新聞「農民」
「農民」記事データベース20200203-1394-11

国連「家族農業の10年」で食料自給率向上、
農林漁業の再生、
農山漁村をよみがえらせよう
(6/8)

2020年1月17日
農民連全国委員会決議

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(8)政府に原発ゼロを決断させ、再生可能エネルギーを広げる運動

 東電福島第一原発事故から、8年9カ月たった今でも、福島県内だけでも4万人を超える方々が避難生活(県内1万699人、県外3万1217人)を余儀なくされています。避難指示の解除と賠償打ち切りは、被災者に新たな苦しみを押し付け、福島を切り捨てることにほかなりません。

 集団ADR(裁判外紛争解決手続)では、国の原子力損害賠償紛争センターが示した和解案の受け入れを東電が拒み、手続きが打ち切られるケースが相次いでいます。文科省の原子力賠償紛争センターの示す「中間指針」を見直し、東電への指導を強化すべきです。

 福島県農民連では9180キロワットの発電施設を設置しています(建設予定含む)。ソーラーシェアリング(太陽光パネルの下で営農)を含む太陽光発電の設置に、茨城農民連や千葉県農民連など、全国各地で挑んでいます。買い取り価格が下がったとしても、設置コストも下がっており、事業としての採算は確保できています。バイオマス発電や風力、小水力発電の可能性も農村にこそあります。

(9)地球温暖化を防止する政治・経済システムへ抜本的転換を求める運動

 世界中で「気候危機」とも言うべき気候変動がいよいよ顕在化しており、日本でも異常気象による災害の頻発、農業生産への悪影響が深刻化しています。現在のスピードでは4度以上も上昇すると予測されており、地球温暖化防止の国際的枠組みである「パリ協定」では、世界の平均気温上昇を2度未満、できるかぎり1・5度以内にすることを目標に定めています。これを実現するには、2050年頃までには温室効果ガスの排出を実質ゼロにする必要があります。

 しかし安倍政権の地球温暖化防止・エネルギー政策は、まったく後ろ向きの方向に進んでいます。昨年まとめられた長期戦略では「排出実質ゼロ」にする時期もあいまいで、2030年度の削減目標は2013年比でわずか26%。大企業優先のエネルギー政策から、電力・鉄鋼など大規模排出源の削減対策も企業の自主努力まかせのほか、再生可能エネルギーも抑制しているのが実態です。

 さらに世界から強い批判を浴びているのが、石炭火力発電の推進政策です。COP25(第25回国連気候変動枠組み条約会議)では、グテーレス国連事務総長が石炭火力発電の「中毒」から脱却するよう再三にわたって訴えたにもかかわらず、梶山経産大臣が今後も石炭火力発電を推進することを会期2日目に明言し、後ろ向きな国に贈られる「化石賞」を会期中2度も受賞しました。しかも日本政府はODA(政府開発援助)や政府投融資

を使って、途上国などに石炭火力発電を輸出までしようとしています。

 世界ではスウェーデンの高校生、グレタ・トゥーンベリさんが一人で始めた気候ストライキが、たった1年ほどで750万人が参加するグローバル気候マーチに発展するなど、気候変動への危機感と「気候正義」の実現を求める声がかつてなく高まっています。

 いまこそ安倍政権の産業界・財界の意向を強く反映した後ろ向きの政策を抜本的に転換し、持続可能なエネルギー・環境政策に転換させる国民的な運動が求められています。

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報告に耳を傾ける参加者

【5】生産点での活動を強化し、多様な産直の発展をめざす取り組み

(1)環境にやさしく持続可能な農業(アグロエコロジー)の探求

 農業が排出する温室効果ガスが地球温暖化の主要因の一つになっているとの指摘があるなかで、化石燃料や化学肥料、農薬の使用を控え、環境にやさしく持続可能な生産を目指すアグロエコロジーの探求が求められています。アグロエコロジーは自然生態系を模倣することで、効果的な栄養循環や生物種間の相乗効果を最大限生かすことをめざしています。例えば豆、トウモロコシ、かぼちゃを混作すれば、豆が窒素を固定し、トウモロコシの花が益虫をおびき寄せ、かぼちゃがアレロパシー物質を放出して雑草の生育を抑制します。間作、輪作や被覆作物の栽培、家畜を取り入れた有畜複合経営など伝統的な小規模農業が評価されています。

 アグロエコロジーを率先して取り組むことで、農地の劣化防止や持続可能な環境保全、生物多様性に貢献することができます。

 ネオニコチノイド系農薬やグリホサート(除草剤ラウンドアップの主成分)の危険性が明らかになりつつあり、EU(欧州連合)やアメリカでは使用禁止の動きが顕著になっています。また、温暖化の影響もあり、登熟期の高温対策も含めて米づくりの新たな研さんが求められています。そして安全と品質を高め、より良いお米を消費者に届けるため、農法のあり方もさらに探究することが求められています。

 なによりも農薬による健康被害の危険が大きいのは、使用する農家自身であり、グリホサートは土壌細菌を減少させるとともに、人の腸内細菌を減少させます。

 ネオニコチノイドが妊娠中の胎盤を通過して胎児に移行することが研究で明らかになりました。また、肥料のコーティング剤がマイクロプラスチックの原料となるなど、農業が人の健康や環境に悪影響を及ぼしている側面を無視できなくなっています。

 国連「家族農業の10年」、SDGsなどに呼応し、世界的に飢餓と貧困をなくし、環境に負荷をかけない持続可能な農業生産と地域コミュニティーの維持のために、効果のある技術を探求することともに、国の農政を転換させることが求められています。

(2)地場産と結んで安全な学校給食を実現させる運動

 農民連食品分析センターの検出データをもとに、グリホサートが学校給食のパンから検出された問題が国会で取り上げられ、江藤農水大臣が「感受性の強い子どもたちの食べる学校給食が一般の残留農薬基準と同じでいいのか、検討する」と答弁したことは重要です。全国的に学校給食のパンの残留検査を進め、国産小麦を使ったパンの利用、地元産小麦の振興や米を食べる運動、地域の安全な食材を使った生産者の顔が見える学校給食の実現、給食無料化の運動を発展させましょう。

 生徒・児童の保護者や栄養士、調理師など学校関係者との懇談、学習会やシンポジウムなど住民ぐるみの運動に発展させましょう。

(3)食と農の劇的な情勢にふさわしく「新婦人との産直運動」を前進させる取り組み

 新日本婦人の会は、11月1日の177中央委員会で、国連「家族農業の10年」や日米FTAなど自由貿易協定、気候変動などの情勢の劇的な変化のもと、「日本の農業と食料、食の安全を守るために、産直運動を大きく発展させることが何より大事、地域を元気にしている公益性のある運動」と位置づけ、堂々と広く攻勢的に女性に訴える方針を決め、産直運動への新たな意欲が広がっています。農民連はこの新たな方針を歓迎します。

 新婦人との産直運動は、大企業が大量生産した、地域に利益が還元されない輸入農産物を原料にしたものを選択するのか、地域の農家が生産し、地域の業者を介して作った地域循環型の生産物を選ぶかの選択であり、SDGs、食糧主権の実践の具体化として発展してきました。さらに「家族農業の10年」の運動を地域で広げ、家族農業が見直される社会を作っていく上で、核となる取り組みとなります。

 情勢や産直運動の原点を学び直し、新婦人と農民連が協力して、生産者と消費者との交流を大切にし、分析センターを活用し、食と農を守る産直運動を共同で進めましょう。

 「農民連と新婦人の産直運動の共同目標」も現在の情勢にふさわしく見直します。「家族農業はSDGsの要」を中心的に打ち出した共通の学習・宣伝資材の作成を進めます。

(新聞「農民」2020.2.3付)