年金額カット(9.8%)やめ政府は受給者守れ
「年金額を平均九・八%カット」というとんでもない農業者年金改悪法案を、政府は二月十九日に国会に提出、三月末までに通そうともくろんでいます。 法案の主な内容は、(1)来年一月一日で現行法にもとづく年金の支払い、保険料の徴収をストップし、同時に積み立て方式の新制度をスタートさせる、(2)現行制度の受給者の年金は平均九・八%カットし、全額国庫から支払う、(3)経営移譲年金の廃止、(4)政策支援は原則として認定農業者と青色申告者に限定(現行加入者は三年間に限り助成)というもの(表1)。
政府は、「年金がどれくらい減額になるのか」という肝心かなめの問題を受給者にいっさい説明しないまま、やみくもに成立を急いでいます。試算によると、九〇年以後に経営移譲した人の年金の減額率は八%(表2)ですが、それ以前に経営移譲した人は一一・五%の減額になります。
制度改悪の最大のねらいは政府支出を減らすこと。現行の経営移譲年金部分は全額国庫負担で総額七百五十五億円。ところが新制度の政策支援は、現行受給者の年金支払いを除くと、百四十四億円(政府見込み)。五分の一以下です。現行受給者は年々減るので最終的には政府の支出をこれだけにしようということです。 政策支援の対象を認定農業者と青色申告者に限定することも大問題。農水省は新制度の加入者を最大三十万人と見込んでいますが、この数字は省内で検討している新しい所得安定対策の「育成すべき」経営体数とほぼ一致。とくに税金申告のやり方は申告者自身が決めることで、支援の要件に加えるべきではありません。 農民連は、(1)受給者の年金カットをやめること、(2)政策支援は、農業に意欲を持つすべての農民を対象にすること、(3)そのために国庫助成を増やすことを要求します。
これではまるで詐欺だ千葉県 阿部毅さん「公的年金だからと加入したのに、これでは詐欺だ」と憤るのは、千葉県農民連青年部長の阿部毅さん(40)。これまで十二年間保険料を払い続けてきた阿部さんの場合、現行制度ではあと八年支払い、六十〜六十五歳の間に後継者に経営移譲すれば経営移譲年金をもらえますが、新制度のもとでは経営移譲年金はなくなり、年金額も下がります。政府は、経営移譲年金を二十年かけて段階的に減らして老齢年金の水準まで下げる計画。「だったら別の年金に加入しよう」として農業者年金を脱退すると、納めた保険料総額の八割しか返ってきません。これは農業者年金に縛りつけるための措置。新制度に魅力がないことは、政府自身にもわかっているのです。
(新聞「農民」2001.3.12付)
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[2001年3月]
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