国連「家族農業の10年」で食料自給率向上、
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報告に耳を傾ける参加者 |
【5】生産点での活動を強化し、多様な産直の発展をめざす取り組み
(1)環境にやさしく持続可能な農業(アグロエコロジー)の探求
農業が排出する温室効果ガスが地球温暖化の主要因の一つになっているとの指摘があるなかで、化石燃料や化学肥料、農薬の使用を控え、環境にやさしく持続可能な生産を目指すアグロエコロジーの探求が求められています。アグロエコロジーは自然生態系を模倣することで、効果的な栄養循環や生物種間の相乗効果を最大限生かすことをめざしています。例えば豆、トウモロコシ、かぼちゃを混作すれば、豆が窒素を固定し、トウモロコシの花が益虫をおびき寄せ、かぼちゃがアレロパシー物質を放出して雑草の生育を抑制します。間作、輪作や被覆作物の栽培、家畜を取り入れた有畜複合経営など伝統的な小規模農業が評価されています。アグロエコロジーを率先して取り組むことで、農地の劣化防止や持続可能な環境保全、生物多様性に貢献することができます。
ネオニコチノイド系農薬やグリホサート(除草剤ラウンドアップの主成分)の危険性が明らかになりつつあり、EU(欧州連合)やアメリカでは使用禁止の動きが顕著になっています。また、温暖化の影響もあり、登熟期の高温対策も含めて米づくりの新たな研さんが求められています。そして安全と品質を高め、より良いお米を消費者に届けるため、農法のあり方もさらに探究することが求められています。
なによりも農薬による健康被害の危険が大きいのは、使用する農家自身であり、グリホサートは土壌細菌を減少させるとともに、人の腸内細菌を減少させます。
ネオニコチノイドが妊娠中の胎盤を通過して胎児に移行することが研究で明らかになりました。また、肥料のコーティング剤がマイクロプラスチックの原料となるなど、農業が人の健康や環境に悪影響を及ぼしている側面を無視できなくなっています。
国連「家族農業の10年」、SDGsなどに呼応し、世界的に飢餓と貧困をなくし、環境に負荷をかけない持続可能な農業生産と地域コミュニティーの維持のために、効果のある技術を探求することともに、国の農政を転換させることが求められています。
(2)地場産と結んで安全な学校給食を実現させる運動
農民連食品分析センターの検出データをもとに、グリホサートが学校給食のパンから検出された問題が国会で取り上げられ、江藤農水大臣が「感受性の強い子どもたちの食べる学校給食が一般の残留農薬基準と同じでいいのか、検討する」と答弁したことは重要です。全国的に学校給食のパンの残留検査を進め、国産小麦を使ったパンの利用、地元産小麦の振興や米を食べる運動、地域の安全な食材を使った生産者の顔が見える学校給食の実現、給食無料化の運動を発展させましょう。生徒・児童の保護者や栄養士、調理師など学校関係者との懇談、学習会やシンポジウムなど住民ぐるみの運動に発展させましょう。
(3)食と農の劇的な情勢にふさわしく「新婦人との産直運動」を前進させる取り組み
新日本婦人の会は、11月1日の177中央委員会で、国連「家族農業の10年」や日米FTAなど自由貿易協定、気候変動などの情勢の劇的な変化のもと、「日本の農業と食料、食の安全を守るために、産直運動を大きく発展させることが何より大事、地域を元気にしている公益性のある運動」と位置づけ、堂々と広く攻勢的に女性に訴える方針を決め、産直運動への新たな意欲が広がっています。農民連はこの新たな方針を歓迎します。新婦人との産直運動は、大企業が大量生産した、地域に利益が還元されない輸入農産物を原料にしたものを選択するのか、地域の農家が生産し、地域の業者を介して作った地域循環型の生産物を選ぶかの選択であり、SDGs、食糧主権の実践の具体化として発展してきました。さらに「家族農業の10年」の運動を地域で広げ、家族農業が見直される社会を作っていく上で、核となる取り組みとなります。
情勢や産直運動の原点を学び直し、新婦人と農民連が協力して、生産者と消費者との交流を大切にし、分析センターを活用し、食と農を守る産直運動を共同で進めましょう。
「農民連と新婦人の産直運動の共同目標」も現在の情勢にふさわしく見直します。「家族農業はSDGsの要」を中心的に打ち出した共通の学習・宣伝資材の作成を進めます。