新聞「農民」
「農民」記事データベース20211213-1485-06

安倍・菅政治焼き直し、
財界・アメリカ言いなり政治に未来はない

岸田政権をどうみるか

 岸田政権は、国民から見放され、退場を迫られた安倍・菅政治を継承する一方で、国民向けには安倍・菅政治との「違い」をアピールしなければならない大きな矛盾に直面しています。政権成立から2カ月、この矛盾が次々に噴き出しています。


草の根から要求運動を発展させ、
岸田政権を包囲しよう

 まるで理髪店の看板

 岸田首相は自民党総裁選で「新自由主義からの転換」や「所得倍増計画」、富裕層に対する「金融所得課税の強化」をぶちあげました。

 前首相に比べて口はなめらかな岸田首相ですが、インターネットでは「何を言っているか分からない」「結局、何にも答えてない!」という声があふれています。

 まるで理髪店の看板のようです。目の錯覚によってクルクル回って上へ登っているように見えますが、実際は空回りしているだけで、前進も結論もなし。大ウソつきの安倍氏、説明拒否の菅氏の後は、空回り話でごまかして安倍・菅政治を継承する岸田氏……。

画像
「農林水産業・地域の活力創造本部」会合で発言する岸田首相=11月18日(首相官邸ホームページから)

 “偽装看板”次々に撤回

 岸田首相は、新自由主義的政策が格差と分断を生んだこと、「農業分野においても、現場の実態を十分に把握しない規制緩和や構造改革一辺倒の農政が推進された」と指摘し、「新しい資本主義、新自由主義からの転換」を打ち出していました。

 農政では(1)農産物の需給・価格の安定など、農業者の所得向上に向けた「政策総動員」、(2)米は市場隔離を含めた十分な支援を検討、(3)規制改革推進会議などの改組――を公約しました。

 安倍・菅政治を見直すかのような装いでしたが、首相になったとたんにこれらの“偽装看板”は全部撤去。総選挙後の記者会見で、安倍・菅政治との違いを問われると「従来の取り組みに工夫を加えていく」と述べるだけでした。

 安倍・菅政治の害悪は「工夫」で転換できるほどなまやさしいものではなく、結局は安倍・菅政治を継承する以外の方途を持ち合わせていないことを示したにすぎません。

 所得倍増どころか防衛費倍増

 「所得倍増計画」を撤回し、代わって出てきたのは「防衛費をGDP(国内総生産)の1%以内から2%以上へ」という自民党の公約です。倍増になるのは国民の所得ではなく、無駄で危険な防衛費です!

 11月26日に決定された補正予算で、戦闘機やミサイルなどの爆買いや辺野古の米軍新基地建設に7738億円をつぎ込むことを早々と決め、防衛費は過去最大の6兆円を突破する大盤振る舞いで、農林水産予算の2・7倍です。

 一方、米価暴落に対してはケチケチした「特別対策」をとるだけで、国による買い上げ備蓄も、農家に対する補てんも一切なし。農家の所得向上に向けた「政策総動員」とは、ほど遠いものです。

 「成長と分配」戦略では、看護士・保育士などの給与を「子どもの小遣い」程度の引き上げにとどめるとともに、「3%賃上げ」を財界に及び腰でお願いする安倍政治の焼き直し。早くも「岸田首相の賃上げ方針に冷や水、経団連が一律賃上げ見送り」と報道されています。

 安倍・菅農政の焼き直し

 「新しい資本主義」を看板にする岸田政権。経団連などの「古い資本主義」代表を主メンバーにする「新しい資本主義実現会議」が来春までにビジョンを打ち出すとしていますが、その中身は不明です。

 しかし、はっきりしていることは、規制緩和・民営化、対外自由化で資本のやりたい放題を招いた新自由主義=「古い資本主義」の目先を変える装いをこらす程度のものにならざるをえないことです。

 首相を責任者とする「農林水産業・地域の活力創造本部」(11月18日)が打ち出した「農林水産政策の主要課題と対応方向」や自民党の選挙公約は、▽スマート農業による農業の成長産業化、▽輸出目標5兆円達成、▽みどりの食料システム戦略推進、▽自由貿易ルールの牽引を打ち出しました。いずれも「古い」安倍・菅農政の焼き直しにすぎません。

 また、安倍・菅農政改革の震源となってきた規制改革推進会議をはじめ官邸の政策会議には手を着けずに存続させるだけでなく、「デジタル臨調」などの新たな会議体を乱造し、新自由主義の権化というべき竹中平蔵氏や金丸恭文氏らを新たな役職に就けるありさまです。

 これでは、「新しい資本主義」とは、より過激に新自由主義を進めるものだと言わなければなりません。

 大企業補助金の5%で米価暴落対策はできる!

 岸田首相の「新しさ」の本領は、半導体・蓄電池メーカーなど国内外の大企業に、当面8000億円の補助金をつぎ込む「たかり資本主義」の強化であり、富裕層優遇の金融所得課税の見直しの旗をおろして格差と分断を広げる「強欲資本主義」の継続です。

 米の需要減少分を買い上げて食料支援にあてるために必要な財源は、1俵(60キロ)1万4000円×20万トンで約460億円です。軍拡のための補正予算や大企業につぎ込む補助金のわずか5%を充てれば十分です。

 財界・アメリカ言いなりが「特技」なのか

 自民党の改憲「推進本部」を「実現本部」に改称する、在日米軍駐留費の「思いやり予算」を過去最大水準に引き上げる――岸田首相の「聞く耳」は、もっぱら財界・アメリカ向けです。

 こういう岸田政権と正面から対決し、草の根から要求運動を発展させ、国民が希望をもって暮らし、農業をたてなおす新しい日本をつくるための新たなとりくみに全力をあげようではありませんか。

(新聞「農民」2021.12.13付)
HOT情報
写真