新聞「農民」
「農民」記事データベース20201123-1434-01

国会前で食健連・農民連

種苗法改悪
強行するな

緊迫 国会情勢
抗議の座り込み・集会


“農家は品種のことなど知らない”
農水省産業局長が暴言
声を震わせて怒る農民

 種苗法改定案が衆議院農林水産委員会で審議入りした11月12日、国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会(全国食健連)と農民連は緊急の抗議行動を行いました。

 衆議院の農林水産委員全員へ改定案廃案を求めた要請。続けて国会議員会館前で座り込み行動を展開、約100人が集結しました。

 集会の開会あいさつで農民連の笹渡義夫会長は「現場では『許諾料がいくらかかるのか』『農業を続けられるのか』と不安の声が上がっているが、政府は全く答えていない。今やるべきは種苗法改定ではなく、新型コロナ対策だ」と訴えました。

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国会前で「種苗法改悪を許すな」と訴える笹渡会長(右)

 広島県農民連の木戸弓さんは農林水産委員会の傍聴を報告。「農水省の産業局長が『農家は品種のことなど知らない』と答弁したのを聞いて、実態を知らないで偉そうな発言に怒りに震えました。金持ち企業は『悪いことはしないだろう』と言いながら農家の持ち出しは監視するような態度は許せません」と声を震わせながら訴えました。

 徳島県上勝町から駆け付けた柴田憲徳さん(食と農を守る会代表)は「私自身、自然栽培で生産しているし、中山間地ではほとんどの農家が自家採種をして暮らしています。最低でも5、6年は採種をして種子更新をしているので、5倍以上の負担になりかねません。ただでさえ農業人口の減少でこのままでは農業は死に絶えるしかない状況です。それに追い打ちをかけるような種苗法の改定は、農水省のやることではありません。改定を止めるためにみなさんと共にがんばりたい」と訴えました。

 集会にはさまざまな人が駆けつけました。東京都板橋区の23歳の男性はチャットグループで行動を知り、駆け付けました。「政府は、国民のすべてを管理していこうとしているように感じます。そうした動き一つひとつに、反対の声を上げていかないといけないと思い、駆けつけました」と話していました。

 政府・与党は、今国会で種苗法改定を成立させるために、強引に審議を強行しています。地元の国会議員への要請、農水委員へのファクス要請など「強行するな」の声を強めましょう。


種苗法改定の
撤回・中止・取り止め・慎重審議
求める意見書

109自治体から国会に届く

 意見書の採択 急速に広がる

 種苗法改定の撤回・中止・取りやめ・慎重審議を求める意見書が、11月17日までに109自治体(2県43市53町11村)から国会に届いていることが、日本共産党衆院議員の田村貴昭事務所の調べでわかりました。

 6月10日の時点で、1県8市7町1村だったことから、急速に意見書採択が広がっています。

 県議会では、三重、福井両県が意見書を採択。市町村で最も多い北海道は15市33町1村から意見書が届いています。次に多いのが長野県で4市5町9村。徳島県が1市7町、広島県が3市1町と続きます。他の都府県は次の通り。

 埼玉県1市2町、茨城県2市1町、岡山県1市1町、岩手県2市、沖縄県1市1村、大阪府2市、滋賀県1市1町、鹿児島県1市1町、兵庫県2市、福島県1市、三重県1町、宮城県1市、島根県1町、福岡県1市、高知県1市、東京都1市、京都府1市。

 政令指定都市は、札幌、京都両市でした。


改定中止・慎重審議求める意見書

北海道 4割の74議会が採択

 今日の北海道農業は、国や北海道の試験場、農民、農協組織、大学などの官民あげた、長年の品種改良の努力、労苦抜きに語ることはできません。試験場などの品種改良の膨大な資料、知見を守ることは、私たちの責務といえます。

道育成品種の種子代20倍に?!

 北海道農民連の調査で、農民が購入する登録品種の種苗代には許諾料が含まれており、北海道育成登録品種の許諾料は0・25%ですが、国育成の登録品種の許諾料は1〜5%と、道の4〜20倍になることが明らかになりました。

 試験場が独立法人化になったなかで、自家採種の許諾料導入は、「許諾料の高額化」につながることとなり、北海道農業の将来に禍根を残すことになりかねません。

 北海道農民連は、9月の定例議会での種苗法改定案の廃案を求めた意見書の採択をめざし、179の道内全ての市町村議会に意見書採択を要請しました。

 北海道農民連盟も意見書採択を要請したこともあり、66議会が種苗法改定案の「廃案」または「慎重審議」を求める意見書を採択し、3月議会、6月議会の採択と合わせると74議会、42%となりました。本会議できん差で意見書採択を勝ち取るなど、意見書採択で様々なドラマがありました。

(北海道農民連書記長 富沢修一)

 「北海道たねの会」は11月12日、種苗法改定案の強行的な国会審議入り、採決をめざす情勢を受け、「拙速な種苗法改定は中止を」「道内74議会、4割が廃案、慎重審議の意見書を採択していることを受け止めよ」と、北海道庁内で記者会見を行いました。

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記者会見する富沢書記長(右)と久田代表(中央)

 たねの会の久田徳二代表は「種子法廃止、農業競争力強化支援法、種苗法改定は、大手種苗会社の種子支配が狙い」などと詳細に説明し、道農民連の富沢修一書記長は「許諾料引き上げの危険がある」と、農民の不安を代弁しました。

(新聞「農民」2020.11.23付)
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