新聞「農民」
「農民」記事データベース20211213-1485-09

急ピッチで進む開発・実用化

ゲノム編集食品は誰のため?
(2/3)

―世界でも日本が突出

関連/ゲノム編集食品は誰のため?(1/3)
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最大の問題点は“オフターゲット”

遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン
代表 天笠啓祐さん

 いまゲノム編集食品を開発する最前線にあるのは大学発のベンチャー企業です。トマトを開発し販売している筑波大学発のサナテックシード社であり、マダイを開発したのは京都大学と近畿大学の研究者が設立したリージョナルフィッシュ社です。これらのベンチャー企業がその利益の源泉と考えているのが知的財産権です。特許を押さえることで利益(膨大な特許料)を得ようとしています。

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サナテックシード社前で抗議する市民ら=4月22日、東京都港区

 クリスパー・キャスナインを開発した研究者たちは、その特許権をめぐって激しく争い、その背後にいたのがモンサント社(米国)とデュポン社(米国)でした。その後、モンサント社はバイエル社(ドイツ)に買収され、デュポン社はダウ・ケミカル社(米国)と一緒になり、コルテバ・アグリサイエンス社になりました。

 最終的にゲノム編集作物の開発をねらっているのは、この技術を用いて世界の種子支配をもくろむバイエル社とコルテバ社といった多国籍農薬メーカーなのです。さらにシンジェンタ社(スイス)とBASF社(ドイツ)も加わった4社で、世界の種子生産の8割を支配しているのです。


欧州
GM(遺伝子組み換え)同様に規制
野放し状態の国も多数

OKシードプロジェクト
印鑰(いんやく)智哉さん

 いま世界では、ゲノム編集動植物に対して、EU(欧州連合)やニュージーランドは遺伝子組み換えと同様に規制するという立場なのに対し、日本をはじめアメリカ、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリアなどは規制なしの野放し状態です。EUを離脱したイギリスでは、イングランドが9割近い反対を押しのけて規制緩和を決定(ただし、農作物のみ、畜産物は規制継続。承認手続きあり)しました。

 スイスは今年9月、「ゲノム編集」含む遺伝子組み換え農産物栽培のモラトリアム(期限付き禁止)を決定しました。地方自治体レベルでは米国カリフォルニア州メンドシーノ郡、ドイツのバーデン・ビュルテンベルク州が栽培を禁止しました。

 アメリカでは、ゲノム編集大豆の販売を行っているカリクスト社の株価が、一時は27ドルを超していましたが、3ドル前後に大暴落しました。消費者が食べなくなっているのです。


日本
食品、種苗とも表示なしで流通可

 ゲノム編集食品の表示について、消費者庁は義務化せずに任意の表示にするとしています。ただし、外部から加えた遺伝子が残る場合は、従来の遺伝子組み換え食品と同じ扱いで安全性審査が必要です。

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 このようにゲノム編集食品をはじめ、種子や苗も、安全性審査も表示も義務付けられておらず、生産者も知らずに栽培し、そのまま流通して消費者も知らずに食べさせられてしまいます。


ゲノム食品ストップへ
私たちは何をすべきか

 ▼政府に規制や食品・種苗への表示を求める

 ▼自治体に働きかけ、栽培させないようにする独自の規制条例をつくらせる

 ▼学校給食に有機食材を使い、ゲノム編集・遺伝子組み換え食材を使わせないようにする

(新聞「農民」2021.12.13付)
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