きくまの民話と伝説愛媛県菊間町
河獺(かわうそ)の悪戯(わるふざけ)昔は、そこらへんの、ごいど、の中や石垣の穴、ほてから、海辺なんかのあんまり人のいかん岩場なんかに河獺がぎょうさんおった。とうの昔に聞いた話しじゃけんどきくかや!。 かわうそにも、ええのんもおるけんどが、なかにゃあ悪さをするのんがおって、あたりの人をちょくちょくだましょったんじゃそうな。 部落のもんが、くらすまの中を町から帰りよると、ひとりの男が灯ぃもつけずに川の中をジャブジャブ上い向いてのぼりよるんが見える。 「こんな真夜中に漁をするはずもないし!」と、思たけんどが、ソーッと後ついて行ってみよった。 ほじゃが、どーおもしよる事がおかしいんで、「ヨーイ、何しよんぞ、早よ上がって来い。」ゆうて大声でおらんだそのとたん、水ん中で、まいまいちんごしだした。 急いで引っ張りあげてみると、着とるもんはボロボロで、そのうえ体中に茨や石のひっかき傷だらけ、気ぃはついたけんどがポカンとしとる。 「どうしたら!」ゆうと、「わしゃあなーんも覚えとらん!」ゆう。家ぃ連れて帰って、よおぅに話を聞いてみるとこうゆう事じゃった。 男が一パイ機嫌で帰りよると、大橋の上のだんぼのとこに頭からズブ濡れで真っ赤な着物をきた可愛らしい娘がおいでおいでしよる。近い行くと、 「きたかや、きたかや。」ゆうて向の方い行てしまう。 やっとのこと追いつくと、又 「きたかや、きたかや。」ゆうんでついていきよったんじゃが、それから後はぜんぜん覚えがないゆう。 「お前はのおぅ、これこれこがいな事しよったんぞ。」……と教えちゃると、びっくりした顔でわがの体をきょろきょろ見回しとる。 「わしゃあ、ひょっとしたらかわうそにやられよったんかもしらん!」ゆうて、ほいでも一晩泊って朝のとうに帰っていった……ゆう話じゃ。
(「きくまの民話と伝説」より。 話者は、若田日出夫さん。(おわり) (四国ブロック編集協力員 大道法幸=愛媛・菊間農民組合)
(新聞「農民」2005.1.10付)
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[2005年1月]
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