新聞「農民」
「農民」記事データベース20210517-1456-03

RCEP協定の国会承認に抗議する

2021年4月28日
農民運動全国連合会会長 長谷川敏郎


 4月28日、参議院本会議においてRCEP(地域的な包括的経済連携)協定承認案が、日本共産党とれいわ新選組以外の与野党の賛成多数で採択された。

 農民連は「RCEPで野菜や果物が危ない!」と警告を発し、批准に反対してきた。しかし、私たちの「慎重審議、拙速な採決はするな!」の声を無視して、衆議院で9時間、参議院で9時間半という短時間で採決された。TPP(環太平洋連携協定)審議の10分の1以下にすぎない。満身の怒りを込めて強く抗議する。

 わずかな審議の中からも、政府の説明がでたらめであることが明らかになった。

 政府は「影響が出ないように交渉してきたので、農産物への影響試算も対策も必要ない」と言い張ってきた。しかし衆院参考人質疑で鈴木宣弘東大教授が、農業への影響はTPP11の約半分の5600億円、野菜・果物への影響はTPP11の3・5倍にも及ぶとの試算を出した。政府の説明放棄は許されない。

 農畜産物の関税分類2620品目のうち、関税10%以上のものが822品目もあることが明かになり、ぶどう、りんご、パインをはじめその多くが関税撤廃される。政府は「重要5品目を除外したから、国内農業に特段の影響はない」とするが、それらを生産する産地・農家にとっては死活問題である。

 多くの農民・市民も、そして国会議員にも中身を知らされないまま、RCEP協定は国会承認されたが、今後、RCEPによる影響が地域経済と農業に打撃を与えることは間違いない。RCEPは「通告」によって脱退できる(第20・7条)のであり、私たちはRCEP・TPPなどの自由貿易協定からの脱退を求める声を上げていく。

 コロナ危機を経験し、食料やワクチンをはじめ、国民に必須の物品は自国で賄うことの重要性がますます明らかとなっている今、自由化一辺倒の在り方を見直すことを野党にも要望し、食料主権を中心とした貿易ルールの確立に転換していくことを要求する。

 来る総選挙で自公政権に審判を下し、家族農業を基調とする農政への転換を目指して奮闘する決意である。

(新聞「農民」2021.5.17付)
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