地域や親たちに支えられて
ものづくり・農作業通じて自立支援
知的障害者施設「川越いもの子作業所」 埼玉
関連/食健連 米・最賃ビラできました
「障害があっても地域の中でくらし、働きながら一人の人間として自立したい」―。埼玉県川越市の知的障害者施設「川越いもの子作業所」は、ものづくりや農作業を通じて障害者の生活を支援。障害者を取り巻く環境が厳しくなるもとでも、保護者や地域に支えられながら着実に歩んでいます。
自分のつくったものが他人に喜ばれる
田植えから始め、収穫の喜び味わう
いもの子作業所は一九八七年、「どんなに障害が重くても働きたい、生まれ育ったこの街で暮らしたい」という願いのもとに誕生。九一年には福祉法人として認可され、今日まで市内に四つの作業所(働く場)、五つのグループホーム(暮らしの場)を持つ社会福祉法人「皆の郷」(みなのさと)に成長しました。
社会の一員を実感
いもの子作業所には現在、三十七人が働き、木工細工、アルミ缶プレス作業、大学や公園の清掃に従事しています。木工では、近隣の三富地域のコナラ、クヌギを使った木のおもちゃなどを製作。縁取りをはじめ、糸のこを使った切り取りは全神経を集中する作業です。
バザー・コンサート・祭り…住民と対話
製品は福祉の店などで販売されるほか、地域の祭りやバザーに出品されます。地域を回って空き缶を回収し、アルミと鉄とに仕分けする作業も手慣れたもの。つぶしてリサイクル業者に引き渡します。
施設長の大畠宗宏さんは「『自分が作ったもので他人を喜ばせたい』と思う気持ちは障害者も同じ。心を込めてものをつくる作業を通じて、目標を持ち、人と人を結びつけ、社会の一員だと実感できるのです」と、ものづくりの効果を語ります。
今年からは、近所の農家から一アールの田んぼを借りて、田植え、稲刈り作業をとり入れました。農家に段取りを教えてもらいながら、収穫の喜びを味わっています。
働く場あって安心
いもの子作業所がここまで発展したのは、親や地域の協力があったからこそ。重症心身障害児が通う第二いもの子作業所に子どもを預ける上野いく子さん(61)は、創立当初から作業所の運営にかかわってきました。「義務教育を終えてからも、働き場所があることで安心できます。ここまで作業所が発展したのは、みんなに支えてもらいながら運動を進めることができたからです」
作業所にたいする地域の理解を得るために、親たちが声をあげ、運動の先頭にたってきました。バザーやコンサートなど施設主催の催し物には、各戸にチラシを入れて参加を呼びかけ、地域の祭りには積極的に参加。住民と対話・協働しながら運営しています。
労働意欲そぐ「自立支援法」見直し求める
無料が個人負担に
いま資材の高騰や補助金削減で、障害者施設を取り巻く環境は厳しさを増しています。一昨年から実施されている障害者自立支援法は、わずかな年金や賃金で暮らす障害者にも、原則一割の利用料を求め、障害者に負担増とサービス利用の抑制を強いています。
ある施設利用者は、法の施行で、いままで無料だったものが、一万五千円の利用料を取られ、給食費も一万二千円かかり、計二万七千円もの負担に。月給がすっかり消えてしまう事態も起きています。大畠施設長は「自立支援法は障害者の声を聞かずに制定されたもの。これでは障害者の労働意欲をそいでしまいます。『聖域なき改革』と称して、障害者にまで負担を押しつけ、生存権を奪うやり方は改めるべきです」と見直しを求めています。
生活施設を建設中
川越市内には三百人余りの知的障害者が通所施設を利用していますが、介護家族の高齢化が進み、先の見えない不安な生活を送っており、施設の増設は急務です。
こうした問題を解決するために、皆の郷は〇八年四月に定員五十人の入所支援施設の開設を予定。障害者が普通に暮らし、働く場に通う生活施設を建設中です。募金目標を六千万円とし、一人三千円分を二万人から集めようと運動していますが、まだ目標には遠く及ばない状況です。保護者らはなんとしても目標を達成しようと必死の思いで市内を回るとともに、全国にも協力を呼びかけています。
寄付金振込先 社会福祉法人皆の郷
郵便局口座 00150―7―630724
問い合わせ先 社会福祉法人皆の郷 TEL049(233)2940
大いに活用、グリーンウエーブ成功を
全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)は緊急に「米価対策・最賃引き上げを求めるチラシ(米・最賃チラシ)」をつくりました。
全国食健連に加盟する全労連や全教、自治労連、国公労連、新婦人などでは、このチラシを大量活用して労働者、消費者に届け、秋のグリーンウエーブをおおいに成功させようと計画しています。
「米・農業守れ、暮らせる賃金を」の大きなうねりをつくるため、おおいに活用しましょう。
注文は、全国食健連TEL 03(3372)6112まで。
(新聞「農民」2007.11.19付)
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