新聞「農民」
「農民」記事データベース20200316-1400-01

突然の給食停止で大混乱
牛乳・米・野菜 出荷できず

全国いっせい休校
新型コロナ

農民連・ふるさとネット・全国食健連

関連/給食野菜 急きょ直売
  /果樹共済 掛け金軽減へ支援を


農水大臣に緊急要請
政府の責任で収入減対策を

 新型コロナウイルスの感染拡大により、農業や食料にも大混乱が生じています。安倍首相は2月27日に突如、全国の小・中学校、高校をいっせい休校するよう要請すると発表。事前の調整も休校に伴う対策も何ら示されないまま、3月2日から事実上の全国いっせい休校が始まりました。

 休校に伴い、学校給食も停止となったことから、食材を納入している生産者や農協、業者にもキャンセルや注文停止が相次いでいます。休止となった給食回数は1年間のうち約1割。この問題への対策を求めて、農民連、農民連ふるさとネットワーク、全国食健連は3月6日、江藤拓農水大臣に緊急要請を行いました。

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江藤大臣(右から5人目)に要請書を手渡す一行

 農民連の笹渡義夫会長は、「学校給食は地元産の食材を積極的に使うことも多く、地域経済への影響ははかりしれない。農業経営を守る立場から農水省としても補償に取り組んでほしい」と求めました。

 江藤大臣は、「まず現場で起こっていること、必要とされていることを知ることが大切。財政的な裏付けも必要になるが、スピード感をもって対処したい」と、答えました。

 牛乳の補てんを

 給食停止をめぐっては、市場に出回る飲用牛乳の約1割が学校給食で消費されており、大量の生乳が行き場をなくして、バターや脱脂粉乳などの加工原料乳に振り向けざるをえない状況に陥っています。飲用と乳価の安い加工原料乳では生乳1トンあたり3万4000円の価格差があり、とくに学校給食への出荷の割合が高い都府県では、酪農家1戸あたりの減収額は約10万円に及ぶとの計算もあります。

 千葉北部酪農協職員の信川幸之助さんは要請で、「中小規模の酪農農協ほど学校給食への依存度が高く、千葉北部酪農も3割が学校給食向け。また今後、生産が拡大することになるバターや脱脂粉乳の供給過多も心配。ぜひ対策をお願いしたい」と求めました。

 江藤大臣も「脱脂粉乳の出口対策は必要だ。加工乳との差額の補てんも財務省と交渉し、しっかりやっていきたい」と回答しました。

 米と野菜も深刻

 米でも大きな打撃が出ています。山形県の庄内産直センターは、学校給食への米の出荷を事業の大きな柱とし、東京都内の小中学校や特別支援学校80数校に供給していますが、3月分約18トンが全量キャンセルになりました。中には給食用に計画栽培・出荷している特別栽培の契約もあり、同じ価格で他の取引先に振り向けるのは難しい米も含まれています。

 要請で同センター副組合長の小林隆範さんは、「学校給食は精米販売であり、他の取引先に販売するにしても玄米出荷では単価が下がり減収になる。米など牛乳以外の食材のキャンセルにも支援が必要」と訴えました。

 また野菜や果物のキャンセルも深刻です。供給センター長崎は、約35万円分のニンジンを大阪府の学校給食へ卸業者を通じて出荷した後にキャンセルが通知され、他の販売先を自分で探して転売しましたが、補償はありませんでした。

 他にもふるさとネットワークの調査では、千葉・多古町旬の味産直センターのキャベツ、小松菜、玉ねぎなど野菜の注文が170万円分(3月分)キャンセルに、愛媛産直協同センターではかんきつ類が総額で50万円分近くキャンセルになったなど、続々とキャンセルの知らせが届いています。しかしどれも補償はされておらず、今後も支援を求めていくことにしています。

 要請には、日本共産党の田村貴昭衆院議員、紙智子参院議員が同席しました。


給食野菜 急きょ直売

茨城・(農)大地のめぐみの直売所

 茨城県阿見町の農事組合法人「大地のめぐみ」は、阿見町と東京都内の小中学校に野菜や米などを供給していましたが、総額で45万円分の取引がキャンセルになってしまいました。すでに収穫してしまった野菜は、直売所で格安で販売。

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「大地のめぐみ」の直売所の店頭に並んだ給食の人参

 ところがツイッターでの発信を見て、多くの消費者が買い物に訪れ、「4月以降も休校が続いたら、大打撃だ」と不安を募らせていた生産者を大きく励ましています。


暖冬 芽吹き早過ぎ霜害のおそれ

果樹共済 掛け金軽減へ支援を

 農水大臣要請では、果樹の共済制度の拡充についても要望しました。

 今冬は全国的に異常な暖冬・少雪が続いており、長野県、山梨県をはじめとした果樹産地では果樹の芽吹きが早すぎるという現象が広がっています。果樹は、芽吹きが早すぎるところに遅霜が降りると新芽が霜害にあい、実のなり具合に大きな被害を受けます。また近年、異常気象や自然災害でも果樹への大きな被害が激増しており、こうした被害への備えとして果樹共済制度の重要性が増しています。

 ところが掛け金の高さに比して、被害を受けた時の支払額が少なかったり、被害基準が高すぎたりするために、共済加入率は全国でも2割程度しかないのが実態です。

 そこで農民連では、もっと多くの果樹農家が共済制度を活用できるよう、自治体に掛け金への助成を求めています(詳細は2面)

 農水大臣への要請には長野県農民連の菊池敏郎事務局長らが出席し、芽吹き始めたアンズの花芽の写真などを見せながら、「国としても共済制度拡充に力を注いでほしい」と要望しました。

(新聞「農民」2020.3.16付)
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