「市民フォーラム2001」主催 東京シンポ開く食・農・環境めぐってWTOを強く批判海外の代表三氏が講演「市民やNGOが主張するWTOの問題点は何か」――市民フォーラム2001主催の東京シンポジウムが七月二日、東京で開かれ農民連も協賛しました。タイのウォルデン・ベロー氏(フィリピン大学、タイ・チュラロンコン大学で教鞭をとっており、バンコクのNGO共同代表)、カナダのモード・バーロウ女史(カナダの市民団体連合組織のカナダ人評議会共同議長)、イギリスのロニー・ホール女史(「地球の友インターナショナル」の「貿易・環境・持続性プルグラム」の国際コーディナーター)の三氏が講演しました。
WTOが助長する南北・国内格差‥南の視点からウォルデン・ベロー氏べロー氏は、「WTOはアメリカ株式会社が世界的な覇権を握るための設計図」と述べ、「WTOは必要なのか。米国にとって、答えはイエス。世界の他の国々にとってはノー。WTOが必要であるという考えは現代の誤りの一つである」と指摘。そして「WTOはしばしば、力の強い国々の一方的措置から力の弱い国々を保護する『ルール』にのった貿易の枠組みであると喧伝されてきたが、実態はその反対。他の多くの多国間国際協定と同様、不平等を制度化し正当化するためのもの」と語り、「現在、WTOとIMFの両方が深刻な危機に陥っている。南北両方の多くの人々、国家、地域社会の間に急速に生まれている民主主義への要求とは相容れない」と解明。 最後に「途上国と市民社会がめざすべきものはWTOの改革ではなく、WTOの持っている権力を大幅に失わせ、他の国際機関、協定、地域グループと共生しチェックし合う国際組織にしてしまうこと」と訴えました。
企業VS・国家‥国家・自治体から奪われる「公的」役割モード・バーロウ女史バーロウ女史はカナダが米国に支配される経済的な衛星国家になったために天然資源からハイテク部門、映画、TV、音楽もアメリカ製になっていることや、労働者も大きな打撃を受けている事実を明らかにしました。同女史はWTOの影響について解明。一つは食料。「巨大アグリビジネスはすべての食料を遺伝子操作すること、そして国際貿易のルールは、これに反抗する政府や社会を取り締まるものとすること」を決めたため「世界中の農家は、モンサントのような巨大ビジネスの奴隷となり、借金地獄にあえいでいる」と指摘しました。第二は水。「WTOは、すでに水を貿易対象の商品であると規定。水が私有化、商品化され、市場で売られるようになれば、本当に必要とする人には届かず、企業や輸出加工区、あるいは水を買うことができる世界の富裕層への供給が優先される」と述べました。 第三は社会保障。「歴史上初めて、すべてのWTO加盟国が、新たに策定されたサービス貿易一般協定(GATS)の下で、社会保障を含むすべてのサービスについて自由化交渉に応じざるをえなくなった。利益を追求する多国籍企業(保健衛生、教育、幼児・老人介護)に対し、世界中どこにおいても『商業拠点を設立』し、公共部門と競争する権利が与えられた」ことを明らかにしました。 そして、同女史は「人間生活と人権に関わる特定の分野をWTOから除外するよう要求する」ことの大切さを強調しました。
農業、食の安全、環境労働者の権利‥失われつつある価値をどう守るかロニー・ホール女史ホール女史は、自由貿易の基本的な問題として「公正でない」ことと「持続可能でない」ことの二つを指摘。その事実として、世界の農地が過去四十五年間で十二億ヘクタール劣化し、五千六百万ヘクタールの森林が喪失したことなどをあげました。「食糧と農業は、ヨーロッパや日本に住んでいる人々にとって、多分もっとも重要な二つの問題」と述べたホール女史は、「北でも南でも、農業に関するWTOの新たなルールによって、すべての小規模農家が巨大な多国籍アグリビジネスに太刀打ちできなくなり、多くの農家が離農し続けている」と、指摘。 「イギリスでも一九五〇年代以来、小規模農場の半分が失われており、大規模な集約的農業に対抗することができなくなっている。イギリスの農家が国際市場で利潤を上げるためには、約三百二十五ヘクタールもの広い農場を持つことが必要。ヨーロッパ共通農業政策は、大規模で集約的な食糧生産を積極的に支援している」と言い、「日本での状況も同様」とずばり語りました。 さらに「私たちは、貿易交渉の新たなラウンドに断固として反対している」と述べ、「農業と食糧の問題をWTOから完全に除外するよう求めている」との主張を明らかにしました。
(新聞「農民」2000.7.17付)
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[2000年7月]
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