「農民」記事データベース20110704-979-03

原子力損害賠償紛争審査会第8回会合

東電、“居直り強盗”発言

責任省みず賠償額値切りに終始

関連/食農市民ネットを結成(MOP5市民ネットの後継組織)


 福島第一原発事故の損害を話し合う「原子力損害賠償紛争審査会」(以下、審査会)の第8回会合が、6月20日、文部科学省内で開催されました。

 原発事故を引き起こした東京電力が、この日初めて審査会への出席を許され、賠償金の仮払いなどの現状を報告しました。しかし東京電力の廣瀬直己常務は、報告の冒頭から「巨大な賠償額が予想され、政府の支援がないと、早晩、補償ができなくなる」「原子力損害賠償支援機構法案を、一刻も早く立法化してほしい」などと、“居直り強盗”のような発言を繰り返しました。

 また持ち時間の半分近くを割いて、「今後の補償に向けた取り組みと課題」として、5項目の「当方の勝手なお願いごと」(廣瀬氏本人いわく)を披れき。「地震・津波の被害と、原子力損害の切り分けが難しい」「風評被害については、原因競合が考えられる(つまり風評被害全部が原発事故が原因とは言い切れない、という意味)」など、原因企業としての責任を省みず、少しでも賠償金額を値切ろうとする姿勢に終始しました。

 仮払いの現状については、農林漁業者へのこれまでの支払いが栃木、茨城の農協など4団体、約12億円となっていることや、避難住民への賠償なども含む賠償業務の体制が、全体で1000人程度であることを報告しました。

 これに対して、審査会の委員から「農林漁業者への仮払いを2分の1に制限しているが、その根拠が明確でない」(能見善久・審査会長)、「東京電力は、『農業への被害は、事故がなければ農産物がいったいいくらで、どれくらい売れたのか、証明が難しい』と言うが、第1次指針で前年実績から推定する手法が記載されており、その方法を現場でやらないのか」(中島肇・桐蔭横浜大学法科大学院教授)など、厳しい批判の声が上がりました。

審査会で精神的損害への賠償額決める

 また審査会は、5月末に出された第2次指針に追加するかたちで、避難生活による精神的損害(苦痛)への賠償額を決定。(1)事故発生から6カ月間(第1期)は、基準額を1カ月あたり1人10万円とし、避難所で生活した人は12万円、(2)6カ月後から1年(第2期)は、1人5万円、(3)1年後から終期(指針の効力が消滅)まで(第3期)は、事故の収束状況を見ながらあらためて検討する、としました。


食農市民ネットを結成
(MOP5市民ネットの後継組織)

GM作物の自生・交雑・混入阻止へ取り組み強化

 「食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク」(食農市民ネット)の設立総会が6月11日、名古屋市内で開かれました。食農市民ネットは、昨年10月に名古屋市でカルタヘナ議定書第5回締約国会議(MOP5)が開かれたのを機に結成された「MOP5市民ネット」(農民連も加盟)が解散されたのに伴い、その後継組織として結成されました。

画像 総会では、食農市民ネットの目的として、MOP5の成果を実現するために、(1)遺伝子組み換え作物(GMO)の自生や交雑・混入をなくす(2)GM生物への規制を強化させる(3)有機農業・環境保全型農業を推進する―ことが採択されました。

 また、これからの取り組みとして、生物多様性条約、カルタヘナ議定書と「名古屋・クアラルンプール補足議定書」に対応した国内法の改正・整備に向けた活動を行い、政府、国会、自治体へ働きかけることなどを確認しました。

 総会では、「食と農の危機・放射能と遺伝子組み換え」のテーマで討論が行われ、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンの天笠啓祐代表が報告。「GMOと原発は、企業、政府、学者が一体となって推進し、安全神話がつくられ、人間がコントロールできない性質をもっている」と述べ、「政府、多国籍企業による食と農への支配を許してはならない」と呼びかけました。

 バイオ・ダイバーシティ・インフォメーション・ボックスの原野好正さんが、「今年から国連生物多様性の10年がスタートする。COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)やMOP5の決議をよく分析して、何度も思い起こしながら、NGOの活動計画や法律・制度に組み込んでいくことが大事だ」と訴えました。

 また、GM開発を進めるバイテク企業モンサントと裁判でたたかったカナダの農家を描いたドキュメンタリー映画「パーシー・シュマイザー・モンサントとたたかう」が上映されました。

 最後に、「遺伝子組み換え作物・食品に対しては事故や汚染をこれ以上起こさせないよう、厳しい規制の仕組みを作らせましょう。国内の農畜産業・漁業を守り、未来の世代が安心して暮らせる社会を作っていきましょう」と呼びかけるアピールを採択しました。

 なお、食農市民ネットの共同代表には、天笠氏と河田昌東氏(遺伝子組み換え食品を考える中部の会)が、副代表は原野氏がそれぞれ選ばれました。

(新聞「農民」2011.7.4付)
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2011年7月

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