活発・多彩、熱こもる発言WTOめぐり食・農・環境など各分野で
「日本のみなさんが非常にダイナミックな運動をしていることに感銘を受けた。農民と労働者、消費者、一般市民が連帯した運動は、ヨーロッパではほとんど見当たらない。これからもお互いに経験を交流していきましょう」海外代表の一人、イタリアのアントニオ・オノラティー氏がこう述べるほど、国際シンポジウムでは、会場から多彩な、そして熱意のこもった発言が相次ぎました。 郷土食や大豆畑トラスト運動も「栄養と安全だけなら家畜のエサと同じ。そこに文化が入っていないと人間の食にはならない」と語った日本の伝統食を考える会の宮本智恵子さん。宮本さんは、毎年伝統食列車を走らせ昨年ついに第十号、千品目以上の郷土食を掘り起こしてきた会の活動を発言。全教や新婦人の代表からは、子どもに安全でおいしい米飯給食を食べさせたいと願う教職員・栄養士の運動や、米・農畜産物の産直、大豆畑トラスト、都市と農村の交流のとりくみなどが報告されました。 東京農大の佐藤圭さんは、学ぶ中で感じたWTOの矛盾について発言。「学生は、将来の食糧難に不安を感じ、『なんで日本でもっと作らないのー』って思っている。その答えがWTOだということをもっと広く学生に伝えたい」と述べ、大きな拍手を浴びました。 森林再生、農山村の復権訴え森林資源の活用について、「日本を、原発に依存する国から、薪や炭など木材をエネルギーとして大事にする国に再生させたい」と、研究者の橋本玲子さん。 福島農民連の根本敬事務局長は、「命に直結する食料の問題が、WTOのもとでおとしめられている。荒廃する農村を抱える日本でいいのか。農山村の復権が求められている」と訴えました。 また、討論では各分野、さまざまな角度からWTOの問題点を浮き彫りに。全労連繊維産業労組の佐藤さんは「衣食住全般にわたって異常な事態になっている」と述べ、衣服の自給率が三五%、世界最大の輸入国になっていると告発。そのもとで繊維産業の労働者が失業の危険にさらされ、「共同して運動を広げよう」と呼びかけました。 輸入増大と自給率低落の実態も「日本の伝統食と呼ばれるものやダイコンおろしまで輸入されている」実態を明らかにした税関行政研究会の大槻さんは、その九割の貨物は全然検査されず、安全監視の体制が弱められていると発言。日本の森全国連絡会の笠原さんは、木材自給率について一切語らないで、かつて八万人いた職員を五千人に減らしている国有林野行政を告発しました。 また、「生柑換算で百万トンのオレンジが輸入される一方、温州ミカンの生産量は最盛期の三分の一、百二十万トンに減らされた。自由化がもたらした結果だ」と怒りを込めた愛媛県農民連の岡田会長。日本AALA連帯委員会の秋庭理事長は、「世界に八億人いる飢餓や栄養不良で苦しむ人たちを減らすためにもWTO協定の改定を」と訴えました。 オノラティーさんが大きな関心“大豆トラストの話聞きたい”茨城の小林さんに質問連発「レジスタンスは何時も小さなグループから始まり、しまいにはすべての人を巻き込む」。 イタリアから参加したパネラーのアントニオ・オノラティーさんの言葉を地で行くように、食卓に押し寄せる遺伝子組み換え食品に抵抗して始まった大豆畑トラスト運動の広がりをフロアーから発言したのは茨城県南農民組合の小林恭子さん。二年前には十五カ所だった大豆畑トラストが昨年は全国数十カ所に広がり、県南地域でも前年の四倍近い消費者が参加してトラスト醤油、味カイづくり、キットによる豆腐づくりへと「安全なものを食べる」多彩 な運動の発展を報告しました。 これに強い関心を示したのがオノラティーさん。休憩時間にフロアーの小林さんの所までやってきて、「ヨーロッパにはない、ユニークな運動だ。もっと詳しく知りたい」「大豆はどんな品種か」「イタリアでもトーフが出来るか」というオノラティーさんに、「キットを持ってイタリアまで講習に行きましょうか?」と、小林さん。大豆トラストをめぐって日欧の楽しい交換風景でした。
(新聞「農民」2000.3.6付)
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[2000年3月]
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