「農民」記事データベース20061113-756-01

長野・飯伊農民組合

“加入してよかった”

産直で手取りふえ多彩な仲間できた

 長野県飯田・下伊那地方は今、特産のリンゴの収穫や市田柿(干し柿)の皮むき・つるしが最盛期を迎え、農村を秋色に染めています。飯田市を中心とする一市十四町村をエリアにする飯伊農民組合は、農民連の旗揚げと時を同じくして結成。この十九年間で組合員は三十五人から百二十人余へと、三倍以上に成長しました。特に近年は、市内のスーパーのインショップ、長野県産直協を通じた生協産直など、産直や地産地消のとりくみが広がり、組合員の拡大にも弾みがついています。


 大人気の生産者直売コーナー

 飯伊農民組合は「『産直運動』を多様な農民運動の中の重要なひとつ」として位置付けています。それは、「産直で農家の手取りを確保することが、音を立てて崩れかねない地域農業を支えるうえでとても重要だから」(松村隆平組合長)。リンゴの栽培面積は十七年前に比べると、価格の低迷などで約二割も減少。リンゴと温州ミカンを対象に価格安定制度がありますが、その基準価格はとても営農を支える水準でなく、さらに政府はその不十分な制度でさえ来年度から廃止しようとしています。

 飯伊農民組合は結成から三年後、組合員の親類を通じて、静岡県の三島市や熱海市の消費者とリンゴや梨などの産直を始めました。この産直はその後、労働組合や新婦人、保育園などへ広がり、今でも農民組合の産直活動の大きな柱で、十一月十八日には今年も消費者が大型バスを借り切ってリンゴ狩りに訪れます。

 安心感・期待感で組合員ふえる

 また、市内のスーパー「サティ」の生産者直売コーナーは、月に三百万円近くも売り上げる人気コーナー。飯伊農民組合の看板と生産者の顔写真が掲げられ、これを見てスーパーに問い合わせて農民組合に加入する農家もいます。

 松村組合長は十九年間の活動をこう振り返ります。「結成以来、少しでも組合員のプラスになり、飯伊の農業を支える一助になればと活動してきました。原則的な組織運営を貫いてきたことが今につながっていると思います。八年前に有能な事務局員(佐々木美江さん)が入り、財政もしっかりして、向後の憂いなく活動できるようになりました。最近は、組合に対する安心感、期待感が大きく、組合員の紹介で新組合員を迎えています」

 そのうえで組織拡大の教訓として、(1)税金、産直などに参加する農家には必ず農民組合に加入し、会費(県連、全国連の分も含めて)を納めてもらう(2)多様な能力の持ち主に役員になってもらい、毎月一回の役員会を定例化し、全ての会員に「加入してよかった」と思ってもらえるよう、集団的に議論して決める(3)産直組織と農民組織を分離しない―ことを強調します。

 消費者が応援してくれていて…

 飯伊農民組合の顔ぶれは多彩です。松村組合長と同じ集落の伊藤貴裕さん(31)は昨年、Iターンでこの地に就農しました。夏秋トマトを二十アールのハウスで作り、産直やインショップへも出荷しています。「農民組合に入った理由は、仲間がいると心強いから。農業をやるうえで人との付き合いは大事だと思う」という伊藤さんを、松村さんは、これからの地域農業の担い手として頼もしく感じています。

 兼業農家の伊藤芳二さん(68)は、定年退職を機に、家業の干し柿作りを本格的に始めました。そのかたわらで、飯田市内の遊休農地を減らすため、仲間と一緒に約二ヘクタールの畑に野菜や大豆、サンショウなどを栽培しています。「自ら値段をつけて売ることほど、おもしろいことはない。それに農民組合の人たちはオープンでいろいろ教えてくれる」と話す伊藤さんはとても生き生きとして、年齢を感じさせません。

 北原伊義さん(30)は四年前に就農した農業後継者。父親の太一さん(56)と一緒に一・八ヘクタールの畑でリンゴ、梨、桃、干し柿を作り、自分でも二十アールのリンゴ畑を借りて、減農薬などの栽培方法を試しています。「消費者が応援してくれていると思うと、なおさらがんばろうという気になる。とくに子どもたちには、おいしくて安全な果物をたくさん食べてほしい」と北原さん。そして「農民組合に加入して産直に参加でき、多彩な人たちと仲間になれてよかった」と話します。

 「みんな一生懸命で魅力的だ」

 こうした農民組合員の姿を、事務局の佐々木さんは「みんな一生懸命で魅力的」だといいます。ものを作るたくましさ、やさしさを備えた農民をいっそう輝かしているのは、仲間の団結の力と、食べてくれる消費者の笑顔だと感じました。

(新聞「農民」2006.11.13付)
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2006年11月

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