「農民」記事データベース20101220-954-07

遺伝資源の利益配分に法的拘束力

COP10報告会


「議定書発効以前」は再検討

画像 国際青年環境NGOの「A SEED JAPAN」(ア・シード・ジャパン)は11月29日、都内で、10月に行われた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の報告会「遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)に関する名古屋議定書とその課題」を開きました。

 「A SEED JAPAN」共同代表の小林邦彦さんが「NGOから見た名古屋議定書の課題」のテーマで報告。「法的拘束力のある議定書が採択され、地域住民・先住民族が保有する遺伝資源や伝統的知識から生じた利益が、その保有者である地域住民・先住民族に配分することが規定された」と成果を述べました。

 さらに他の締約国の国内法または規制上の要件(事前の情報に基づく同意の取得、相互に合意する条件の締結)の順守が規定され、「ABSクリアリングハウスやチェック機関などによる順守確認のための基本的な仕組みが整備された」と評価しました。

 小林さんは、議定書の今後の課題として、(1)先住民族・地域住民への利益配分が規定されたが国内法で権利が規定されている場合のみとなった(2)議定書発効以前に原産国から獲得した遺伝資源の利用から生じた利益配分の規定が今回は見送られ、再検討されることになった(3)チェック機関をどこに設置するのか―などをあげました。


先住民族 COP10で 大きな役割

議定書で権利の尊重盛込まれる

画像 COP10には、世界各地から先住民族の代表が参加しました。「先住民族の10年市民連絡会」などは11月26日、都内で報告会「COP10における先住民族の主張」を開きました。

 アジア太平洋資料センター共同代表の細川弘明さんが、先住民族の問題で、どんな成果をあげたのかについて報告しました。

 冒頭、世界の7つの地域から代表団が参加したことを紹介し、「180人ほどの先住民族が議論や交流を繰り広げ、さまざまな取り決めの評価や実施に、大きな役割を果たした」と述べました。また「マスコミなどは“先進国対途上国”という対立の構図として描きだしていたが、そのはざまで活躍していた先住民の役割はもっと注目されてよい」と指摘しました。

 さらに生物資源の獲得や利用の際に、「(先住民族の)自由意思と事前の情報にもとづく合意」の権利が、「先住民族の諸権利に関する国連宣言」で確認されており、「生物多様性条約は国連の条約なのだから、もっと権利が保障されるべきだ」と強調しました。

 結局、名古屋議定書では「先住民族・地域社会の権利と伝統知識の尊重について、総論的には盛り込まれたものの、具体的には、締約国の法律の制約を受ける余地が残された」と総括しました。

(新聞「農民」2010.12.20付)
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2010年12月

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