新聞「農民」
「農民」記事データベース20200914-1424-02

三重県

種子条例が成立、9月から施行


学習を通じ県民に広く呼びかけて制定

 三重県議会で6月30日、「三重県主要農作物種子条例」が全会一致で可決・成立し、9月1日に施行しました。知事の「条例案提出」表明から条例案可決までの短期間に集中した活動について報告します。

 「三重たねネットワーク」の設立

 はじめに、運動母体「三重たねネットワーク」の結成・参加の呼びかけの取り組みです。

 「呼びかけ人」に長澤真史氏(東京農業大学名誉教授、農業経済学、農業生物学)、高山進氏(三重大学名誉教授、環境管理学)と三重農民連2人を含む6人で「呼びかけ人」となり「設立総会」参加への本格的な運動が始まりました。

 呼びかけ人が25人に増えるなか、新たに「農家の自由な品種選択を保障する『農民の権利』そして地域の気候風土に適い、自然生態系の保全を考慮した種子の生産と管理なども考えなければなりません」とする「三重たねネットワーク設立総会参加・入会呼びかけ」チラシを作成。郵送、メールなどで団体・個人に呼びかけ、19年11月8日、40人の出席で設立総会を開催しました。

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三重たねネットワーク設立総会であいさつする峯岡会長

 運営委員会中心に活動を展開

 運営委員会の定期開催、多数参加の学習例会を中心に行い、会員への「三重たね便り」を随時発行してきました。

 昨年11月には県知事への6項目の要望書提出を行い、今年1月には公開質問状を提出。その他、県議会議員との懇談、県議会傍聴、県米麦協会、有機栽培農場見学、在来種の栽培農場見学・懇談など積極的に実施してきました。

 パブリックコメントに積極的に取り組んで

 こうした中、昨年12月20日〜1月20日の期間で「三重県種子条例(素案)」に対するパブリックコメントが募集されました。

 ネットワークではさっそく例会を開催。伊勢市、松阪市、亀山市などで市民もまきこんで「集い・たねカフェ」を開催し、三重県でのパブコメ数最多(443件)となる意見を集めることができました。

 県種子条例(最終案)で評価できる部分修正

 3月11日、県議会環境生活農林水産常任委員会に「三重県主要農作物種子条例(仮称)最終案」が提出されました。最終案はパブコメや「公開質問状」などの意見をくむ方向で部分修正されました。修正は、「県の責務」を明記し、県による業務の指導責任等を規定し、「指定種子団体の指定」、種子生産団体の業務に対する指導責任を明確にしたものでした。

 しかし、(1)「消費者への安全で安心できる食料の供給に寄与することを目的とする」との規定を実施目的でうたいながら、条文にその具体化がない。(2)在来種等の活用との項目を立てながら、在来種・伝統野菜の種子生産プランを示さない、(3)品種開発で、民間団体と協力して…品種の開発に努める、とするが「民間団体」とはどのような団体か明示されていない、県の知見開示の運用基準も不明など課題が残っています。

 今後の取り組み

 「ネットワーク」は、条例施行を受け、条例を生かす運動を進めるため、(1)在来種を学ぶ(2)食の安全・安心と有機農業交流(3)種苗法「改正」問題学習の3つのグループを作って運動が始まっています。

 コロナ禍のなかでの運動で制約もあり「ネットワーク」の活動総括は今後です。条例制定運動で科学的・法的根拠の指導や運動を導いていただいた長澤代表、高山運営委員長のお力添えも述べさせていただき、報告といたします。

(三重農民連会長 峯岡繁)

(新聞「農民」2020.9.14付)
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