“おいしい”と話題のパン・うどん県産小麦100%【埼玉】「まわりは固いけど、中はふっくら」「フランスパンみたいでおいしい」――埼玉県で、自県産小麦を使った学校給食パンの供給が、今年四月から始まりました。県レベルとしては初めて。埼玉農民連も、県や学校給食会との話し合いのたびに要請してきました。一昨年の米に続き、うどん、納豆と、自県産原料を使う一貫したとりくみが、他の都道府県からも注目されています。 (二瓶)
4月から学校給食にふっくら仕上げ「さきたまロール」【パン】埼玉県学校給食会が開発した地粉パンの名前は「さきたまロール」。コッペパンよりやや固く、素朴な味が好評です。原料の小麦は、農林61号ですが、グルテンの量が少なく、ふっくら仕上げるのに試行錯誤のすえ完成しました。「せっかく子どもたちに地元産のパンを食べさせるならこだわって作りたいと、一年かけて研究した」と、学校給食会の千島宏一物資課長補佐。今年度は七百万食分(玄麦で約四百六十トン)の見込みですが、別の種類のパンも研究中です。
草の根の運動が行政を動かした埼玉県の小麦の生産量(約二万四千トン・98年度)は、北海道、群馬県に続いて第三位。代表的な二毛作地帯です。しかし、作付面積は減り続け麦の自給率は、日本全体で一九六〇年の三九%から、現在(98年)の九%に落ち込んでいます。これは、余った小麦を日本に売り込むアメリカの食糧戦略と、麦生産を放棄して生産者価格を下げてきた日本の農政によるもの。 いま「食の安全」に対する関心の高まりから、よりよい学校給食を求める声が強くなっています。新婦人埼玉県本部の加藤ユリ副会長は「輸入小麦には遺伝子組み換えの危険があり、パンへのお母さんの関心はとくに高い」と言います。 また、学校現場でも「食」と「農」を結びつけたとりくみが行われています。「国の政治がだらしないから、お母さんたちの声をもっと教育の場に届けたい」と加藤さん。草の根の運動が行政を動かしています。
価格保証してもっと生産を熊谷市で麦を一・五ヘクタール作る専業農家・中島仲子さん(埼玉農民連女性部長)の話六月初旬に麦の刈り取りを終えました。今年は春先に雨が少なくて心配しましたが、去年よりできがよくてホッとしています。麦は、梅雨の合間をぬって収穫するのが一番たいへんで、雨に当たると黒くなってしまいます。学校給食を通じて、子どもらに大いに食べてもらい、埼玉県の農業について少しでも理解してもらえればうれしいです。しかし、価格が安いのと農家の高齢化が重なって、めっきり作る人が減ってしまいました。そのうえ政府は、麦の価格保障をなくして民間流通にするといっています。とても農家が作り続けられない低価格になるでしょう。そうしたことも分かってほしいと思います。
安全・本物の味、商品化【うどん】農民連と地元製粉業者が協力「小麦の自給率を上げたい。麦畑を減らしたくない」――埼玉農民連大里農民センターは、一年前から小麦をうどんやパンに加工して地粉の消費を拡大しようと取り組み、埼玉産小麦一〇〇%のうどんを地元の製粉業者の協力で六月から商品化することができました。埼玉県は小麦の産地。年々麦畑が減少しているなかで、会員から「地粉の消費を広げよう」「自分たちが毎日食べるうどんを商品化できないか」という要求が出され、小麦の加工について話し合ってきました。こういう思いは、大豆畑トラスト運動に取り組んでいる経験もあったから。 粉物を主食とする食習慣のある埼玉・北部地域には二十年前なら、どの街にも製粉業者や製麺業者がいましたが、現在はほとんどいません。人づてに尋ねたり、電話帳を片手に問い合わせたら廃業していたということもしばしば。やっと出会ったのが深谷市にある秋山製粉。三代目の秋山則雄さん(37)は「国産の粉は、外麦と違い風味がある。うどんは塩と水だけで作るから、素材が重要」と、私たちの思いと同じでした。さっそく五月下旬に試作を引き受けてもらい、うどんの商品化への第一歩を踏み出しました。 商品として売るには、いろいろ検討する課題がありますが、とりあえずは味。新婦人の班会や農民連役員に試食してもらいました。「ゆでる時間が短くて、忙しい時はいいね。省エネになる」「ポストハーベストの心配がない。おいしさも本物」など、嬉しいほど好評を博しました。 価格の決め方は、生産者や製粉業者も納得し、消費者からも賛同が得られるようにと、デパートなどに行ったりして検討を重ねてきました。 今後、販路の確保などの大きな課題があります。しかし、「物を作るのはプロだけど、売ることは大変だ」という思いがありましたが、今回の経験で、困難に突き当たっても解決していける自信を持ちました。小麦を作る農家に呼びかけ、農民連への加入を訴えていきたいと思います。 (大里農民センター 斉藤ゆみ子)
(新聞「農民」2000.7.10付)
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[2000年7月]
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