ビア・カンペシーナの窓
ターミネーター技術の復活を
阻止するために力を!
COP10に向けて
ビア・カンペシーナがよびかけ
国際的農民組織、ビア・カンペシーナは7月28日、COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)に向けて、「ターミネーター技術の復活を阻止するために力を!」と訴える行動の呼びかけを発表しました。要旨を紹介します。
ターミネーター技術 農家が種をまいて、育て、種をとっても、この種は発芽しないという技術
復活は大きな脅威
2006年にブラジル・クリチバで行われた生物多様性条約第8回締約国会議(COP8)で、ターミネーター技術の禁止が再確認されてから4年。遺伝子利用制限技術の開発と商品化が政策立案者とバイオテクノロジー(バイテク)産業の中で再度議論されている。
ターミネーター技術の復活は、食糧主権と農業生物多様性に大きな脅威となる。ターミネーター技術の禁止措置を解くことは、多国籍企業による種子の遺伝資源の独占的支配をさらに許し、農民による自家採種権を制限してしまう。ターミネーター遺伝子組み換え(GM)作物から出た花粉は、非遺伝子組み換え作物と在来種の遺伝子汚染につながる。
間違った打開策が
ターミネーター技術は、地球の繁殖力をも支配しようとする遺伝子工学技術である。第1世代のターミネーター(「自殺種子」とも呼ばれる)は、1990年代にアメリカ農務省とデルタ・パインランド社の共同によって、アメリカの農業バイテク多国籍企業の知的所有権を保護するために開発された。GM作物は、農民によって自家採種をさせないために不妊種子を生み出す。しかし世界の農民と市民社会の国際的な抗議によってターミネーター技術は商業化されていない。
この技術は、気候、エネルギー、食糧危機への対応として必要だという「ウソ」を売り込むために様々な間違った打開策が提起された――(1)セルロースの第2世代アグロ燃料のためのGM作物、(2)干ばつ、熱、塩に対してより強い抵抗力を持った地球工学的な気候対応のためのGM作物・樹木、(3)炭素隔離のためのバイオ炭を工業的に生産するためのGM樹木のモノカルチャープランテーション森林、(4)二酸化炭素隔離のためのGM藻類と海洋微生物。
農民の権利を規制
今、この業界は、「遺伝子操作された非食用作物のDNAによる食物と他の自然生物の遺伝子汚染(導入遺伝子移動)を阻止するためにもターミネーター技術は必要である」と主張している。
風やハチによるGM作物の花粉の広がりによって起こる在来種や有機農産物の遺伝子汚染は、生態系および経済の問題として注目されるようになってきている。
ターミネーター技術は農民の種子・遺伝資源へのアクセスをコントロールするためにも利用される。業界は、新世代のターミネーター技術を使い、独自の遺伝資源のコントロールを強め、自家採種した種子を使う農民の権利を規制している。さらに、ターミネーター技術によって生まれたGM作物による汚染は、世界中の食糧供給を差し迫った危機に追いやり、食糧・種子主権および農業生物多様性への大きな脅威となるであろう。
阻止へ大集結を
多国籍企業は、世界の農地、放牧地、泥炭湿原、残った森林へのコントロールを拡大し強めている。同時に細胞・分子レベルで公共の遺伝子の管理を強めている。
合成生物学のためのターミネーター技術、アグロ燃料のためのGM作物、エネルギー・気候・食糧危機のための地球工学および他のニセモノの打開策は、巨大な遺伝資源と農業生物多様性を各国から取り上げて、囲い込み、特にアメリカの巨大バイテク企業のモンサント、デュポン、アーボーゲンなど多国籍企業の管理下に置いている。
世界中のビア・カンペシーナ加盟組織、農民、NGO、消費者がターミネーター技術の復活を阻止するために集結することは非常に重要である。11月29日から12月10日までメキシコのカンクンで行われる国連気候会議にとっても名古屋での動員は重要なものとなる。
(新聞「農民」2010.9.6付)
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