「農民」記事データベース20000221-438-02

こんな農政を許せますか!

外米輸入と減反拡大のために農民がカネを出す仕組み

10アールあたり1500円

 米の輸入をどんどん増やして「過剰」をあおり、米価は大暴落。その上、「余ったら米」はただ同然で飼料用に投げ売りこんなでたらめな農政に各地で「ふざけるな」という声が巻き起こっています。しかも、政府は、今後も農家の負担で豊作分を飼料用に投げ売りさせるために十アールあたり千五百円を徴収しようとしています。こんな農政を許せますか。


米が余るのは豊作のせいではなく外米輸入のため

 豊作によって米が余るから、その分はエサ用に回すと言いますが、ミニマム・アクセス米(外米)の輸入がなければ、もともと、これほどまでに減反しなくてもすんだし大暴落は起きなかったことは明らかです。

 だから、外米輸入(ミニマム・アクセス米)をやめることなしに、米価暴落をくい止めることができないのは当たり前ではありませんか?

 ところが、今進められている政策は、減反を強制したり、一〇アールあたり千五百円出せというものです。

否応なしに農民の負担で外米輸入を増やし、減反拡大の制度を作る道

 「減反達成」「全国・地域のとも補償」「価格補てん」「一〇アールあたり千五百円拠出」がセットになっています。どれ一つ欠けても、とも補償も価格補てんも受けられません。

 「一〇アールあたり千五百円拠出」はイヤだと言わせない仕組みです。この千五百円は何に使うかというと、「豊作」分すなわち「外米輸入で余った分」をエサ用に投げ売りしたときの穴埋めにあてるものです。

 政府・与党は今後も「輸入で余った」とは決して言わないでしょう。しかし、ここにメスを入れないまま・いくら「豊作」「過剰」の対策に苦労しても、結果は、輸入が増えて、国産米が「余ったら」、エサ用に回すそれがイヤならもっと減反しろという制度を作るものです。そんな意図はないと言っても、結果は外米輸入=米価暴落への道を作るそれが千五百円拠出の本質です。

農協を前面に出してイヤなことを押しつける

―政府・自民党は卑怯だ

 米の「関税化」(完全自由化)を農民には知らせず、ウソをいってだましましたが、自民党の桜井新貿易対策委員長(当時)はそのとき、「農協を巻き込んだから自民党は孤立せず、心配なく強行できた」ということをいいましたが、今度も表向きは農協がやったように見せかけています。

 これが政府・自民党の指導によるものであることは、昨年「関税化」のとき、政府・自民党・全中の三者協定で約束したことを見れば明らかです。それどころか、「千五百円」問題についての全農の「QアンドA」もみな農水省の指導によるものであることは関係者の証言でも明らかです。

 これほど卑怯なことがあるでしょうか!


どうすればいいか 解決の道

諸悪の根源・WTO協定を改定せよ

 日本の食料自給率はカロリーで三九%、穀物で二六%と、アフリカの飢餓の国より低く、資本主義が発達した国では世界にも例がありません。

 その日本で、コメを輸入し、減反は四割近いのに、この上さらに輸入を拡大する道を突き進み、その体制を作るために農民に負担をさせるこんなことが許されますか。しかも、二十一世紀の世界の食料事情は重大です。

 こういう無茶なやり方を強制しているのがWTO農業協定です。

 政府・自民党は、「WTO農業協定改定など世界で孤立しているから無理だ」といって、本気で改定しようとせず、アメリカの鼻息をうかがっています。

 しかし、アメリカの横暴さがシアトルの閣僚会議の決裂を招いたように、「家族経営を守れ」「多国籍企業の横暴を許すな」という点では、多くのNGO(非政府組織)の共通の声でした。時代は変わりつつあります。

 政府・自民党は、「二十一世紀の食料は遺伝子組み換えによって大増産できるから心配ない」といっています。

 しかし、どんなに科学技術が進歩しても、農畜産物の価格保障がなければ農民の生産意欲が出ないのは、農業生産の鉄則です。農民の生産意欲がないところに増産が見込めるはずはありません。

 食糧法には、「再生産を保障する」ことも考慮することになっていますが、全く実行されていません。

 国民の食糧に責任をもつのは政治の最も大事なことではありませんか。国の政治を変えるべきときではありませんか!

 農業予算の総額は約三兆四千億円。この約五割がゼネコンが潤う農業土木に使われ、価格対策は八%程度にすぎません。EUなどでは五割〜七割は価格対策に使っています。こうした逆立ちした農業予算の使い方を正せば農家が安心して生産を続ける対策は十分に可能です。


あきらめるのはまだ早い やることがある!

地域農業と経営の緊急な提案

水田の多面的利用のための土地改良を

 政府は、「麦・大豆を水田の本作に」と提唱していますが、日本にはなんと湿田が多いことでしょう。湿田でなくても、畝立てをしないと小麦も大豆も、畑作物もできません。

 乾田でも、区画を一ヘクタールにしたために、畝(うね)が一〇〇メートルもあって、排水不良になっている所が非常に多いのが現実です。

 湿田や半湿田を、転作ができるように、農家の負担なしに排水工事をすすめるべきです。

転作物の価格保証を

 どんなに「麦・大豆を本作に」と力んでも、農家から「価格は?」と聞かれると、自治体も農協も返事ができません。「WTO農業協定があって…」と政府は言い訳するでしょうが、やり方はいろいろあります。現にアメリカもEUもあの手この手で、農家を援助しているではありませんか。

地域での農産物加工

 大豆や小麦を作って醤油を自分で作ることも、地域で加工所を作って、ここで醤油の麹を作り、一年寝かせて搾るときはまた加工所でというやり方で実践しているところもあります。また、地域の業者と提携して、遺伝子組み換えの大豆でなく、国産の大豆と小麦で醤油を作って消費者の要求に応える道も研究の余地があるでしょう。

卸売市場との交流懇談による新しい市場出荷

 もう、いまでは卸も仲卸も小売も、農民や消費者と提携しないと展望が持てなくなっています。

自治体・農協とともに地域農業の再生を

 見たところ大変きびしいようですが、まだやるべきいろいろなことがあるし、まだやれることがあります。地域の農林業、地場産業を守るために、思想信条、政党支持を超えて広く手を取り合いましょう。

21世紀は、必ず農業が見直されるときです!


どこまでも性悪な政府

「1%プラス20円」の拠出より悪らつな手口

 これまでの一俵当たり自主流通米価格の一%プラス二十円、政府米一俵当たり二十円の拠出に代わるものとして、十二年産米から、すべての稲作農家(飯米農家も含め)から千五百円(十アールあたり)を拠出してもらうようになったとたいした違いがないように農家に説明しています。

 そもそも、一%プラス二十円の拠出金も何のためのものか知らされていたでしょうか。

 農家との約定では「米需給調整・需要拡大」のための拠出と書かれていますが、需要拡大と調整保管のことのようです。

 調整保管は、倉敷料や古米になることによる差損などで、政府の予算を削減し農家に負担させてきたものです。米需要拡大のための学校給食への補助はゼロにしました。

 一%プラス二十円の拠出自体も政府の悪政の現れですが、今度の千五百円拠出問題は、この程度の比ではありません。今度の千五百円は、「輸入が増えたらエサ用に回す」という全く別な制度を作るためのものです。農家を助けるどころか、農家の首を締めるためのものです。大変なゴマカシではありませんか。

(新聞「農民」2000.2.21付)
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2000年2月

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