香港WTO閣僚会議にストップを
ビア・カンペシーナ地域会議が宣言
関連/ディリ宣言
WTO第六回閣僚会議が十二月十三〜十八日に香港で開かれます。一九九九年にシアトルで、二〇〇三年にメキシコ・カンクンで開かれた閣僚会議は、なんの結論も出せないまま決裂しました。
香港閣僚会議は、WTO流の自由貿易推進派にとっても、これに反対し、公正で食糧主権を実現できる貿易ルールを要求する世界の民衆にとっても正念場です。
五月十六〜十九日に開かれたビア・カンペシーナ東南・東アジア地域会議(写真〈写真はありません〉)では、香港をかかえるアジアの農民運動が持てる力を総結集して、WTO閣僚会議を決裂に追い込む決意を込めた熱い討論が展開され、五月二十日には「ディリ宣言」を発表しました。(別掲)
韓国農民組織が香港に千人の代表団
韓国は、昨年末、WTOとアメリカの圧力によって(1)米のミニマム・アクセス数量を二十万トンから四十万トンに増やす(2)そのうち一〇〜三〇%を消費者に直接販売する(3)十年後には完全自由化する――ことを約束させられました。
韓国女性農民連合(KWPA)のユン・グンスン議長は、こういう米自由化が「韓国政府主導ではなく、WTO主導で行われた。主権はWTOにあるのか」と告発。また、韓国農民連合会(KPL)のムン・キュンスィク議長は「WTOのやっていることはテロリズムと同じ」と指摘し、国内のいたる所で「香港への道」というテーマで学習会を開き、節目節目で行動を配置して、香港には千人の代表団を送る計画だとのべました。
世界一の米輸出の陰でタイ農民は…
タイ貧困者連合(AOP)コーディネーターのベラポン・ソパ氏は「タイ米の輸入で東ティモールの米生産が破壊されている」との指摘に答えながら「タイ政府は四十年前に農産物輸出大国の道を選び、市場主義の農業になった。世界一の米輸出国・タイが輸出で十億ドル稼いでも、農薬や肥料の輸入で帳消しになり、農民の負債が百億ドルにもふくれあがっている」と指摘、「タイ政府は私たちの未来を売ったのだ」と告発しました。
WTO以上にWTO的なFTA交渉
農民連は、多国籍企業と超大国がシアトル、カンクンの決裂から学び、発展途上国の一部を取り込んで、ますます「暗闇の協議」を進めるとともに、FTA(地域自由貿易協定)の名で、WTO以上にWTO的な交渉を進めていることを、最近の日本政府や多国籍企業の動向をもとにして指摘。アジア諸国の農業をますます輸出促進型に追い立てて、結局は小農を犠牲にする方向と、日本で進んでいる「農業構造改革」は同じ根から発していると強調し、香港に向けて連帯を強化することを訴えました。
アジアの農民運動が力発揮し失敗へ
ビア・カンペシーナ・インターナショナル責任者のヘンリー・サラギ氏は、あらゆる活動の前提として「WTOが各国の農業にどういう影響をあたえているか、また、WTOとFTAの関係がどういうものかについて、他の社会運動組織と一緒に学習することが重要だ」と指摘。そのうえで「韓国の取り組みにも学びながら、アジアの農民運動が力を発揮して香港WTO閣僚会議を失敗に追い込もう。WTOはもうたくさんだ! WTOは農業から出て行け!」と訴えました。
持続可能な農業推進連合 (HASATIL 東ティモール)
今回の地域会議を主催した東ティモールの農民組織。農民をはじめ、学生、女性、先住民、労働者など約二十の組織の連合体で同国最大の民衆組織。かんがい設備の充実、農産物運搬手段の確保、食の安全を訴え、情報の共有、技術トレーニング、政府への要請行動など幅広く活動しています。
「一番優れた農業は、すべて自然に任せること」と代表のエゴ・レモス氏。「ここにある植物は、すべてこの国に昔からあるもので多くは薬草や食べ物になる。本来、東ティモールはこんなにも豊かなんだ」と自ら設計したさまざまな薬草や果樹が植えてある事務所の庭を紹介しながら語ります。
彼は、優れた農民運動指導者であると同時にロック・ミュージシャンでもあります。五月二十日の記念日に合わせて二枚目のCDアルバムをリリース。タイトルは「平和と自然への祈り」。彼の力強い歌声は、戦争の記憶がまだ新しい東ティモールの人々を励ましています。
ビア・カンペシーナ
スペイン語で「農民の道」の意味。五十カ国に百四十の加盟組織を持つ世界的な農民運動組織で、一九九三年に発足しました。九六年世界食糧サミットNGO会合でビア・カンペシーナが提起した「食糧主権」は、その後、世界の農業・食糧・環境NGOの共通スローガンになり、二〇〇四年の第六十回国連人権委員会では「農業と貿易に関する新たな代案」として確認されました。農民連とビア・カンペシーナの交流は一九九九年から始まりました。ビア・カンペシーナへの加盟は地域会議の承認が必要です。
WTO体制の10年はもうたくさんだ!
WTOを追い出し権利を守れ
2005年5月16から19日にかけて、ビア・カンペシーナのメンバーであるわれわれは、東ティモールのディリで東南・東アジア地域会議を開催した。この会議は、2005年12月に開かれる香港WTO閣僚会議にストップをかけるためのわれわれのたたかいに多くの人々の参加を呼びかけ、またその準備をするために開かれた。
われわれは、東ティモールの農民たちと経験を共有し、連帯を発展させるため農村を視察した。エルメラ地区では、農地を守り、農民自らが管理できる農地改革運動が高まっている。マウベシ地区では、小農民と先住民の権利を保障する新しい市場システムの中で、食糧主権を基本として人々が自らの食と市場を決定することができるよう運動を盛り上げている。
今日、東ティモールの民衆は、復権記念日を迎えた。われわれは、ティモールの民衆の立場を理解し、経験を共有し支援する。独立は、民衆が自ら資源を管理する権利を保障し、新自由主義に反対するものでなくてはならない。東ティモールは、WTOに加盟しておらず二国間自由貿易協定(FTA)を結ぶ必要はまったくない。ティモールの民衆がこの国を世界に誇れるような国にするために、真の独立をわれわれは支援する。
WTO体制の10年はもうたくさんだ! WTOは、世界中で貧困、飢餓、天然資源の独占、自然破壊をもたらした。加えて自国で十分食料を賄える国に食料輸入を押しつけ、水資源や社会福祉の民営化を許し、地域がはぐくんできた種子や伝統的な知恵を絶滅させている。WTOは多くの国の権利を侵害し、一部の多国籍企業(TNCs)の支配を許している。WTOの問題点が明らかになってくると、新自由主義を進める新たな手段としてFTAが台頭した。FTAは、農村部にひどい貧困や自殺をもたらした。
WTOとFTAが社会にマイナスの影響を与えていることは、多くの事例ではっきりしている。例えば、世界最大の米輸出国であるタイでは、農民が借金に苦しみ、土地や地域特有の種子を失っている。韓国と日本の農民は、米輸入の自由化とたたかっている。農業国であるマレーシア、インドネシア、フィリピンでさえ食料輸入大国になってしまった。
もはや選択肢は残っていない。われわれは、小農民に多大な被害をもたらすWTOと新自由主義政策にストップをかけなければならない。われわれは、ここに以下のことを宣言する。
(1) WTO体制の10年はもうたくさんだ! 2005年12月に開かれる香港WTO閣僚会議を阻止する。
(2) 世界で新帝国主義を広めているFTAに反対しストップをかける。
(3) 小農民、労働者、先住民、さまざまな社会運動をもりあげ、WTO会議を阻止するたたかいやキャンペーンを広く呼びかける。
(4) 民衆の主権を守るため、真の農地改革、食糧主権、小農民の権利を現実のものにする。
2005年12月に開かれる香港WTO閣僚会合に向けて、われわれは以下の活動を行う。
(1) ジュネーブのWTO一般理事会会合期間の動員を組織する。
(2) 2003年カンクンで故イ・ギョンヘ氏が犠牲になった日から3年目に当たる2005年9月10日、WTOに反対する国際闘争デーを各国でイベントを組織する。
(3) 香港WTO閣僚会議に向けて日、週、月単位で強い反対の声をあげ、われわれのたたかいを集約する。
(4) WTO閣僚会議が開かれる香港に何千人もの農民が集まるよう呼びかける。
(5) 各国で組織間の連帯を高め、各政府に香港WTO閣僚会合に参加しないよう働きかける。
2005年 5月20日 東ティモール、ディリにて
ビア・カンペシーナ東南・東アジア地域加盟の以下の組織が署名した。
1.持続可能な農業推進連合(HASATIL、東ティモール)
2.インドネシア農民組合連合(FSPI、インドネシア)
3.貧困者連合(AoP、タイ)
4.韓国農民連合会(KPL、韓国)
5.韓国女性農民連合(KWPA 韓国)
6.フィリピン農民運動(KMP フィリピン)
7.パラゴス・フィリピーナス(以前のDKMP フィリピン)
8.ボルネオ先住民・農民運動(PANGGAU サラワク、マレーシア)
9.ベトナム農民組合(VNFU ベトナム)
10.農民運動全国連合会(農民連 日本)
11.北部農民連合会 (タイ、オブザーバーとして)
(新聞「農民」2005.6.13付)
|