「農民」記事データベース20010305-483-01

“直売所は活力の源”

〜自分で作ったものを自分で売る喜び〜

 「農民連に入って農業の喜びを知った」「今は兼業だが、将来は農業で生活したい」――山梨県韮崎市の農民連直売所に参加したお母さんたちは、もの作りと直売所に夢と希望をふくらませています。雪をいただいた八ケ岳から寒風が吹くなか、山梨県連の津久井裕事務局長の案内で二月十六日に現地を訪ねました。
(西村)


山梨

4人でスタート 夢と希望託して

 直売所の中心になっているのが専業農家の堀内美恵子さん。九九年八月に仲間と四人で立ち上げた直売所は、知り合いや友人の紹介で女性会員を増やし、現在十人になっています。

 「余分にできた野菜を腐らせたりしてきましたが、自分で作ったものは、自分で売ることの大切さがわかり、直売所を新設しました」と語る堀内さん。

 堀内さんの家から数分の所に住む中込伊代子さんのコンニャク作りを見学しました。昔使った大きな鍋で湯を沸かし、コンニャク玉を手際良く入れ、固めます。「あすの直売で売るために作っているの。おいしいよ」と一枚ごちそうしてくれました。旬の野菜がなければ、コンニャクなどの加工品で品揃えを多くしようと取り組んでいるのです。

 中込さんは、会員たちの頼もしい先輩。専業農家でやってきた経験を生かし、ショウガ、ニラ、ゴボウ、コンニャク玉など数十種類の作物を作っています。「花は種から育てている」というほど花作りも大好きで、いろいろな種類の花も売っています。「直売所ができたので、張り合いがあって楽しい。何を作ろうかといつも考えているの」と楽しそう。

 売れた喜びが作る意欲に…

 会員になったのは専業農家をはじめ兼業農家や定年退職後にUターンしてきたお母さんなどです。米とリンゴを手広く作っている久保田さんと、大きくてすばらしい野菜を作る矢崎さんは専業農家。漬物やもちなどを出す保坂さんに、品不足の時にタケノコや山菜を採ってきてくれた堀内万里好さん。看護婦の渡辺さん、坂上さんも会員として宣伝などで応援してくれます。

 兼業農家の中田千恵さんは「将来は農業をやっていきたい」と、菌床しいたけを栽培しながら、自家用のナスなどを少し増やして直売所に出しています。パートの仕事をしている仲田洋子さんは五アールの畑を借りて、ホウレンソウやミニトマト、ニンジン、大豆などを作り、「収穫のときが本当にうれしい」ともの作りの喜びを実感しています。

 東京からUターンしてきた望月スミ子さんは「百姓の出身で野菜作りが好きな夫は、いっぱい作っては近所の人たちに分けていました。直売所に出荷するようになってからは、お金になるので、今では私の方が力が入っています。農業の喜びを知りました」と語ります。「お客さんにおいしいと言われると意欲がわいてきます」と言う望月さんは、六十二歳で運転免許を取り、愛車で直売所に作ったものを運んできます。

 女性会員同士の交流の場に

 山梨県の北西部に位置する韮崎市は、養蚕と米の産地でしたが、養蚕がダメになり、米も減反が強化される中で、農業をあきらめ働きに出る人が多くなりました。耕作を放棄する農地も目立ち始めています。

 堀内さんたちは、農地を守り、作る人を多くしていこうと、あらゆる機会に話しかけ、仲間作りを進めています。

 また、直売所では消費者のいろいろな要求を満たすために他の産直センターから農産物の供給を受けて品揃えを多くしています。堀内さんは「全国の特産物も扱っていきたい」と。

 二月十七日の直売には、野菜や手作りパンなど四十数品目が並べられました。集まった女性会員がお客さんと楽しそうに話したり、会員同士でもの作りの情報交換をするなど、直売所は活気にあふれていました。


岩手

豊富な経験と知恵で品揃え

 岩手県の中部に位置する宮守村は、宮沢賢治の代表作「銀河鉄道の夜」のモデルといわれた鉄道が走っていた村で、JR釜石線に代わった現在、シンボルのめがね橋がかかっています。そこに隣接した「道の駅・みやもり」の直売所に、「夕方の集計が楽しみ」と話す太田代秀子さん(67歳)ら農民連の会員が、農産物や加工品を出荷しています。

 直売所は、六年前に村が開設し、「道の駅」に三年前“昇格”。生活改善グループの女性を中心に個人五十五名と八つの団体が参加。直売所には車で立ち寄る観光客の他に、地元の人も新鮮な野菜を求めて来ます。九九年度の売り上げは五千五百万円でした。

 宮守村に農民連ができたのは十二年くらい前。太田代さんはそれまで三十年余、生活改善グループの中心になって活動してきた経験を生かし、農民連結成の力になりました。

 「村は、改善グループを頼れば、新鮮で安全なものが確保できるから、たくさん利用されるんです。私たち改善グループ員も、加工トマトの苗を買って、村を通じてJAの加工場をただで使って、トマトケチャップなどを作って直売所に出しています」と太田代さん。村が改善グループを頼りにしている様子が伝わってきます。

 漬物十数種類熱心に加工を

 太田代さんは、直売所に漬物も含め三十品目二千袋以上を出荷。どれも自慢の品物です。ナスやキュウリ、梅などは樽十五個に漬けたあと、二次加工。「ナスは色を保つことが難問題。勉強しながら自分で工夫して色を保持できました」…。加工技術の話になると俄然熱を帯びてきます。

 太田代さんの経営は夫婦で水田九十アール、酪農十頭、牧草三ヘクタール。減反は四十アールで、そのうち三十アールは、大豆四種類、小豆、きび、あわ。畑作で野菜も栽培。今年からは直売所の仲間十五人で学校給食に地元農産物を供給。大切に持っているノートには給食や産直など出荷先別に個数、金額が几帳面に記入されて、即座に数字を答えることができます。

 「忙しい人なので、連絡する時は夜遅くにするんです」と教えてくれたのは、岩手県女性部事務局長の伊東庚子さん。太田代さんの働きぶりがうかがえます。

 「子どもの頃は“二宮金次郎”だったの」と話し出した太田代さん。何のことかと訊ねると、他人の家に預けられ、学校にも行けず、幼児を背負わされて働いた辛い子ども時代があったことを説明してくれました。

 「いまは幸せ。直売所には七十五、六歳の最年長者がいて、その人を見ていると励みになる。これからも努力します」と静かな口調で直売所への意欲を語っていました。

(村上)

(新聞「農民」2001.3.5付)
ライン

2001年3月

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