「農民」記事データベース20051212-712-01

新型インフルエンザ いま求められる対策は?

人智をつくした万全の備え

 毒性の強いH5N1型の高病原性鳥インフルエンザがアジアからヨーロッパへと拡大。この鳥インフルエンザが、“人から人へ”感染する新型インフルエンザに変異して、大流行を起こす心配が現実味を帯びています。

 いま求められる対策は何か――。


抗ウイルス薬とワクチン
自治体や民間まかせでは…

鳥インフルエンザ(H5N1型)の公式発表にもとづく分布 鳥インフルエンザの発生国は昨年以降、公式発表で十五の国と地域(地図)。感染で死んだり、感染拡大を防ぐために殺処分された鳥は一億五千羽以上。“鳥から人へ”感染して死亡した人も、ベトナム、タイ、インドネシア、カンボジア、中国の六十八人にのぼります。

 免疫をもたない

 現時点では、“人から人へ”の感染は確認されていませんが、“新型インフルエンザの出現は時間の問題”と言われています。その理由は、インフルエンザウイルスなどは、一個のウイルスが一日で一億個に増え、その間に一万回は変異を起こすから。とくに人や豚が鳥のウイルスと人のウイルスに同時に感染し、二つの遺伝子が入れ替わって、新型インフルエンザが生まれる可能性が指摘されています。

 WHO(世界保健機関)は、新型インフルエンザが出現すれば、「被害が最小の場合でも、二百万から七百万人が死亡する」と警告しています。人が全く免疫を持たない新型インフルエンザの流行に際して求められている対策は、人智をつくした万全の備えです。

 いま可能な備えは、抗ウイルス薬とワクチンです。抗ウイルス薬で治療しながら、その間にワクチンを製造して流行を防ぐのです。

 厚生労働省は十一月十四日、抗ウイルス薬二千五百万人分の備蓄を決めました。しかし現時点での備蓄量は、国も都道府県もきわめて少量で、報道では都道府県の備蓄量は目標のわずか〇・三%といわれています。

高価な製造設備 また感染の流行をくい止めるには、なんといってもワクチンが必要ですが、「ワクチン製造には解決すべきいくつかの問題点がある」と指摘するのは、民間の研究機関で細菌やウイルスを研究してきた立石昌義さん(埼玉農民連会長代理)。(写真〈写真はありません〉

 ワクチンは、鶏の有精卵にウイルスを入れて増殖して作られ、できあがるまで、新型インフルエンザの発生から六カ月程度かかります。

 「新型の流行で鶏が死んで有精卵が確保できるかが心配されます。鶏の卵を使わない組織培養による方法もありますが、現行の有精卵を用いる方法から切り替えられるか。製造設備も厳重なものが求められ、製造技術者の確保も課題」と立石さん。

 とくに、「日本にはワクチンメーカーが四社あるが、全て民間会社。設備投資にお金がかかり、市場競争のなかで不安定な状態に置かれています。小さな政府をめざす小泉政治で、新型インフルエンザの脅威から国民を本当に守れるかが心配」と指摘しています。

(新聞「農民」2005.12.12付)
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2005年12月

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