、企業を含めて市民農園の開設などが可能になり、農地として緑地保全する条件が広まりました。

 「特定生産緑地」の申請は生産緑地指定解除前を条件としていることから、解除前申請の運動が不可欠です。あわせて、市民農園の要求や新鮮な農産物の供給を願う都市住民と共同して「農あるまちづくり」をめざす「都市農業振興計画」をつくる運動を進めましょう。

 (2)地方都市の生産緑地申請の運動を広げよう

 3大都市圏の特定市以外の市街化区域の固定資産税が上昇しています。2017年のJA全中の調査では、北関東の中核市の10アールあたりの固定資産税と都市計画税の合計が21万5千円になっています。この農地を生産緑地に指定すれば1800円に大幅減額できることが明らかになっています。

 いま政府は、「自治体戦略2040構想」で自治体の統廃合によるコンパクトシティーをめざして自治体再編を進めています。この動きを加速させるため、自治体主導の区画整理を施工しやすくする「構造改革特区」の改正も行いました。こうした状況から、県庁所在地を中心に地方都市の市街化区域の地価の上昇に伴う固定資産税等の増税が予想されます。固定資産税の評価替え時に縦覧の運動を強め、生産緑地申請の運動を広めましょう。

(7)種子を守る運動

 (1)種子法廃止に対抗した県(道)条例制定運動の広がり

 2018年3月末に廃止された主要農作物種子法(種子法)は、地域の共有財産である種子を、多国籍企業に売り渡すもので、アベノミクス農政を象徴する暴挙でした。

 種子法廃止は、多くの生産者、市民に衝撃を与え、農民連も加盟する「日本の種子(たね)を守る会」を中心に、廃止された種子法の原則を堅持した県条例を制定する動きが短期間に広がっています。

 これまで(2019年11月末)に、北海道、宮城、山形、栃木、埼玉、新潟、富山、福井、長野、岐阜、兵庫、鳥取、宮崎の13道府県で独自条例が制定され、年度内に20県を超える自治体にまで広がろうとしています。運動をベースにした多くの条例は、「種子法」が掲げた原則を堅持し、各県の条件に即して対象農産物の拡大などを盛り込み、党派を超えた共同で採択されています。

 注目すべきは、条例制定運動が、地域農業振興や食の安全の確保、学校給食への地場産供給などと結んで、「住民が主人公になった条例づくり」の側面を持って発展していることです。この動きは、廃止された種子法を復活(あるいは新法制定)させる流れを加速させています。

 一方、県条例制定の流れに便乗して種苗の生産計画、生産圃(ほ)場の審査、原原種の生産、発芽率等の品質管理を全て民間任せにする巻き返しの動き(栃木県条例)があり、注意が必要です。

 全ての都道府県で条例制定運動を広げましょう。

 (2)種苗法の改悪を許さない運動

 政府は種子法廃止と同時に、新品種の育成者権を定める種苗法を改定し、育成者権を強化する動きを加速させています。

 種子法廃止のねらいが浮上した2016年には、自家増殖禁止品目は登録品種のうち82種だったものを、17年に289種に拡大し、19年には387種まで増やしました。そして、2020年の通常国会で「自家増殖原則禁止」を内容とした「種苗法の改悪」を狙っています。これでは「種とりやトマトの脇芽の挿し木、さつま芋の苗とりなどをしたければ、育成者の許諾をとれ」という制度に変えられ、農家は、種や苗は全て購入することになります。

 これは、農民の権利宣言19条1のdが規定する「自家農場採取の種苗を保存、利用、交換、販売する権利」を踏みにじるもので許されません。自家増殖を禁止する種苗法改悪に反対して運動を強めます。

(新聞「農民」2020.2.3付)