新聞「農民」
「農民」記事データベース20210503-1455-02

国が米を買い上げ
生活困窮者への緊急支援を

MA(ミニマムアクセス)米輸入停止せよ


JA全中試算
米価暴落2年連続は確実

 “このままでは米在庫が大幅に増え、2021年産米価は1万円そこそこになり、暴落は2年以上連続という事態になりかねない”――JA全中(全国農業協同組合中央会)が、こんなショッキングな試算を発表しました。

 全中は全農(全国農業協同組合連合会)の米販売の実態などをもとに、今年6月末在庫を政府見通しよりも20万トン増の230万トン、来年6月末在庫は50万トン増の250万トン超になると試算。「米価下落は来年の秋まで影響が及ぶ!」と警告しています。

 3月30日に開かれた自民党農業基本政策検討委員会に示したもの。しかし、試算の深刻な全貌は一部のメディアにしか公表されず、「一層の深掘り対策が必要」と、減反拡大キャンペーンに使われるだけで、農家に危機感を伝えるものにはなっていません。

 しかし、事態は自民党に危機感を訴えてお願いするだけで解決するほど生やさしいものではありません。

 コロナ禍で深まる苦悩の産地、米卸・小売業者

 卸・小売業者もコロナ禍のもと、20年産米の契約分の引き取り遅延と契約キャンセル、21年産米仕入計画の縮小という仕入・販売計画全体の見直しを行っています。

 このままでは、JA概算金・買取価格は中米並みの9000円前後になりかねません。20年産の「業務用向け」の銘柄は1万円前後まで下落しましたが、販売の見通しがたたない現在は取引自体が成立していません。

 21年産の「業務用向け」銘柄は価格下落にとどまらず、需要先自体を失うことになりかねず、今後、2〜3年は米価上昇の可能性を絶たれることにつながります。

 19年7月から20年6月の1年間の消費量は前年比21万トンの減少となり、減少トレンド10万トンを除いて10万トン以上の需要がコロナの影響で失われたことになります。

米つぶし進める菅政権を許さない

 進んだ野党共闘、業界団体との懇談

 農民連は昨年春から、米価下落阻止をめざし、政府による米在庫の隔離対策、コロナ禍における生活困難者への食料支援の制度化、ミニマムアクセス(MA)米の輸入停止などを求めて、5回にわたる農水省要請、全中・全集連・全米販・日米連などとの懇談、昨年の「10・1米価暴落阻止中央行動」、今年の「3・19米危機打開中央行動」などに取り組むとともに、全国で農協、中央会訪問、自治体要請、地方議会請願などに取り組んできました。

 JAグループも米価下落阻止に向けて、コロナ禍による需要減分の備蓄追加買い入れやMA米・SBS(売買同時入札)米を含めた米需給見通し作成などを政府に要請しました。

 しかし、菅内閣は、隔離対策を冷酷に拒否し、過剰と米価下落の責任のすべてを生産者と市場に押し付け、今年36万トンの「減反」強化を決定しましたが、その実現自体が疑問視されており、仮に実行されても需給改善の効果は期待できない状況です。

 米価下落と米需給の混乱の責任は、コロナによる在庫過剰対策を拒否し、のんべんだらりとMA米輸入を続けている菅内閣にこそあります。

 「3・19米危機打開中央行動」には、立憲民主党、日本共産党、国民民主党の農政責任者がそろい踏みして野党の共同の方向性を示しました。

 来る総選挙で農家・米つぶしの菅農政を転換することが、米価と農家経営の安定、食料自給率向上、地域を守る展望を切り開きます。野党共闘の農業・食料政策を確立するために地域から業界や市民とも共同し、JAや自治体への訪問・要請活動とともに政党へ政策的な働きかけが重要です。

(新聞「農民」2021.5.3付)
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