新聞「農民」
「農民」記事データベース20201005-1427-01

菅新首相に“異議”


アメリカいいなり、安倍農政の
継承では期待がもてない

JA宮城中央会元会長
木村春雄さん(79)
=大崎市鹿島台在住

画像  菅新首相が誕生しました。「安倍政治の継承」をうたっており、代わり映えせず、まったく期待がもてません。森友・加計・桜を見る会の疑惑解明には背を向け、国民の疑問に答える姿勢はみられません。

 安倍前政権は、在任最長記録の実績をつくっただけの7年8カ月でした。在任中の悪政を数えればきりがありません。

 農政の問題でいうと、自民党は、日本農業のことなど一切考えていません。安倍政権はアメリカの傘の下、大枠はアメリカの強い圧力で自由貿易を推進し、農産物を大量に輸入してきました。ミニマムアクセス米はその最たるものです。トランプ米大統領言いなりの姿勢は、菅首相のもとでも変わらないでしょう。独立国として恥ずかしい。今後、アメリカからの要求はますますエスカレートすると思われます。毅然とした姿勢が求められます。

 安倍農政は、農協つぶしを強行し、金融・共済機能を壊し、農協を大商社に明け渡そうとしてきました。協同組合の破壊です。さらに、農業の大規模化・法人化を強引に進めました。安倍政治の継承をうたう菅首相では、農政の問題でも期待がもてないのは明らかです。

 日本は狭い国土で、さまざまな気候・風土の中でその地域に合わせて農業が営まれています。アメリカ、オーストラリアの農業のような大規模化とは相いれないのは当然です。小規模・家族農業の振興こそが日本農業の進むべき道です。

 安倍首相在任中も米価が下がり続け、菅新首相のもとでも歯止めがかからないでしょう。米農家は本当にたいへんです。どうやって暮らしていけばいいのか。これでは、農家のなり手もなく、耕作放棄地も増え続けるだけです。当座は、備蓄米の緊急買い入れなど需給対策が必要ですが、根本的には、農業を国の基幹産業として位置づけ、農家が農業でやっていけるようにすることが必要です。後継者が育つような施策が求められています。


国政の私物化、ウソと隠蔽の張本人
「アベノスガ政治」終えん、総選挙で

秋田県農民連
佐藤長右衛門さん
=横手市在住・農民連顧問

 秋田県湯沢市出身の菅義偉氏が総理大臣に決まった瞬間、打ち上げ花火が聞こえてきた。地元では決定前から祝賀ムード一色。号外が出され、新聞は連日の大特集を組み、県内全域で異様な雰囲気となり、不気味な数日となった。

 7年9カ月にわたる安倍政権の官房長官として、戦後最悪と評される政策の数々を推進した中心的存在の菅氏に「朝日川柳」は、「菅美談に騙されるほど馬鹿でなし」と皮肉っていた。的を射た作品に共感した。

 残暑の中、コロナ禍と農政の無策で、新米価格が暴落。加えて、異常な長雨で稲の倒伏や穂イモチ病がまん延するなか、懸命に稲刈りの準備に汗を流している最中、安倍首相が政権を投げ出してから自民党の権力争いの醜さを見せつけられ、うんざりの毎日だった。

 総裁選挙も最初から勝負ありきで、単なる消化試合となり、この間、メディアによって人間菅義偉の美談がけん伝されていった。農家の長男、苦労人、たたき上げをことさら強調し、いかにも農村、地方を理解しているように振る舞っているが、本人をよく知る少なくない人々は、「農家を、故郷を捨てた人、何を今さら」などと冷ややかにみている。

 国政を私物化し、ウソ、ゴマカシ、インペイ、カイザンが日常化し、そのすべてに菅氏が関わってきた。この期に及んで、「安倍路線を全面的に引き継ぐことに全力を尽くす」との言明に言い知れぬ怒りがこみ上げ、「アベノスガ政治」との新たなたたかいが始まったと決意した。

 2012年12月の総選挙。湯沢市も含む秋田3区で私が候補者活動を行った際、目にしたポスターが今も目に焼き付いている。「TPP断固反対、ブレない、ウソつかない自民党」。安倍政権が復活し、菅官房長官が主導して史上最悪の農産物自由化協定TPP(環太平洋連携協定)をスタートさせた。まさしくウソをついたのである。

 菅氏の罪は極めて大きい。アベ政治を許さない国民、農民は多くのことを学んだ。近く行われる総選挙で「アベノスガ政治」の終えんを見届けたい。

(新聞「農民」2020.10.5付)
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