新聞「農民」
「農民」記事データベース20201214-1437-08

いまこそ要求で広く農民と結びつき、
国民の期待に応えられる農民連を!

農政を国連「家族農業の10年」の
方向に転換させるチャンス!
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農民連第24回定期大会議案
2020年12月3日 農民運動全国連合会常任委員会

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(3)必要のない外米(ミニマムアクセス米)の輸入中止を

 94年に合意したWTO交渉で、日本はミニマムアクセス(MA)米の輸入を受け入れました。1995年から2019年までの総輸入数量は1738万トンに及び、このうち約700万トンが主食用・加工用として消費されました。みそ、焼酎、米菓などの加工用途から国産米を締め出し、この結果、ふるい下米が主食還流するなど、市場における低米価を固定化することにもつながりました。

 20年5月に行われた豪州産SBS(売買同時入札)輸入米(CPTPP分)入札は、応札業者ゼロという「異例の事態」となりました。業界は米価下落を想定して輸入米に見向きもしなかったのです。それでも政府は、MA米は国家貿易なので「義務」だと強弁し、毎年、全量77万トンを輸入し続けてきました。

 77万トンのMA米輸入量は、86〜88年の消費量の8%相当ですが、現在の消費量は4分の3に減少しており、その8%は57万トンです。

 「減反しながら外米輸入とは何事か!」、不必要な外米の輸入中止、せめて消費量減に見合う20万トンを削減しろというのは、史上最大の生産調整を押し付けられている農民の当然の要求です。

(4)米政策の転換求め、要求運動を全国から

 全国で、米政策の抜本的な転換を求める国民的運動に力を尽くしましょう。

 1 生産者に責任を押し付けるだけの生産調整方式を改め、国が米価と需給に責任をもつこと。

 2 そのために、あらゆる用途の米を国がコントロールする制度を作り、ゆとりある備蓄米制度を確立するとともに、備蓄米を機動的に需給調整に活用し、米価の安定をはかること。

 3 生産費を基礎にした価格保障制度を実現すること。当面、戸別所得補償制度を復活すること。

 4 国内消費に必要のない外国産米(MA米)の輸入の中止を求め、少なくとも国内の需給状況に応じた輸入抑制を直ちに実行すること。

 5 主食用米から飼料用米等への転換にあたっては、産地交付金などの増額をはかり、主食用米並みの所得を生産者に補償し、稲作経営の安定をめざすこと

 6 国内産農産物の需要拡大にもつながるアメリカのフードスタンプ(低所得者への栄養支援プログラム)のような食料支援制度を創設すること。

2.地域の担い手づくりめざし、就農支援の充実を

 農水省は、19年1月に就農研修機関の認定基準を突然改悪し、農家や農業法人を「農業次世代人材投資事業(準備型)」の支援対象からはずし、「農の雇用事業」のみを対象とすると言い出しました。何年も研修実績がある農家・農業法人であっても、支援対象からはずされたため、多くの研修希望者が研修自体を断念せざるをえない事態が生まれました。

 農民連は全国の要望を集約し、農水省交渉を実施して、翌年従来どおり農家・農業法人でも準備型の研修生受け入れが再開されました。

 地域の担い手づくりは、最重要課題です。引き続き制度・資金の後退を許さず、充実を求めた運動が大切です。

3.畜産、中山間地、種子を守る運動

(1)牛マルキンの運用改善の取り組み

 コロナ禍のもとでの牛肉価格下落対策を求めて、農民連は20年3月以降、農水省に4回にわたる要請を行い、牛マルキン(肉用牛肥育経営安定特別対策事業)の生産者負担金免除など、一定の対策を勝ち取ってきました。

 しかし、価格下落は続いており、生産者積立金の不足で、6月には35都道府県で交付額が国費分の67・5%だけになり、肥育農家は危機的な経営状態に陥っています。

 牛マルキン制度が破たん状態に陥っているなかで、畜産経営と地域経済を守るため、従来の政策的枠組みにとらわれない抜本的な対策が求められています。

(2)豚熱(CSF)から養豚を守る取り組み

 18年に再発生が確認された豚熱は、これまでに岐阜、愛知、長野をはじめ9県に感染が拡大し、西日本を中心に21都府県で野生イノシシの感染が確認されています。豚熱ウイルスの国内侵入を防げず、「清浄国」維持を口実に、長期間にわたってワクチン接種を行わず、感染を拡大させた国の責任はきわめて重大です。

 農民連は、農水省に「養豚場での飼養衛生管理の徹底」だけでは感染拡大は防げないことを指摘し、予防的ワクチン接種や被災養豚農家への支援強化を要求してきました。国は18年10月になって予防的ワクチン接種に踏み切りましたが、これは農民連や養豚業界あげての運動の成果です。

 野生イノシシに感染が拡大するなかで、ワクチン接種は今後も長期間にわたって必須で、防護柵の設置、消毒の徹底などが義務化され、養豚農家に新たな負担が強いられています。抜本的な支援強化が必要です。豚熱など家畜伝染病の防疫の要となる地域の家畜防疫保健所の体制強化が求められています。

 感染予防対策として20年5月に農水省が突如、豚だけでなく牛や羊などの放牧中止を求める飼養衛生管理基準の改定案を発表しましたが、反対意見が相次ぎ、撤回に追い込まれました。農民連も農水省に要請を行うとともに意見書を提出し、運動の一翼を担いました。

(3)漁業、林業を守る運動

 農業と同様に漁業や林業も規制改革の対象にさらされ、危機的状況が広がっています。20年12月から施行された「改正漁業法」は、漁民の漁業権を侵害して浜を大手資本に明け渡すもので、資源管理の名による一律な漁獲規制は沿岸漁業と漁村経済に重大な影響をもたらします。

 全国沿岸漁民連が1万2000人を突破し、漁業法改悪を阻止する運動の先頭に立ち、岩手や北海道など各地で漁民要求実現の先頭に立って奮闘しています。さらに漁業や林業関係者と連携した運動を広げます。

(4)中山間地域を守る運動、鳥獣害対策を求める運動

 国土面積の7割を占める中山間地域は、持続可能な農業を担う地域として大きな潜在力を持っています。さらに国土保全などの多面的機能を発揮し、都市住民をはじめ、国民に良好な生活環境を提供しています。しかし、長年の自民党農政の結果、集落の消滅など人が住めない地域が増え、洪水被害の大規模化や鳥獣被害の激増など農業生産や多面的機能の面でも弱体化してきています。しかし、テレビ番組「ポツンと一軒家」が高い視聴率を得ているように、手入れされた里山と多様な家族農業が国中にあまねく存在することは国民の願いです。中山間地直接支払制度をもっと農家の使い勝手の良いものに改善させ、制度を充実させることを要求します。

 同時に、「コロナ危機」により、地方での暮らしや農林水産業が見直されるなか、「田園回帰」を本格的な軌道に乗せるためには、島根県が進めている「半農半X」など多様な就農支援を国の制度として確立し、地域の農業とコミュニティーを存続するようにしなければなりません。

 有害鳥獣の被害は、農民の生産意欲を根こそぎ奪うだけでなく、住民の命の安全を脅かす事態に及んでいます。国と地方自治体・住民が連携した取り組みへの支援強化を求めます。先進事例を新聞「農民」で紹介するとともに獣害対策交流会の開催を検討します。

(5)都市農業を守る運動

(1)生産緑地の指定解除に対応した「特定生産緑地」の申請を

 22年からの生産緑地の指定解除に伴って指定期限を10年間延長(再延長可能)する「特定生産緑地制度」が創設され、21年8月末を期限に申請が行われています。

 新設された「都市農地貸借円滑化法」で相続農地を市民農園などに貸しても相続税納税猶予が可能となり、面積要件を500平方メートルから300平方メートルに引き下げる改正もあって農地を緑地として保全する制度が拡充されました。

 こうした制度を生かし、コロナ禍や温暖化対策からますます重要性が高まる都市農業を維持するために、農業委員会などとも協力して特定生産緑地制度の申請運動を進めましょう。後継者不在の農家に新規就農者を斡旋するなどの対策を自治体に要求しましょう。

(2)三大都市圏の特定市以外の生産緑地の申請を広げよう

 自治体合併で市街化区域が広がり、市街化区域農地の固定資産税が上昇しています。

 17年のJA全中の調査で、北関東の中核市で固定資産税と都市計画税の合計が10アール21万5千円の農地が、生産緑地指定を受ければ1800円に減額できることが明らかになっています。

 多くの自治体は、税収に占める固定資産税の比率が高まっており、生産緑地の積極的な指定はほとんど行っていません。生産緑地指定の下限面積が、500平方メートルから300平方メートルに引き下げられましたが、これを適用させるためには条例改正が必要です。条例改正も含めて、生産緑地指定・固定資産税引き下げの運動を広めましょう。

(新聞「農民」2020.12.14付)
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