新聞「農民」
「農民」記事データベース20200608-1411-03

20年産 米価下落止まらず

主食用米の政府買い入れや
保管経費補助など緊急策早く


安心して米作りできるよう最大限の対策を

 20年産の暴落想定、安い外米に見向きもせず

 2019年産米の市場価格の下落が止まらなくなっています。

 新型コロナウイルス感染拡大によって外食で消滅した需要は、そのまま過剰在庫として、産地集荷業者や卸・小売業者の重圧となっており、在庫調整のため市場に投げ売りをしている状態です。

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農村は今、田植えの季節です(福島県南会津町)

 関東コシヒカリが1万3千円を割り、関東雑銘柄は1万2千円が出始めていますが、それでも買い手がつかないのが現状です。

 そして、2020年産の関東早場地帯の集荷価格は「税別・1万1千円」の声が聞かれ始め、そんな中行われた豪州産SBS(売買同時入札)輸入米(CPTPP分)の入札は、応札業者ゼロという「異例の事態」となりました。

 今回入札からマークアップ(売渡価格と輸入価格の差額)はTPP(環太平洋連携協定)協定にもとづき15%も下がっているのに、業界は20年産米価下落を想定して見向きもしなかったということです。

 6月末在庫200万トン超の可能性、持越古米数十万トン

 5月27日には、20年産米の作付け意向調査結果が公表されました。

 主産地の東日本を中心に7割超が前年並みとなっており、飼料用米や加工用米は作付けが減少傾向にあるとされています。

 19年産米は作況99で726万トンの生産量となり、前年産の733万トンより7万トンの減少でした。

 20年産米の「生産目標」は、来年の6月末在庫、180〜187万トンを目標に9〜17万トンの生産減少をめざして709〜717万トンとしています。(3月31日基本指針)

 しかし、作付け動向を見る限り、困難な目標と言わざるをえません。

 もともと今年の端境期まで19年産米在庫はどれほど持ち越されるのか不安だったところに、新型コロナによる需要の消滅が起こったわけですから、今年の6月末在庫が200万トンを超し、端境期の古米在庫の持ち越しが相当量になることも確実です。

 政府は主食の需給対策を責務と自覚するべき

 20年度第2次補正予算に「酒造好適米の保管・供給支援策」が計上されました。酒造好適米の保管経費支援・最長2022年3月まで2分の1補助を行うというものです。

 市場から隔離することで、価格維持効果は確実に出ます。酒造業界などの要望も踏まえた対策だといえます。

 しかし、もっと強力な対策が求められるのは主食用のお米なのです。

 経営所得安定対策の申請締め切りも期限延長される可能性はあります。

 しかし新型コロナによる需要消滅によってできた在庫圧力を要因とした米価下落に対して、少々の主食用米減らし、事前契約・複数年契約の推進やマーケットイン、販売努力、経営感覚など、何の意味も持ちません。農家が米価下落の痛みにどこまで耐えられるかという厳しい現実が待っているだけです。

 酒造好適米や牛肉、生乳などには不十分ではあっても、在庫対策が組まれています。

 全国の米農家が安心して米作りができるよう、地域の米農家、法人、JA、集荷・販売業者などを回り、米の需給状況を共有し、ともに政府による市場からの備蓄買い入れによる隔離対策、保管経費の補助などの強力な対策を要求して米価安定をめざすことが絶対に必要です。

 また、自治体にも国に対策を求めるよう要求行動を強めましょう。

(新聞「農民」2020.6.8付)
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