「農民」記事データベース20100920-941-07

農家も私も元気になるヨ!!

加工すれば何でも売り物に
こんな楽しいことってないね

千葉・佐原市の香取美乃さん

 「1俵1万2000円で売るのがやっとのお米も、かき餅(もち)やのし餅に加工すれば1俵12万円、お赤飯でも8万円になります。こんな楽しいことはないし、農家も元気になりますヨ!」――8月に開かれた全国研究交流集会で、加工の取り組みを報告した千葉県の香取美乃さんの発言が、分科会の会場を大きくわかせました。さっそく佐原市の自宅の庭先に建てられた香取さんの加工所を訪ねてみました。
(満川暁代)


自家産使って本もの届けたい

 「こんなに小さくて恥ずかしいんですけど、全部1人で加工しているから、十分なんです。毎朝、家族の食事作りをしながら台所と行ったり来たりして加工作業をしています」と香取さんに案内されたのが、6坪ほどの加工所。機械や設備はリサイクル品やもらった物がほとんどですが、作業しやすいよう随所に工夫をこらし、保健所の認可も取りました。隣の部屋は、毎年3トン仕込むというみそ蔵になっています。

 みそ漬け、甘酒など年間50種類くらい

 水田4ヘクタール、畑1ヘクタールを夫婦で耕作する香取さんは、現在は専業農家。ご主人の和典さんは勤めに出ていましたが、加工品が広がるにつれて美乃さんが田んぼに出られなくなり、現在は田んぼの作業は一手に担当するようになりました。

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手際良くのし餅を作る香取さん。「まんげつ餅」というこだわりの品種を使っています

 今作っている加工品は、年間で50種類くらい。農閑期に仕込むみそと糀(こうじ)を使った加工品(みそ漬け、糀漬け、焼肉のたれ、甘酒など)と、自家産の米を使ったおかきなどの米菓、草餅やのし餅などのほか、昔ながらの梅干しや漬物などです。

 でもそれだけではありません。近所の野菜農家から大量に出る曲がったキュウリは1本100円の漬物に、虫食いピーマンも刻んでピリ辛の南蛮こうじに変身させられます。「今までは捨てていたような規格に合わないものでも、加工すれば何でも売り物になるでしょ。どう加工すれば売れるか考えるの、楽しいわよぉ」と笑顔の香取さん。

 こだわりは二つあります。一つは、自家産か近所の農家が作った農産物を原料にすること。もう一つが、自分のペースで、楽しみながらやること。「農家だからこそできる本物の加工品を消費者に届けたい」と香取さんは言います。

 売り先は、毎週土・日に開かれる市内の朝市や、市役所などから紹介されたイベントのほか、松戸市の団地で開かれる直売市などでの直売、さらに今年3月からは近くに新設された道の駅「水の郷さわら」にも納品しています。

 道の駅では、生産者と品物がバーコードで管理されており、1日3回、何が何点売れたかが生産者の携帯電話にメールで送信されてきます。「このメールを見るのが楽しくて」と顔をほころばせる香取さん。「かき餅とか調味料とか日持ちの良いものをうまく取り混ぜて、常時10種類くらい店頭に並べておけば、たとえ1点ずつしか売れなくても1点あたりの利益が100円とすれば、月3万円になるでしょ。女性はパートに出ても、これだけ稼ぐの大変だもの」と言います。

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地元産の農産物や加工品が豊富に並ぶ「水の郷さわら」は大盛況。休日は売れ具合を見ながら、朝とお昼の2回、商品を補充します

 年90俵分を加工し最近少しゆとりも

 香取さんは、年末ののし餅なども含めて、もち米とうるち米合わせて年間で90俵分を加工に回しています。「最近、ちょっとだけどゆとりも出てきました」とのこと。「新聞『農民』で韓国に視察に行った記事を見て、私たちも行ってみたいねって話してるんです」と夢が広がっています。


【訂正】 9月27日号にて、以下の訂正がありました。
  9月20日付「加工すれば何でも売り物に」の記事で、香取芳乃さんは香取美乃さんの誤りでした。おわびして訂正します。
 2010年10月4日、訂正しました。

(新聞「農民」2010.9.20付)
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2010年9月

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